10.Remaining Incense of...
まだ、生きていて欲しい。勝手に放り投げた癖にどこまで、自己中なんだ、そう思った。
それは俺が一番分かっている。
なあ、美咲。俺は俺の義務をやり遂げたよ、
美咲はどうだった?
もう、俺なんか忘れちゃった?
自分の車に向けて「美咲ー、お待たせ」。
別れ際の自分の突き放しかたが良くなかったのは分かっていたが、まだ待っていてくれると信じていた。
しかし、さきほどの言葉に返事がないという事実が車内を確認する気を失くす。
けど、美咲なら…
淡い希望を持ちつつ目をつぶって助手席を勢いよく開けた。
「美咲ー!……………えっ。」
目を開いたそこに美咲はいなかった。
その時、あらゆる最悪の事態が思い浮かんだ。
もしかして、誰かに誘拐された!?
自分でそれっぽいことをしておきながら寒気がした。
それとも、…
殺されたりしたら、ウイルスにかかっていたら、俺を探してどこかに行ってしまったら、俺が嫌いになって出ていってたら、
全ての可能性が当てはまった。
確かにあの時の俺はおかしかったんだ。
でも、やっと全部終わった。
引っ掛かるものなんて何もないはずなんだ。
そうなんだよ、美咲。
これからこの世界を新しい色に染め上げるんだよ。ねえ、美咲………
誰も座っていない助手席、昨日は横目に覗けたのに…
とにかく、ここにいても仕方がなかった。
それでも生きる目的はもう無い。
とりあえず街に出よう、他の誰かに会えるかもしれない。
そう決しエンジンを掛けた、とその時だった。助手席に何かあるのが見えた。
拾い上げて見ると、何やら文章が、綴られている。
佐々木蒼さんへ
最初はいろいろと嘘だらけで驚きました。
けど、打ち解けてくれて私の心の支えでした。
本当にありがとうございました。
なぜ、これを書こうと思ったかというと、私の人生がいつ終わるか分からないからです。
さすがに蒼さんの車では死ねません。笑
だから、ここじゃないどこかへと向かいます。
私もよく分かりません。
この手紙を蒼さんが読むことは無いかもしれません、もし読めたとしても私のことなど忘れてしまっているかもしれません。
でも、これだけは伝えておきたいです。
好きです
東雲美咲より
頭より先に体が動き始めた、そんな気がした。
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