第12話
それを本人の口から聞いたことはない。
だって当時のわたしは、おばあちゃんが病気を患っていることすら知らなかった、気付かなかったのだから。
突然倒れて、緊急搬送されて、その夜息を引き取った。
おばあちゃんの遺品を整理する時に、〝大好きなゆるちゃんへ〟と丸っこい字で書かれたお手紙と現金が入った封筒を見つけた。
そんな大事なお金に手をつけたことはない。この先本当にわたしが困った時まで、大事に取っておくつもりだった。
……でも、知らない誰かに盗まれた。
「これも全部わたしのせいだ」
「……」
「ただの引き出しなんかに仕舞うから。オートロック付きの家に住まないから。……わたしのせいで、おばあちゃんが、」
悲しい水が零れ落ちる、寸前。真守がわたしの後頭部を引き寄せた。
「ぅえっ、」と情けない声が出ているのに、笑いもせずに背中をさすってくれる。
悲しみが真守のお高そうなスーツを濡らすのに、真守は離れろとは言わずに強く抱きしめる。
「なあゆる」
「っ、…な、に」
「俺と一緒に住まない?」
「、ぇ……?」
「鍵穴変えたところで、盗みが入った部屋にひとりで住めねえだろ。つか俺がいや。心配で睡眠の質が下がる。仕事になんない」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます