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密かに憧れている白藤の宮に、あなたのことを考えている、と言われて、若竹姫の顔は(思わず、その瞳を大きく見開きながら)真っ赤になった。
若竹姫は膝枕をしてもらっている白藤の宮の柔らかい太ももの上からゆっくりとその顔をあげて、白藤の宮のすぐ隣に正座の姿勢でゆっくりと座った。(白藤の宮はそんな綿武姫の動きをずっと目で追っていた)
「膝枕はもう終わりですか?」若竹姫が座ったのを見て、白藤の宮はいう。
「はい。もうじゅうぶんです」と(恥ずかしそうにしながら)若竹姫は言う。
「若竹姫。お腹は減っていますか?」
その(急に話題を変えた、もしかしたら白藤の宮がお腹が減っていたのかもしれないけれど)白藤の宮の言葉に若竹姫は正直に「はい。すっごく」とにっこりと笑って言った。
「じゃあ、お食事にしましょう。ご飯の支度ができるまで、いつものようにあなたは家の中でのんびりとしていてください。なにせ若竹姫はお客さまですからね」と両手を大きな胸の前で合わせながら、ふふっと笑って白藤の宮は言う。
「そう言うわけにはいきません。今日は私もお手伝いします」と若竹姫は言う。
「あら? お手伝いしてくれるんですか?」(珍しいこともあるものですね、と言ったような顔をして)白藤の宮は言う。
「はい。もちろんです」
自信満々で、(ひかえめな、小ぶりの)胸をはって、若竹姫は得意げな顔で、そう言った。
「わかりました。じゃあ今日は一緒に、二人でお食事の支度をしましょう。実は若竹姫。あたなを驚かそうと思って隠しておいた、とっておきの立派なお魚があるんです」とにっこりと笑って(お魚の大きさを大げさに両方の手を広げて、子供が自慢するみたいにしながら)白藤の宮は言う。
「楽しみです」
ふふっと笑って若竹姫は言った。(お魚は若竹姫の大好物だった。もちろん、そのことを初めから、若竹姫が小さな童のころから、白藤の宮は知っていた。若竹姫はむかしむかし、白い割烹着を着て、お料理をしている白藤の宮の横にちょこんと立って、わがままを言って、お料理のお手伝いをした日のことを、なんだかすごく懐かしい気持ちで思い出していた)
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