第三章 殺人鬼
第27話 捕まえる機会
「それでは今宵からロミ殿を拘束するものとする」
「うそ……ちょっと何これ……何で誰も聞いてくれないの! ねぇ!」
ロミが連れて行かれて、最後全員にグレイエが戸締りをしっかりするよう言い渡した。それを聴き終えると、ぞろぞろ食堂からみんなが移動を始める。
「何と恐ろしい……これでは彼の独壇場ではありませんか」
食堂から出る時に僕はグレイエの方を振り返る。彼はこちらには目もくれず、食堂から出る人たちの誘導を行なっていた。隣でわなわなと震えるロスコに、僕はそっと告げた。
「ええ。僕も納得していませんよ」
―――
次の日、騒がしい音と共に目が覚める。廊下に出れば、数室隣の部屋のドアが全開になっていて、そこから老人の声が聞こえる。ノイの部屋だった。殺人犯が現れたのかと、僕は部屋にあったハンガーを持ち、そっと近寄る。
「どういうつもりだ!」
開いた扉の隙間からそっと中を覗く。床に座り込んだノイと、その前には剣を持った男が立っていた。男をよく見ようと僕は回り込む。
「っ!」
僕は目を疑った。そこに立っていたのはーー。
「あ、アリアム……さん」
「人が来てしまいましたか。しかし今は構っている暇はありません」
剣先がノイに向けられる。その剣は甲冑が持っていたものと同じデザインで、ホテルのものに見える。しかし甲冑についている剣は初日で全て回収されたはずだ。何故それが彼の手元にあるのか、そもそもどうやって生き延びていたのか、疑問符が飛んでは新しい情報が上塗りされていく。
「どうして……」
「っ!!」
僕の後ろから足音が聞こえ、それは部屋の中で止まった。ひゅっと息を呑むのが聞こえる。
「アリアム……アリアム!!!」
その正体はロスコだったようで、僕の前に出て彼に近寄ろうとした。しかしそれをアリアムが抑える。
「お嬢様。近づいてはなりません。怪我をされますよ」
剣をノイに向けたまま振り向かずにそう言った。ノイは座った状態でアリアムを睨みつけている。
「こ、殺すというの? それに何故ノイさんに剣を?」
アリアムは剣を持ち直してノイに近づける。
「殺しはしませんよ」
では何故こんな状況が生まれているのか。アリアムからは明らかな殺意が伝わってくる。ノイがアリアムに何をしたというのか。
「この男が凶悪な殺人犯であるからです。グレイエさんに頼まれて、ノイを捕まえる機会を狙っていました」
「その通り」
低い声と重い靴音が響く。振り返るとグレイエが立っていた。
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