夢見の後に従いて幻夢境へといざ赴かん 蕃神眷属退けて昭和浪漫が華と咲く
- ★★★ Excellent!!!
いわゆるテンプレの〝聖女もの〟ではありません。
というか、尋常な小説ではありません。
小栗虫太郎の魔境冒険小説の主人公が異能者であり聖女をやっている感じです。
まずH・P・ラブクラフト好きは必読です。
国枝史郎、久生十蘭、小栗虫太郎あたりが好きな方も好まれるはずです。
物語は昭和初期の日本から始まります。
上流社会の御婦人らしい温文爾雅な物言いに嫋やかな動きまで目に浮かぶようです。
そして主人公らの行く先はいわゆるナーロッパではありません。
H・P・ラブクラフト創作のドリームランドです。
吃驚します。
もうこの時点で予想のつかない世界です。
驚天動地のその冒険行は良質なペダントリーに溢れています。
聖女・千石片帆の後に続く読者は、見たこともない幻夢境の地理がパノラマのように広がり、物語が横に拡がる様を目にします。
そして聖女の設定。主人公の母や祖父。
一族の業績が語られるにつれて、物語が縦にも繋がれている事を知るのです。
在りし日の秘境冒険小説が令和にアップデートされました。
もしかすると、一読では足りないかも知れません。
どうぞ、ゆっくりと御堪能くださいますように。