第11話
「優樹とは付き合わないほうがいいよ」
「キミの親って俳優のサトルなんだろ? 優樹の母親、
「知ってるよ。──それで?」
「それを言えば私の気が惹けると思った? 私に好きになってもらえると思ったの?」
「ハハ、相変わらず気が強いね。それに大した自信だ」
「でも間違ってないでしょう?」
「……そうだね。キミのこと、好きだよ。だから付き合って」
「イヤ」
「……そう。じゃあ、やっぱり悪役は悪役に徹することにするよ。──あの熱愛報道は真実ではない。俺は本当のことを知ってるよ」
ニタリ、と口角を上げて笑う
「教えてもいいの? キミも傷つくことになるかもしれないけど」
「いいから教えて!」
◇
それから一週間が経った頃、
だが、
その日はまともに眠ることができなかった。
本当はその告白を受けたくて仕方がなかった。
──最初は中学の時、いじめられている様子を見て同情した。
だが、すぐに彼が心底優しく、凛とした人間であることに気付いた。
恋愛感情を持つまでにさほど時間は掛からなかった。
──翌日、学校で優樹に話し掛けられても、まともに返事もしなかった。
放課後、最近は毎日のように優樹と帰っていた道を、
気を抜くと涙が溢れそうになる。力任せに唇を噛みしめた、その時だった。
「いいかげんになさい」
後ろから凛と響き渡る声が聞こえ、
そこにいたのは、
◇
優樹の自宅に遊びに行くこともあった。
ある日のこと。
優樹の自宅のリビングで一枚の写真を見つけた。
テーブルの上に置かれていた、黒い手帳。その手帳から、一枚の写真が半分ほど後ろ向きではみ出している。
なにが写っているのか、気になった
そこに写っていたのは、頬にキスをする様子を写した仲睦まじいカップルの写真。
一人はずいぶん若い頃の
もう一人が腕を伸ばし、自分たちの姿を残すべくシャッターを切ったのだろう。
それは昔、
──サトルの妻であり、
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