第1話 元最強には未練がある
常々、何かが足りないと思っていた
全ての魔法が使える万能の力…ギフトを、俺は天から授かっていた
にもかかわらず、だ
満たされぬ思いを抱え、それが何なのか探し続けた
それがあれば、俺は人として生きていける
万能の力ではない、何か――
俺が考え抜いて出した結論は…
『ドスケベ美少女とスケベすること!』だった
やっぱ、乳!尻!ふともも!
人生に必要なものはそれだと思うんだよなぁ
そんな俺の名は『スカベンジャー・ホープ』
超大手ギルド『ブラックロード』のリーダー…だった男だ
残念ながら今の俺は、スケベがどうこう言ってられない事態に陥っていた
「見ろ!強姦魔がいたぞ!捕まえろ!」
「ま、待ってくれ!俺はそこまでやってねえ!誤解なんだ!」
「母ちゃん!兵士さん呼んでくれ!
罪人は捕まえてもらわねえと!」
「ち、ちくしょおおおおおおおおっ!」
ある事件により、万能の力を奪われ、自分のギルドを素っ裸のまま追放された俺
あれから何日もたっているのに、未だに服も調達できていない
俺を追ってくる警備兵たち
…元いた街からは、もうかなり離れた街なんだがな…
俺が強姦魔だって噂が広がって、今やどこに行ってもお尋ね者の扱いを受けている
…ごめん!
なんかモラトリアムって『万能の力では満たされない…』
みたいな事考えてたけど、やっぱ必要だわ万能の力!
帰ってきてくれねえかなぁ!『魔法大全(ジ・オールマイティ)』くん!
やつらにギルドを追い出されてから二週間
いつの間にか、俺が僧侶のフィブルスに、スケベを強要したって話が広がっていた
そのおかげで、どこに行っても犯罪者扱いをされ、仕事にありつけない
ギフトを失ったせいで、ダンジョン攻略もできない
復讐どころか、明日食う飯がない
「…はぁ……はぁ……っ」
警備兵を呼ばれた村を離れ、街道を進み…
道から少し外れた所に大木を見つけ、そこの木陰で一休みをする
服を手に入れることもできず、偶然拾った布を腰に巻いてるだけの格好
最近少し暖かくなってきたとはいえ、流石に体が冷える
「なんでこんな事になった…?」
低レベルの荷物持ちが、パーティ追い出されたくらいであそこまで恨むか?!
あのまま俺たちについてきてたら、まず限界が先に来て死んでたぞ?!
それに、僧侶に手を出してもねーよ!
明らかにお前ら付き合ってたじゃねーか!
人の女になんて手を出さねーよ!
僧侶が嘘をついてる…?
それか、誰かに襲われたのを俺と勘違いしてる…?
くそ、くそくそくそっ!!
あのでっかい胸を、リフトの野郎は毎晩揉みくちゃにして
あんあん喘がせてるんだろう…!
悔しい…悔しいっ……!!
力のあるうちに、とっとと童〇を捨てておけばよかった…!!
調子に乗ってハーレムパーティなんて、作ろうとしたばっかりに…!!
ぐぅぅぅ~っ…
性欲と食欲は繋がっているのだろうか
空腹に耐えかねた腹が鳴る
今やスケベどころじゃねえ…
腹が減った…寒気がする……
全力で逃げてきたせいで、何も持ってねぇ…
…死ぬのか、俺は……
ここ2日ほど、何も食べれていない
井戸水を勝手に拝借し、水分だけはなんとかしたが、もう限界か
超当たりのギフトを持って、超楽勝で超ぐへへな人生を歩めると思ったら
まさか、超逆恨みと超冤罪のコンボをくらって、何もかも奪われるとは…
くそっ…最後に……一度…一度でいいから……
でっかいパイオツのチャンネーと、スケベしたかった…っ……!!
「無念…っ……」
意識が薄れていく
子供のころから天才だ、神童だと持てはやされた俺だが
世界には何も残せなかった
俺の人生は、いったい何だったのか……
あいつにギフトを奪われ、踏み台にされるためだったのか…
…意識が完全に途切れようとした、その時……
「い、いた…!わたしの……………さま…!」
…なんだ?誰かの声がする……
街道を通っていた何者かが、俺を見つけた…?
はは、そいつは運が悪いな…
…俺の死体発見、第一号はそいつだな……
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