第29話

「そっそれはっふたふた二人の関係がですねっ」



あたしは目に渦巻きを浮かべて、近づく王子の顔を必死で押しのける。




「その吃音どうにかならないの?」



「き、吃音!?」



ギャーっと王子を押しのけてあたしは訊ねた。



そんなの難なく、王子はあたしの両手を束ねる。




「き、吃音?の最初の「き」だよ。吃ること」



「だって克穂くんがこんな事するからっ」



「こんな事って?」



あ。


あたしはついつい王子にネタを提供してしまうらしい。



こんなコトって、もちろん足を絡ませるこの行為のコトで、あたしが恥ずかしくて言えなくなることを知っている。



なのに敢えてあたしに言わせようとして、言えなかったらまたひどいお仕置きが…



お仕置きとか言ってる時点でアウトだしっ!!



あたしは心の中で一人で会話をして、ますます耳を染めた。




「あーおかしい」



王子はそう言うが、別に笑っているわけでもない。



不敵な笑みを浮かべて、獲物を狙う野獣になっていた。



獲物とはネタのことで、野獣とはいじりっぷりのこと。



あくまで補足だけど、獲物はあたしではないのであしからず。

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