第32話

ビー--ッ



いいところで邪魔が入って呼び出し音が廊下に響く。



この寮、ベルまであったんだ。



ってか、いいところで邪魔しないでよっ!!



ビー--ッ



ピンポンピンポンと鳴らす感覚で、ドアの向こうの誰かはベルを押している。



掴まれた腕をそっと離して、王子はドアへ近づいた。




「…行く気ないなら隠れとけ」



王子がそういったので、あたしはすかさず自分の部屋へと逃げ込んだ。



あっ…



昨日片付け忘れていたコップを握り、古典的に盗聴する。



あたしはグラスを壁に押し当てて、王子と誰かの会話に耳を傾けた。









「…穂、いつまで待たせるのじゃ。せっかく蜜歩が帰ってきたというのに」



声で判断できるような人ではないが、きっと話し方からしておじい様だろう。



『蜜歩』?



「今出ようとしていたところでした」



王子はそう答える。



「早くせんとミツエが腹を立ててしまうぞ」



おじい様のその声にドクンと胸が鳴った。



─ミツエ?



蜜歩?ミツエ?



名前の語呂が似ていない…??

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