第69話

いつものことだが、連休だからといって、私は特段何もせず、タバコを咥えてインスタントコーヒーなぞを啜っている。天気は良いのだがなぁ・・・。


傾きかけた太陽と、青空のコントラストをボーっと眺める。


無事着いたはいいが、気温差で疲れてないか、面倒なトラブルなどに見舞われてないか?・・・少し気になる、もっとも、ここでボーっとしている無力な男に、何ができるとは思わないが。


そもそも、こんなオッサンの心配など、お節介も甚だしいのだ。




私が、ずっと欲しかった、一度も手に入れたことのないもの、そしてこの後の人生でも決して手に入らないもののことを思った。


人は欲深い生き物だ。

それを否定する気にはならない。

欲望があるからこそ、生きる活力が生まれ、人は逞しく生きていけることもある。

仮に、才と力に恵まれ、多くのものを手にした者は、何を最後に求めるのだろう?


そういう者と対極にある私は、そのことを思った。


どうやったら、それは得られるのだ?

いや、きっと得るものではない。


求めるのではなく、そっと、最期まで注ぎ続けることができたその先に、笑って待っていて、くれるものなのだろう。


私には、あまりに遠い。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る