第7話 欠点×測定
初めての迷宮探索から二十日ほどが経ち、あれほど満開だった桜も散ってしまったが、寂しくなった木々の枝には今や新緑が満ちている。もうすぐ春も終わろうとしていた。
俺は、〝
まあ、戦闘実技や迷宮探索の授業で、〝
それと、〝
基本的に第一魔法と第二魔法の関係は、第一魔法を第二魔法が強化するタイプと、第一魔法が第二魔法を補助するタイプの二つになるらしい。
例えばユキの〝
ユキの場合は、〝
高階さんの場合は、〝
そこで俺の〝
〝
俺の魂には、三つに別たれているのにも
本来、
故に、魂が一つに戻ろうとするのを制御するためだけに〝
これの何が問題かと言うと、通常は第二魔法を介して第一魔法を強化増幅させるか、第一と第二魔法を接続した上で第一魔法が第二魔法を補助するため、本来ならば燃費の悪い第一魔法の魔力消費効率を第二魔法が大幅に軽減していることだ。
俺の第二魔法は〝
ちなみに、性別の変化を留めるだけや流転に身を任せるのならば魔力は殆ど消費しない。
ということで、汎用性が高い強力な第一魔法と第二魔法ではあるが、継戦能力に問題があることがわかったのだ。
迷宮で〝
迷宮といえば、先日のCランクのシャドウウルフがEランクの『迷いの森』に現れた件に関して、三日ほど迷宮を封鎖して調査を行ったそうだが特に問題はなかったようだ。
調査の結果、迷宮外で生まれた野良のシャドウウルフが『迷いの森』に偶々迷い込んだということらしい。
その後は特に異常もなく迷宮に通うことができている。
最近では第二魔法に目覚めた俺たちにとって、初心者向けの『迷いの森』ではもの足らなくなっていた。しかし、今の迷宮より上位のDランク迷宮に入るためには、位階を上げる必要があるそうだ。
そのための
探専で受ける魔法測定では、保有魔法の性質を確認して正(強化型)と従(干渉型)に振り分けたあと、魔法の威力、持続力、影響力、汎用力、支配力の五つを秀、優、良、並、劣の五段階で判定を行う。それを五位から四位、それぞれの位階内でさらに上と中と下の三つに分けられ位階が決まるようだ。
例えば、正四位を称していた
この辺りは国内だけの序列方式だそうで、二十年以上前に行われた主要国首脳会議で色々と揉めたらしく、現在では名乗りをあげる際に、上中下を省いて名乗るのが慣例となっていた。
五項目に対して一項目ごとに最大五点で二十五点満点ということになるため、最低得点の五点が五位下、五点ごとに繰り上げて満点のときに叙される最高位は四位中となる。
毎年一年生の魔法測定では大半が五位中。四、五人が五位上で、四位下を叙されるのは数年に一人でるかどうかだそうだ。じつは卒業生ですら四位に到達する生徒は毎年一桁ほどしかいないらしい。そのため、学校から転移できる五つの迷宮のランクは、Eが一つ、Dが三つ、Cが一つとなっている。
CランクであるシャドウウルフがEランクの『迷いの森』に現れたことは、相当イレギュラーなことのようだった。
◇◇◆◆
「さあさぁ、
今回の迷宮探索の授業である魔法測定も、大道寺さんの間伸びした号令で始まった。
「それぞれの引率の魔法士さんたちからぁ、皆さんの評価は頂いてますぅ。今日は班ごとにぃ、一人一人の第一魔法と第二魔法を『迷いの森』で見せてもらって総合して位階を決めたいと思いますぅ」
班単位で『迷いの森』へ転移して測定を行うようだ。残りの生徒は、通常の体力測定を行いながらの待機になる。
俺たちの班の順番は最後になった。それまでは男女に別れて迷宮で強化された体力測定を行っていく。
言わずと知れた体力測定の項目は、筋力(握力)、敏捷性(反復横とび)、跳躍力(立ち幅とび)、柔軟性(長座体前屈)、筋持久力(上体起こし)、素早さ・力強さ(50m走)、全身持久力(20mシャトルラン)の七種類。
どの項目も去年までとは明らかに桁が違う結果がでた。
握力 106kg(平均42kg)
反復横跳び 120回(平均56回)
立ち幅跳び 366cm(平均223cm)
長座体前屈 54cm(平均49cm)
上体起こし 77回(平均31回)
50m走 3.89秒(平均7.41秒)
20mシャトルラン 163回(平均87回)
(⚠︎括弧内の平均値は魔法士以外の数値です)
柔軟性を測る長座体前屈以外はおかしな数字になったが、魔法士の高校一年生としては平均的な数字らしい。クラスの中でも握力と上体起こしこそトップだったが、他は上位五番目前後、20mシャトルランにいたっては下から数えた方が早いくらいだった。
体力測定を終えてクラスメイトたちとダラダラしていると、やがて俺たちの班の魔法測定の番がやってくる。
班の皆んなで集まると、校庭の隅で体力測定を見守っていた高階さんと平塚さんと合流して『迷いの森』へと向かうことになった。
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▼《Tips》
第一魔法:
能力:熱と魔力を奪う性質を持つ雪の結晶を模した魔力の結晶体『
第二魔法:
形状:鼈甲の中央に水晶の花があしらわれたバチ型の
能力:
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