消えた双子

俺には年齢が3つ下で、戸籍の違う弟がいる。数年に一度しか会えなかったが、そのときはいつもくだらない話をして笑い合った。弟は俺にとても似ていて、双子と間違えられることも多かった。それが弟の自慢でもあり、俺も誇りに思っていた。しかし、そんな弟が突然死んだ。死因は不明。弟の死を信じられず、何もかもが腑に落ちなかった俺は、弟が働いていたテレビ局に足を運んだ。


テレビ局のビルはいつも見ていたはずなのに、夜になるとまるで廃墟のような陰鬱な雰囲気が漂っていた。弟が亡くなったとされる部屋に入ると、そこには3台のビデオカメラが無造作に置かれていた。奇妙なことに、それらのカメラはコンセントに繋がれていないのに、電源が入っていた。興味を引かれた俺は、一つ目のカメラを再生した。


画面に映し出されたのは、ホラー作品のタイトル『振り返ったら…』。見覚えのない女性が暗闇の中で何かに追われている。振り返るなと言われたのに、彼女は振り返り、亡くなった友人の幽霊と遭遇する。ぞっとする内容だが、どこか奇妙な既視感があった。


次に二台目のカメラを再生した。タイトルは『血塗れの訪問者』。田舎の家で、訪ねてきた祖父の幽霊と遭遇する話だ。だが、画面に映っている家の内部が、弟が撮影した映像だとすぐに分かった。俺たちの母方の実家だった。


弟はホラー映画の撮影をしていたのか?そう考えたが、映像には妙な違和感があった。どのシーンにも弟の声が背景に微かに聞こえるのだ。しかも、助けを求めるような…。


俺は三台目のカメラに手を伸ばした。その瞬間、目の前の景色が歪み、立っていられなくなった。足元が崩れ落ちる感覚に襲われ、気づけば目の前は真っ暗になった。


次に目を開けたとき、俺は弟の職場のスタジオにいた。そこには弟がいた。だが、その姿は俺自身と全く同じで、まるで鏡の中にいるようだった。


「どうしてここにいるんだ?」俺が声をかけると、弟は振り向き、冷たい目でこちらを見た。


「俺じゃない。お前がここにいるべきじゃないんだ」


弟の声は低く、不気味な響きを持っていた。まるで彼は俺の一部ではなく、何か異質な存在であるかのようだった。そして、彼は静かに笑みを浮かべた。


「お前がここに来たのは間違いだった」


弟の影が大きく歪み、その姿は次第に薄れていく。俺は咄嗟に彼に駆け寄ろうとしたが、足が動かない。まるで重力に引きずり込まれるような感覚に襲われ、俺は意識を失った。


次に目を覚ましたとき、俺は弟の遺体安置所にいた。周りには何もない。すべてが静まり返っている。弟の顔を見つめると、彼は静かに笑っているように見えた。


俺はその笑みが何を意味しているのか、いまだに理解できない。だが、一つだけ確かなことがある。弟の死因は、決して自然ではなかったのだ。あの日、俺がカメラを手にした瞬間から、何かが狂い始めたのだ。


もう二度と、俺は彼の死の真相を知ろうとは思わない。弟は死んだ――だが、その影は今でも俺の中に残っている。


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