第12話

それを本人の口から聞いたことはない。


だって当時のわたしは、おばあちゃんが病気を患っていることすら知らなかった、気付かなかったのだから。


突然倒れて、緊急搬送されて、その夜息を引き取った。


おばあちゃんの遺品を整理する時に、〝大好きなゆるちゃんへ〟と丸っこい字で書かれたお手紙と現金が入った封筒を見つけた。



そんな大事なお金に手をつけたことはない。この先本当にわたしが困った時まで、大事に取っておくつもりだった。


……でも、知らない誰かに盗まれた。





「これも全部わたしのせいだ」


「……」


「ただの引き出しなんかに仕舞うから。オートロック付きの家に住まないから。……わたしのせいで、おばあちゃんが、」




悲しい水が零れ落ちる、寸前。真守がわたしの後頭部を引き寄せた。


「ぅえっ、」と情けない声が出ているのに、笑いもせずに背中をさすってくれる。


悲しみが真守のお高そうなスーツを濡らすのに、真守は離れろとは言わずに強く抱きしめる。




「なあゆる」


「っ、…な、に」


「俺と一緒に住まない?」


「、ぇ……?」


「鍵穴変えたところで、盗みが入った部屋にひとりで住めねえだろ。つか俺がいや。心配で睡眠の質が下がる。仕事になんない」

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