第10話
……武器だ。せめてなにか、武器を持っておこう。
息を潜めて部屋を見渡せば、部屋の隅っこに立つ掃除機が目に入った。重いしあんなものを振り回せるほど力はない。でも少しでも間合いが取れるのなら。
なるべく音を立てずに歩み寄り、掃除機を入手した。その勢いで玄関へ忍び寄り、さらに踏み込み覗き穴を覗いてみる。外には誰も立っていない。慌てて立ち去ったのかな。
そんな臆病な人間であってほしい。
――そう強く願を掛け、鍵を開けた瞬間玄関扉を勢いよく外に押し出せば。
「、うわびびった。なに、どしたの慌てて。つかいたんだ。まだ帰ってきてねえのかと思っ、……ゆる?」
「ま、もり」
「顔真っ青だけど、」
掃除機が落下した。わたしの手から力が抜けたからだ。すごい音が鳴ったけどそんなの気にしていられない。
スーツ姿の真守が数メートル先で、わたしを振り返る形で立っている。
わたしの大好物を片手にぶら下げる真守は、「ゆる?」とほんの少し首を傾げてわたしの名前を呼ぶ。
こちらに近付く真守と距離が縮まるにつれ、真守が縦に横に斜めに揺らぐ。
「ひっ、ぐ、まも、っり」
ぎょっと目を開いた真守は周りを見渡してからわたしの体を引き寄せ、落ちた掃除機を回収し。
わたしを、部屋に連れ戻した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます