第23話 要注意人物
「はい。記事によれば、グレイエさんは昔に起きた事件で人を死なせ、それが最近浮き彫りになったので、この日に警視総監を辞めているようなのです」
「え……。でも私たちの前では、警視総監であるかのように振る舞っていらっしゃいました」
「そうなんですよ。ロスコさんの家のように、このニュースがディに伝わるのは遅い。最悪届かない場合もありますから、誰からも指摘がないと思ったんでしょうね」
「そんな……そのような事件を起こしておきながら身分を偽って、我々の議論を握っていただなんて、恐ろしい……」
「警戒する必要があると思い、今朝から彼の言動は一応注意を持って見てはいました」
「この殺人も、グレイエさんの仕業かもしれない……?」
「否定はできません」
ロスコは顔を青くして新聞をじっくりと呼んでいる。しばらくそうしたところでそっとそれを返してきた。僕を見つめて訴えるように言う。
「この命は、アリアムが守ってくれたものです。だから私は必ず無事に帰らなければなりません。アターセブス家のロスコとして改めて、ボアさんと協力させてください」
「僕もそのつもりですよ、必ず犯人を突き止めましょう。推理力はアリアムさんに遠く及びませんが、なんとかできるようにします」
手を取り合った僕らは、とりあえず夕食をとりに食堂へ向かった。食堂にはすでに僕らの料理が並べられている。
「ど、どうぞ。今日はその……あの……」
「ありがとうございます。とても美味しそうですね」
トグアビさんが言いづらそうに口をぱくぱくと動かしている。彼なりに気遣ってくれたのだと思い、先にお礼を言えば、ほっとしたように肩を撫で下ろしていた。
「そ、その……」
「どうかされましたか?」
「あっ、この後、きょ、今日も話し合いがあるそうです」
「そうですか……わかりました」
僕たち二人は淡々と食事を終え、そのまま食堂で待った。しばらくすると、人が集まってくる。みんな落ち着かない様子でざわさざわと話をしているが、グレイエが入ってきてから部屋が静まった。
「それでは、今宵の話し合いを始めようか」
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