第15話 説得の適任者
「噂止まりだが、このホテルには特別な客しか入ることのできない部屋があるらしいのだ。そこに入りたい」
「なんですって……!?」
「そのためには総支配人であるロキオズさんの話を聞かなければならない。おそらくこのホテルでそれを知り得るのは彼だ。しかしロキオズさんは、昨日拘束されてしまった」
「そうですね……それで、トグアビさんに?」
「そう。まあ、トグアビさんから直接情報を得るのは難しいが、彼の協力でロキオズさんに接触を試みることはできるだろう」
「何故そうなるのか僕にはわかりません……」
「答えは食事だ。ロキオズさんは拘束されている間でも、必ず食事の時間はあるはず。そしてその準備はトグアビさんが行うはずだ」
「なるほど。そういうことでしたか」
アリアムの考えがようやく僕にも分かった。ロキオズさんに接触できるかもしれない食事のタイミングを狙うつもりらしい。
「そこで、ボアさんの協力が必要なのだ」
アリアムは自身満々そうに僕に手を差し伸べる。僕の頭には再び?マークが浮かぶ。
「そこが腑に落ちなくて。何故僕が必要になるんでしょう?」
「それはあなたがご両親から受け継いでいる交渉力を、僕が買っているからだよ」
「ええ?!」
とんでもないことを言い出すなぁと思いつつもなんとなくやりたいことのイメージはできた。まずはトグアビさんからロキオズさんの食事の時間とどのように提供されるかを聞き出し、ロキオズさんに接触する。ロキオズさんから特別な客しか入れない部屋について聞き出すことが目標だ。
「大丈夫、ボアさんと話せば、みんなきっと情報をくれるよ」
優しく肩を叩かれ、本当だろうかと疑いながら僕らは食堂に辿り着いた。運良くそこにはデーブルクロスを畳んでいるトグアビさんがいた。
「あっ、お、おはようございます」
「おはようございます。ちょうどよかった。トグアビさん。あなたに用がありまして」
「何かご、ご用ですか? 僕なんかに」
「ええ。ロキオズさんの昼食について、お聞きしたいのです」
「ええ!? な、なぜそんなことを?」
「お食事を用意されるのはあなただと思いましたので。違いますか?」
唸りながら彼は目線をチラチラと彷徨わせている。彼は元からオドオドとしていたので、図星をつけたのか分からない、手応えのない反応だった。アリアムがそのまま続ける。
「ロキオズさんとどうしても話したいことがありまして。トグアビさんにご協力いただきたいんです」
「え、えーっと……その」
また迷うように彼は視線を彷徨わせる。はっきりしない様子に、アリアムが再び口を開いたところで、僕がそれを制した。
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