第75話

冴えないツラで午前中の仕事を終え、私は変則的な時間に昼休みに入る。

休み時間をワイワイと過ごすのが苦手なので、人気のない場所のベンチに腰掛け、コーヒー片手にボーっとする。


・・・昨夜もロクに寝てないんだろうな。


元気いっぱいで、睡眠時間を削って活動するタイプらしいユキのことを思い出す。


するとスマートフォンに着信、ユキだった。


「次の目的地に向け出発です」

「少し寝不足です!」


文字から明るさがにじみ出る。

ヤレヤレ、やっぱりか・・・と苦笑いが浮かぶ。

やはりユキのメールは読んでいて楽しくなる。


時間を少し置いて・・・などと、見栄を張らずともよかろう。

私はすかさず返信する。


「あれ?お仕事時間中じゃない?」


私がサボって返信しているのではと疑ったか。


まぁ、全てにおいてテキトーな私のことだ、ユキがそう思っても不思議はない。

だが、たまたま休みが変則的な時間になり、ユキのことを気にかけた直後のことだったのは、紛れもない事実である。


「お~!ナイスタイミング!」


ユキが明るい口調で感心する。


私も正直、ユキのタイミングの良さには、この短い期間の中で、何度も感心させられている。


今は、そんな小さな事の積み重ねでしかないものの、この子には、他の人とは違う「素晴らしい何か」がある・・・最初に感じた直感は、間違っていない。


私は、そう思った。


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