第29話 危険な賊との戦闘(前編)
怪しげな野盗に襲われていた、聖教会の馬車を発見する。
オレは馬車を助けるために、その戦いの中に突撃していく。
「素顔がバレるのは面倒だな。また、この仮面の世話になるか」
駆けながら、ポケットから仮面を取り出し、装備する。
これはエリザベス襲来の時に使った、村の民族祭り用の仮面。
目元だけを隠すので、変装にけっこう便利。
そのまま持ってきてきたのだ。
よし。これで準備は万端。
あとは戦いを収めるだけだ。
「賊の数が多くて面倒だな? よし、飛ぶか……
馬車を包囲している賊は40人以上。
だからオレは地面を強烈に蹴り出し、空中に舞う。
「あの辺に落ちるか?」
そのまま落下の力を使い、馬車の前……賊の囲む中心地に、ドンと着地する。
「ふう……さて、多勢に無勢とは、少し卑怯ではないか? そこまでにしておけ、お前たち!」
囲んでいる賊に聞こえるように、オレは大声で叫ぶ。
かなり目立ってしまったが、時間をかけている場合ではない。
何しろオレが到着した時点で、馬車の護衛の戦士たちは全滅していた。
残るは馬車の中から感じる、一人だけの気配しかないのだ。
「なんだ、テメェは⁉」
「どっから落ちてきたんだ、こいつは⁉」
野盗たちは驚いていた。
これも仕方がないであろう。
何しろ仮面を被った大男が、空から舞い降りてきたのだ。
オレが逆の立場でも、間違いなく驚く。
だが今は、そんなことに気をつかっていられない。
「オレは通りすがりの一般人だ。理由は知らないが、聖教会の馬車を襲うとは、やり過ぎではないか? この辺で止めておけ」
唖然とする野盗に向かって、オレは叫ぶ。
この戦いは既に決着がついている。
これ以上の無益な殺戮は、戦いの神に無礼だと説得する。
「通りすがりの一般人だと⁉」
「こんな怪しい一般人が、いるわけねぇだろうが! テメェ何者だ⁉」
「関係ない奴は消えろ! お前も殺すぞ!」
どうやら説得は無理そうであった。
野盗側はかなり殺気だっている。
剣先を向けながら、ジリジリとこちらに迫ってきた。
「では仕方がないな。オレは聖教会の熱狂的な信者だ。こちらに加勢させてもらおう」
野盗側に宣戦布告する。
もちろん無神論者のオレは、聖教会の信者ではない。
だが、これで敵味方の区別がつきやすいであろう。
馬車の中の生き残りに、自分の存在を伝えるためにも有効な嘘なのだ。
「構わん、そいつも皆殺しにしろ!」
「「「はっ!」」」
指揮官らしき男の指示に、野盗たちは返事をする。
数人の野盗が、オレに斬りかかってきた。
「一応は訓練されてはいるが、偽装工作は素人か……
今の相手のやり取りで、相手の指揮官の場所が判明した。
オレは闘気を解放して、一気にジャンプする。
その衝撃で馬車の窓が吹き飛ぶ。
中から少女らしき悲鳴が聞こえてくる。
すまないことをしたな。
だが今は、そんなことに構っている暇はないのだ。
「ふう……」
オレは馬車の前からジャンプして、一気に敵陣のど真ん中に着地する。
「さて、お前がこの部隊の指揮官だな?」
降り立ったのは、先ほどの指揮官らしき男の目の前。
闘気術を使ったジャンプで、一気に間合いを詰めたのだ。
「こ、この距離を⁉ テ、テメェ、化け物か⁉」
善良な村人のことを、“化け物”とは酷いな。
「死にやがれぇ!」
そんな酷い言葉を吐きながら、指揮官は斬りかかってきた。
一応は訓練されているが、それほど鋭くない。
「遅すぎるな……
もう少し対人戦を鍛錬しておいた方がいいぞ?
オレは相手の剣先を素手で砕き、そのまま指揮官の顔面を殴りつける。
「うぐふぅう⁉」
指揮官は声にならない叫びと共に、吹き飛んでいく。
手加減をしたパンチなので、殺してはいない。
だが数日は目を覚まさないであろう。
「隊長⁉」
「テメェ、よくも隊長を!」
「死にやがれぇ!」
自分たちの指揮官を殴り殺されたと思い、野盗たちは逆上する。
剣を振りかざし、一気に襲いかかってきた。
「やれやれ、殺してはいなんだがな」
幼いマリアが近くにいる。
だから平和的な解決を試みたのだが。
どうやら力ずくで解決するしかないのか?
「とりあえず、10人ほど眠ってもらうとするか」
野盗の剣先をかわしながら、オレは反撃に移る。
カウンター攻撃で、一気に二人を拳で吹き飛ばす。
そのまま流れる動きで、更に三人を吹き飛ばす。
更に追加で5人を吹き飛ばす。
これで合計10人か。
全員が顔面陥没で、地面にうずくまっていた。
「こいつ……化け物か……動きが見えねぇぞ⁉」
「だが素手だ! 殺せ!」
「そうだ! 囲め!」
やれやれ。
これだけ見せても、まだ実力差に気がつかないのか?
野盗たちはさらに逆上して、斬りかかってきた。
こうなった仕方がない。
あと10人ほど眠ってもらうとするか。
「死ぇえ!」
野盗たちは群がって斬りかかってきた。
だがオレは全ての攻撃を回避。
同時に拳のカウンターで反撃する。
「うぎぇぇえ!」
「ほぎゃぁああ!」
野盗たちは次々に吹き飛んでいく。
オレは更に攻撃しながら流れるように移動。
拳を振り回し倒していく。
さて、これで20人目か?
さて、相手も怯みだしたから、そろそろ、頃合いか?
だから、オレはある作戦を実行する。
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