第6蔵 在庫処分と新装開店


俺は、対象を細かく指定した『奇倉店外(ストレンジ・ストレージ)』で

リーダーの胸元の空いた黒い謎服を、対象に取る

そうすると、黒い服は俺の中に納まろうと、その身体ごと俺に向かって動き出す


「なっ?!」

そして、引き寄せられた奴の顔面に…!!


「くらええええええええ!!!」


バキィィィン!


「ぶべらっ?!」

ギフトによる、強制カウンターパンチ!!

さらに…!


「『奇倉店外(ストレンジ・ストレージ)』、ターゲット・ギフト!!」

「ぐああああっ?!」

ギフトと共に、アイアンクローをかける猛攻

俺の怒りはこんな程度じゃない…!!


「くそっ!!」

リーダーは俺に足で蹴りを入れ、距離を取る


「ぐっ!」

アイアンクローを外されてしまった…

頭蓋骨を割るつもりでいたのに、残念だ


「お、おいおい?!ケンカか?!荷物持ちが何やってるんだよ?!」

酒場の他の客も集まってきた

ちっ…奴の傍によられると面倒だな…


「下がっていた方がいい、今のアイツ…殺気が違う」

剣士オーバーが、集まってきた連中に釘を刺す


「こ、殺す気?!どういうこってすか?!」

「…その通りだ、巻き込まれて死んでも、責任は取らないからな」


ざわっ…


俺の気迫に、一歩引く見物客たち


「よ、ようやくあるべきレベルに落ち着いたのかと思ったら

 随分な挨拶してくるじゃねえか…」

他の客に忠告をしている間に、リーダーが立ち上がった


「こいつはお仕置きが必要だな…」

「おっ、リーダーやっちゃえやっちゃえっ」

イキるリーダーと、囃し立てる盗賊ティニー

…勝負はもうすでに決まっている事も知らずに


「もう一度くらえ!『火炎飛球(ファイアーボール)』!」

体内の魔力を練り上げ、炎の形で飛ばす必殺魔法


…だが、しかし!



ぷすっ…



情けない音と煙を立て、魔法の発動は失敗した


「…ほへ?」

「お、おや?魔力は尽きてない、はず…」

自らの、煙だけしか出てこない手のひらを見て、露骨に焦るリーダー


「お前のギフトは預からせてもらった」

「は、はぁ…?何言ってんだお前…」

奴は俺の言葉の意味が解らずに、首をかしげる



「こういう事だ!

『全人身灯(ファイアーボール)』!」



俺は、アイアンクローの時に、奴から預かった

『魔法大全(ジ・オールマイティ)』を使い、火の玉魔法を唱えてやった



ボウッ!!



「う、うおおおおお?!あ、あちっ、あちぃぃぃぃぃぃぃ?!」

奴は一瞬にして燃え上がる

あの時の俺のように、床をのたうち回って


「ははははは!燃えろ燃えろ!ゴミは焼却処分しないとな!!!」

圧倒的な力…!

こいつはこんな最強ギフトを持ちながら

下種な望みを叶えるためにしか使ってこなかった…!!

生きている価値などない…!


「…水はどこ?早くあの火を消さなきゃ」

剣士オーバーが、客と一緒に水を取りに行こうとする


「このクズの味方をするのか?!」

「違う…すぐ消さないと燃え広がる…

 酒場ごと大火事にしたいのなら話は別だけど」

「…ちっ」

仕方なしに、水で流してやる事にする

…こいつ以外が死んでいい訳ではないからな


「『落下流水(ウォーターフォール)』」

魔法で水をぶっかぶせられ、火は消し止められる

酒場の連中は目を丸くして、俺のやる事を見つめている


「ど、どういう事じゃん…?!いつの間にそんな魔法を…」

「俺のギフトは覚醒した!

 相手の持ち物を何でも強制的に預かり、自分のものにできる

 それが剣でも鎧でもギフトでも、お構いなしにな…!」

これこそ『奇倉店外(ストレンジ・ストレージ)』の真の実力…

お前たちがバカにしてきた、荷物持ちの本当の力だ!


「ばかな…そ、そんな事が…?!」

驚愕の表情を浮かべるリーダー

信じられないだろう…俺を低く見積もって、排除しようとしてきた奴には…!


「え、い、いや…そんなのドロボーじゃん?!」

盗賊ティニーは、インチキが気に入らないらしく抗議の声を上げる


「職業:盗賊に言われたくはないな…」

「あ、そ、その通りですねごめんなさいっ!」

「あっさり謝った?!」

リーダーは、今までとの反応の違いに驚く


「い、いやだって、リーダーのさいきょーギフト持ってるんだよね?!」

「そういう事だ」

「……」


げしっ!!


ティニーは床に転がるリーダーに蹴りを入れた


「ふぐおっ?!」

「お、お怒りなんですよね、このどうしようもないクズリーダーに!

 いやー、あたしもいいかげんこいつとは縁を切りたいと思ってましてぇ」

そう言いつつ、げしげしと何発も奴を蹴り続ける


「お、お前ええええ?!

 さんざん優遇してやったのにいいい?!」

あっさり手のひらを返されて、奴は叫び声をあげる

…こいつがクズなのは確かだが

お前も人としてどうなんだ、ティニー…


「し、しかし…ギフトを取られた今は、こいつの方が強いのは事実…」

服が燃やされ、あの時の俺と同じように全裸になったリーダーは

真剣な目をして俺に向きなおり、そして…


「すまん!正直、そんなすごい覚醒できる奴とは思わずに、侮ってた!

 有り金全部渡すので、どうかギフト返してください!」

これ以上無いってくらい、情けなく頭を下げて俺に降伏した


「きれいに土下座したぁぁぁ?!

 あんたも人の事言えないじゃん!」

情けない奴が、さらに情けない奴に文句を言っている

…ある意味地獄だな、これは


「うっさい!俺は現実(リアル)をぼかさない…!

 ギフトに頼りきってた俺が、今やって勝てる訳が無い!

 いさぎよく負けを認めるのも、ひとつの強さだ…!」

「全然格好よくないからね!それ!」

言い争う二人の茶番を見て、だんだんイライラが増してくる


「そんなもんはどうでもいい!」

「ぐほおっ?!」

土下座するリーダーを思いっきり蹴飛ばす

こんな茶番に誤魔化されていい問題ではない


「よくも…よくもぉ!!

 純粋なフィブを騙して、手籠めにするなんて…!!」

「え?い、いや、何のこと…」

「しらばっくれるか!!」

「のわー?!」

嘘つきめ…!地獄に落ちろ!!

死ぬまで蹴り殺してくれる!!

完全に抵抗の意志をなくしたリーダーを、蹴って、蹴って、ひたすら蹴り続けて…



かばっ!



「ま、待ってリフトくん!や…やりすぎだよ!」

追いついてきたフィブに、後ろから抱きつかれて止められた


「これぐらいの痛み、フィブが受けた心の傷に比べたら!!!」

フィブは優しいから、こんなやつがつけあがるんだ…!

こいつはもっともっと、痛みと苦しみで

自分がやってきたことを後悔しながら死ぬべきなんだ!


「お、お前もなんとか言ってやってくれ!

 こいつ何か勘違いをしてるって!!」

リーダーは、フィブに口裏を合わせて止めてくれと、必死の頼み込みをする


「………」

彼女は少しの間考えた後に


「…しらばっくれるなんて許せない……

 口答えできなくなるまで痛めつけよう」

「な、なんでだー?!」

暴力を容認する決断をしてくれた

そうだ、こいつは痛みを伴わなきゃ何も反省しない!!


「お、おい!見てないで助けてくれ!

 酒場が血まみれになっちまうぞ?!」

「……」

「………」

「いや、これはどう考えてもお前が悪い」

「リフトさん!俺たちも手伝います!一緒に制裁を加えましょう!!」

「こ、こんちくしょう!お前ら、この前奢った酒代返せー!!」

酒場の連中も、俺の味方についた

正義の鉄槌がついに、下種リーダーに下るのだ…!!


「…哀れ」

剣士オーバーがぽつりと呟く


「貰い物の力でイキってた愚か者の末路…」

「ど、どいつもこいつも…っ!」

誰も味方がいなくなり、怒るリーダー

しかし、見捨てられるような事しか、こいつはしてこなかったんだ…当然だろう


「ば、バカな!最強スキル持ちの俺が、こんな小僧にぃぃぃぃ!」

…そして、集団での制裁が続き……

ついにこの下種のクズは、何もしゃべらなくなった




一段落がついた頃

叩きのめされ、裸で床に突っ伏してるリーダーを前にして

酒場の客の一人がこんな事を言った


「な、なあ…『ブラックロード』はどうなるんだ…?

 オレ、実家のモンスター退治を依頼してたんだが…」

冒険者はダンジョンに潜るもの…と初めに説明したが

省略していただけで、本当は他にもやることがある

モンスターの退治や、人同士のいざこざを解決する依頼も請け負ったりするのだ


「…それはすまない事をした…

 けど、どうせこいつの事だ、ロクな仕事をせずに後から高額請求するに違いない」

「そ、そうか…」

肩を落とす客と俺に、剣士オーバーが驚きの提案をする


「リフトがリーダーになればいい

 強い人間がトップ、それがこの『ブラックロード』の掟」

「?!」

この俺を、最強パーティのリーダーに…?


「うぇ?!一旦追放されてたのに?」

「追放したのは、その時点で役に立たなかったから

 今の彼は極めて優秀な男になった、何も問題ない」

オーバー…こいつもかなり現金な奴だな…

強ければ何でもいいのか…


「俺は別に戻る気は…」

…と、言いかけて、フィブの親父さんの件を思い出す

そうだ…怒りに我を忘れていたが、パーティが無くなるとフィブが困る


「……いや、そうだな…戻ろう」

わあっ、という声と共に、皆が拍手で祝福してくれる

『ブラックロード』の新リーダー、リフトの誕生を


「そっか、戻って来るかー…えへへっ、よろしくねリフトぉ☆」

ティニーは俺の左腕にしがみついて、恋人候補のようなアピールをしてくる

…こいつ……いい性格してやがるな……


「げ、現金すぎます!リフトくんは渡さないですからね!」

フィブがすかさず右腕にしがみついて、アピール返しをしてくる

そんな心配しなくていいのに…俺はフィブが第一だぞ


「まあ、それはそうと、こいつどうするー?」

突っ伏してるリーダーを、つんつんとつつくティニー


「処分しよう、こいつが生きていては、人類のためにならない」

「そこまで?!」

炎の玉ではなく、風の刃を出せば、建物に影響なく殺しきれるだろうか

そう思って魔法を唱えようとしたところ…


「ひ、ひいいいいいいいっ」

どうやら気を失ってはいなかったらしい

元リーダーは死にたくない一心で、出口に向かって走っていく


「ははははは、見ろよ!情けなく逃げてくぜ!」

「とどめだ!『一風両断(ウインドカッター)』―――!」

この魔法なら、一撃で仕留められ…!


バッ!


「ま、待って!そこまでしなくていいよ!つ、追放だけ…追放だけで!!

 わたしの目の前からいなくなってくれれば、それでいいから…!」

フィブが大慌てで前に出て、俺は魔法を止めざるをえなくなる

どんな悪人でも、お仕置きはすれども殺しはせず、改心の機会を与える…

聖職者の教えであり、それが彼女の心の優しさであった


「ちっ…フィブに感謝するんだな!!このゲスクズ野郎!!」

ち〇ち〇をブラブラさせながら逃げていく人影を、見送った

ギフトに頼って横暴を繰り返してきたやつだ

もうどこにも居場所は無いだろう

後悔しながら、絶望の果てに野垂れ死ぬなら、それはそれでいいだろう

俺は奴への殺意を抑えるために、そう自分に言い聞かせた









こうして、俺はギフトを覚醒させ、『ブラックロード』のリーダーになった

辛く悲しい事はあったが…これからは、新たな希望の未来へ進もう

俺たちの行く手を阻むゴミクズは、もう取り除かれたのだから―――!


































銀髪青眼、筋肉質で褐色肌の裸の男が、どしゃ降りの雨の中、走り続ける

彼は、顔面を醜く歪ませ、泣きながら叫ぶ



「俺を追放した奴ら、ぜーったい許さねぇ!

 いつか…いつか必ず叩き潰して、全てを取り戻す!!」


ドシャッ


叫んだ拍子に足を滑らせ、男は地面に転ぶ

身体は泥にまみれ、それでも激情が抑えきれずに、男は横たわったまま再び叫ぶ


「震えて眠れ、クソヤローども――――――!!!」


誰かが聞いてる訳ではない

しかし、叫ばずにはいられなかった


これは、自分自身への決意表明―――













そして…



取り除かれたゴミクズの物語が、始まる

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