第4蔵 実家からの速達
あのリーダーは、俺がいなくなったせいか過激になってる
俺だって!フィブのえっちな格好は見たい…っ!
…って、いや、そうじゃなくて
奴がいつフィブに手を出すかわからない
一度、叩きのめして更生させなきゃ…!
でも、正攻法じゃだめだ…闇討ちするとか、罠にはめるとかしないと…
あいつが闇夜に一人になるなんて事、あるか…?
俺は宿の自室に戻り、机に向かってひたすらうんうんと唸っていた
スケベリーダーを叩き潰す計画を考え出すために
ガチャッ
「リフトくんっ」
そんな思考中に、部屋へ入ってくるフィブ
他のブラックロードのメンバーは、宿を変えたようだけど
フィブだけは、まだ同じ宿に泊ってくれている
「ど、どうしたの…?昨日からずっと部屋にこもりっぱなしで…
やっぱりアレはショックだったよね…たぶん」
いや、確かに悔しいけれど、今はそれどころじゃない…
「奴の襲撃計画を練ってるんだ」
「?!」
「フィブが協力してくれれば、あいつの隙をつけるかも…」
「そ、そんなのダメだよ!
返り討ちにあって、今度こそ死んじゃうよ!」
フィブは俺の手を掴んで、潤んだ目で訴えかけてくる
…ああ、本当にフィブはいい子だ
「でも…もう我慢できない…!」
そんな子が汚されようとしてるのを、俺は黙って見てられない!
「わ、わたしがリーダーを説得するから、一週間だけ待って」
「無理だよそんな…」
「…できなかったら、二人でこの街を出よう」
「フィブ…?」
窓を開き、夜空を見上げるフィブ
月光に照らされる彼女は、神秘的で、美しくて、でかくて…
二人で冒険者になる、そんな夢を語り合った時を思い出す
屋根の上で、星空を見ながら…
あの時憧れた冒険者とは、こんなに不自由な物だっただろうか
「家族にはちょっと我慢してもらわなきゃだけど
でも、リフトくんのためなら、それでもいい…」
「う…フィブ…っ」
そう言ってくれる嬉しさと、悔しさがあった
ああ…もっと俺が強ければ、家族に苦労させる選択なんて、させないのに…
…ここまで言ってくれるんだ…
俺もフィブのために、できる事からしよう…!
あふれそうな夢を、あふれそうな胸に、もう一度詰めなおすんだ!
いつあのパーティから彼女が抜けてもいいように
少しでもお金を稼いでおく…!
数日後…
俺は恥を忍んで、あの時の新人くんたちに頼み込み、低レベルダンジョンを攻略した
流石に苦戦する事もなく、支援魔法も収納ギフトも大活躍
目をキラキラさせた新人くんが一言
「こんなすごい人を追放するなんて、前のパーティの人たちはわかってませんね!」
…ま、まさかそのまんま言われるとは…
偶然だよな…?
しかし実際、上手く回っていた
モンスターの弱い低レベルダンジョンは
危険が少ない分、時間をかけてじっくり攻略する
取り出した食事に感謝を述べられたのは久しぶりだ
…悔しいが、あのパーティよりよほど性にあっていた
ダンジョン攻略を終え、街の手前で宝物の分配を済ませ
新人パーティはそれぞれの帰路につく
「ありがとうございました!
ま、またよければお願いします!」
礼儀正しくお辞儀をされ、人生というものについて考え直す
覚醒するために分を超えたダンジョンに行く必要、あったのか…?
夢は夢、自分は特別ではないって、骨身に染みた
諦める訳ではなく、覚醒なんて期待せず、一歩一歩進む事が大切なんじゃないか?
新人の彼らのように
…とはいえ……
「くっ…やっぱり小さいな……」
体内にしまっていた宝石を取り出し、大きさを見る
手に入れた宝物は、当たり前だがどれもこれも低ランクのものばかり
稼ぎはブラックロードの百分の一ぐらいだ
フィブの事を思うと、この金額じゃ家族は苦しいままだろう
…どうすればいい…?
悩みながら、いつもの宿に帰還する
キィ…
「お、おい!リフトくん!」
入口のドアを開けたとたん、宿の主人から声をかけられた
主人はちょっと太っちょの、気のいいおじさんだ
俺たちを心配して、よく声をかけてくれる
「どうしました?ま、まだ当分、宿代は支払えますけど…」
残念ながら、ここは結構いいお宿なので、今日の稼ぎが半分飛ぶ
この街で生活を続けるなら、いずれ安宿に変えることも考えなければならない…
「この宿に、フィブくんも泊っているだろう?君と同郷らしいじゃないか」
…その話じゃなくて、フィブの事?
「え、ええ」
「昨日、彼女の家族から、この宿に手紙が届いたんだ」
「ええっ?!」
よそからの手紙は普段、二週間に一度、週初めにまとめて送られてくる
おまとめ便は輸送コストが安く済み、料金も安いからだ
そして…昨日は、おまとめ便の日じゃない
手紙が、料金の高い個人速達で送られてきたのだ
…という事は、何か緊急の用事ができたのだろう
家族が大けがを負った、とか…
「手紙を受け取った後、彼女は宿を飛び出して、明け方に帰ってきたんだが
部屋から出てこなくなってね…」
俺がダンジョンに潜ってる間に、そんな…っ
「この食事を、彼女に持っていってくれないか?
一応、合鍵で入れはするんだが…
知り合いのキミにお願いしたほうがいいと思ってね」
パンとスープ、フィブの部屋の合鍵が乗ったトレイを、手渡される
「わ、わかりました…」
ぐ…せめてその時、俺が側にいていれば…
俺は、言われた通りに、フィブの部屋まで行く
静かな廊下に、俺の歩く足音だけが響く
それは、いつも通りなのに、心に不安を掻き立てる
扉の前に立ち、ゆっくりとノックをする
コンコン
「フィブ…どうしたんだい?実家で何かあったのか?」
…俺はこの後、宿を留守にしていた事をあんなに後悔することになるとは…
思っていなかった
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