第32話
今履いている夏用のスカートには申し訳ないけれど犠牲になってもらう。
スカートへ
自分ばかりがかわいくてごめんね。短い間だったけどありがとう。
ゆるより
「しね」
綺麗とは言い難い言葉を吐き捨て、本当にわたしのスカートにハサミを入れたユリ。
ジョキンと布が切れる音とゲラゲラ下品な笑い声がひとけのないこの場に響き渡る。
あーあ。こんなことなら昨日、あの男たちに着いていくんじゃなかった。なんて後悔してももう遅いけど、ちょっとだけ昨日の自分を恨む。
その間にも、裏腿から前腿まで、本当に躊躇なく切られていく布に、(わたしのせいで本当にごめんね)と罪なきスカートに謝りながら終わるのを大人しく待っている、――と。
「うーわ、なにやってんの」
そこへ、男がひとり現れた。
「真守くんだっ……!」
「っやば、」
「いこっ」
その3人は、男には聞こえない程度の声でそれぞれの言葉を口にして、全身に纏った焦りを抑えることなくこの場から去っていった。
もちろんスカートは微妙な仕上がりのまま、なんなら乱雑に切られた布はぶら下がっている。
……はあ。どうせならもう少し綺麗に切ってから行ってよ。
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