第36話

否定しないってことは名前は合ってるんだ。


一応、「3年生?」と学年を確認すれば、「そー、だから俺のことは真守先輩と呼ぶこと」と突然先輩面をしてきたから、敢えて「まもりって呼ぶね」と生意気を言えば、「くそ生意気だな」と当然の反応が返ってきた。


でもすぐに、「まあなんでもいいよ」と呼び名の選択権を譲ってくれるあたり、まもりってものすごく寛大な人なのかも。


中学生なんて、意識され始める上下関係という社会の格付けにうるさいのに。




「ねえ、スカート脱いたらベルト丸見えになってださいかな?」


「そのやばすぎるスカート晒すよりいいんじゃね?」


「たしかに」


「つかシャツで隠れるだろ」


「たしかに!」




いそいそと、ギザギザに切られた不恰好なスカートを脱げば、まもりは1歩離れたところからわたしを見下ろし、「いいじゃん」と半分満足げに笑った。


それでも、明らかに大きいサイズなうえに上級生の体操ズボンを穿いているわたしはきっと、1年の校舎に戻ったら目立つに違いない。


ただでさえ入学して間もないのにすでに年上に目をつけられてしまい、同級生の中では浮いた存在なのに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る