第9話 ドナドナされるクソ強底辺配信者


「グア! グアア!」


 肥大化した体を木々にぶつけ、森を破壊しつつ健太は一心不乱に走る。

 本当の化け物に遭遇したからだ。

 一本でも一般に入場可能な最高難度ダンジョン──D級ダンジョンのモンスターを軽く屠れるバフのかかる『イタダキDX』を二十本近く投入したのに拳を押し返された上にぶん殴られた。

 もはや人間ではない。

 殴られた後に急いで逃げたが追ってくるかもしれないと思うと気が気ではなかった。


「グオオおお!」


 途中で足元にあった足を引かけて、顔から地面に突っ込んで転ぶ。

 早く起き上がらねばと思い身を起こそうとすると見知った顔が健太に近づいてきた。


「店長! 俺を助けに!」


「何言ってんだお前」


「アガアアアア!!」


 健太が助かったと確信すると店長は間髪入れずに拳銃で健太の肩を撃ち抜いた。


「お前のせいでもうめちゃくちゃじゃねえか。うちはよくわからん連中に営業妨害されて営業中止に追い込まれるわ。SNSで阿漕なサービスしてるとかボロカスに叩かれるわ」


「痛え! なんで店に一番尽くしてきた俺にこんな仕打ちを!」


「お前話聞いてたか? 尽くしてようがそれよりデケエ失敗したら一発でパーなんだよボケが。本店はカンカンなんだぞお前。俺の手でテメエ連れてこいって言ってるしよ」


 健太は本店という言葉を聞き脂汗を流す。

 大失敗して本店に呼びだれるということは死ぬより酷いことをされた後に殺されるっとホストの間でまことしやかに語られている。

 それだけはごめんだ。


「取りなしてくれ! 店長! 俺に挽回するチャンスをくれ!」


「挽回? てめえ、そのデメキンみてえになった顔で客取れるわけねえだろ」


「アガアアアア!」


 もう一方の肩を撃ち抜かれて苦悶の声を上げる。


「畜生終われるかよ! 店長あんたが死ねええええ!」


 健太は立ち上がると動かない両腕を引きずって店長に突進をかける。

 が店長に到達する前に足の付け根を弾丸に攣ら抜かれて健太は倒れて身動きが取れなくなった。


「見苦しいやつだな。でけえ仕事してたんだこれくらい最初から覚悟しとけよ。スタッフー!」


「ああああああああ!!」


 店長は苦言を呈するとスタッフ──サングラスの黒服に健太をドナドナされた。

 この日以来、健太の姿を目撃されることはなかった。

    ───


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