第76話

人は、どんなに優しい善人でも心に闇を持つものだと思う。

私のような男なら、なおさらだ。


だから、ユキの心の色を目にした時、私のような闇しかない醜い人間だからこそ、あの娘に対してだけは、徹底して最後までに愚直に、できる事なら優しく接し続けてみたい・・・そう思った。


美しい花束も、彼女の気を惹く装いも要らない。

駆け引きや手練手管など要らない。

そんなもの、そもそも私には不似合いだし、できもしない。


万が一、ユキが不幸にして、人を信じられなくなった時、ここにそういう単純バカが、一人、確かにいることだけ、記憶の片隅にとどめておいてもらえるようにだ。


人に優しくしてみたい。

私は、もしかしたら、初めてそう思えたのだろうか?

・・・それはわからない。



きっと、それは私自身が救われるため、だ。

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