小さな台風、一過

たかせまこと

第1話 屁理屈

 好き。

 優しくてふんわりしてるはずの『好き』って気持ち。

 これがなぜだか自分にあてはめると、少し色合いを変える。

 粘くて重たくて、暗い。

 子どもの頃は、不思議だった。

 少し大きくなって悲しくなった。

 他の人の好きは、あんなにすてきな宝物みたいに見えるのに、何故自分のは違うのだろう。

 成長した今はすっかり開き直った。

 だからどうした。

 俺の好きが重いからといって、誰に迷惑をかけている?

 まあ、向けられた本人は迷惑かもしれないので、そこは少しだけでも自重するとして。

 後は他に何を気にすることがあるだろう。

 倫理とか規範とかモラルとか、そういうものは、後付けの社会生活を滑らかにする為の物で、気持ちを押さえつけるための物じゃないはずだ。




 屁理屈なのは承知の上で。

 俺は俺の好きを邁進する。

 なぜなら、それが俺なので。



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