第17話 思い当たる場所

「――なので、今いる人たちは、このホテルにしばらく滞在することになるでしょう」


「なるほど……」

「そこで、この事件を一刻も早く終わらせるために、あなたのもとを訪ねたのだ」


 ロキオズが首をかしげる。僕はすかさず彼に説明をした。


「ロキオズさん、あなたは、お父様の死の真相を知りたいと思っているはずです。僕らはあなたがやったとは思っていません。だからこうして、丸腰でここに来ている」

「ボア様……」


「僕たちは持ち得る知恵のすべてをこの事件の真相を暴くことに使うつもりです。なので今は多くの情報が欲しい。このホテルには、特別な客しか入ることのできない部屋があるとお聞きしました。そこに僕らを入れていただけませんか?」


「…………」


 ロキオズは黙り込んでしまう。僕たちは彼の目を見て、表情でも訴えた。アリアムが前のめりになりながら返事を促す。


「我々には教えることができない、のだろうか?」

「……えっと……すみません。大変失礼致しました。できないというか、私はその噂を知らなかったもので。なんとお答えしたら良いのかと」

「し、知らない……?」

「ええ。私は本当にまだ未熟者でして……。ホテルのほとんどのことは父がやっていてくれておりました。その父ももういませんから」

「なるほど。ロキオズさんに情報がない可能性は考えていなかったな」

「申し訳ありません……」


 アリアムが困ったように言う。僕はそもそもその噂すら疑っていたのでそこまで驚きはしなかった。謝るロキオズを止めて、冷静に次の手を考える。考える途中で、口が動き出した。


「ロキオズさんは、小さい頃からこのホテルに住んでおられるんですか?」

「ええ。生まれた時からここにいますが……」

「それでは、噂関係なく、立ち入ったことのない場所に思い当たる場所はありませんか? ここは入ってはいけない、危険だと言われて遠ざけられていた場所でもよいのですが」


 ロキオズは再び考えて、視線を揺らした。幼い頃からこの屋敷にいるのなら、好奇心で色々なところを見て回っているはず。そして入ってはいけない場所には立ち入るなと、厳しく言われていたと予想した。

 僕もそうだったからだ。子供が入りたくなくなるような、怖い理由を添えつけられて。


「……ひとつだけ」

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