第30話

悶々とするあたしに、王子はもう一度訊ねる。




「関係って例えばどんな?」




その言葉にあたしはボンッと頬が染まった。




王子の口から発せられる「関係」という響きは、どこか艶美な香りを漂わせている。




染まった頬で俯くあたしを見て、王子は言葉を続けた。




「例えば俺が蜜歩の首筋に手をまわして─…


例えばうなじを優しくなぞって…


小さな唇を俺だけのものにして…


腕で身体を抱きしめて…?


温もりを二人で分け合って?


とろけるようなキスをする。


…こういう関係?」




甘い余韻にあたしは頭脳が滞る。



王子の綺麗な唇があたしを酔わせて、思考を止める。



王子のひとつ一つの台詞にリンクして、あたしをその通りに操った。



王子が唇を離して、あたしに笑う。




「こういうこと?」



あたしはその優越しきった笑みにハッと我に返った。




やられた!


王子の戦略にまんまとハメられたっ!!

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