第4話



翌日。


そういえば今日は辞令が出る日だっけと思いながら出社して、けど別に上司からの打診も無かったし自分には関係無いと思いつつ掲示板に寄ってみた。

すると、



「・・・・・はあァ!!??」



掲示板の真ん中、A4の紙に書かれた辞令には





辞令


総務部係長  齋藤 ゆき乃


7月1日付で生産管理部へ異動





と、そう書かれていた。











「課長!あの辞令、どういうことですか」



自分のデスクに荷物を置いてすぐ、直属の上司に訊ねると

課長は半笑いで「どういうことって言われても、あのまんまなんだよなあ」とか言うだけ。


庶務、経理、総務。


そんな事務系部署ばかりを転々としてきた私が何故いきなり生産管理部へ異動になったのか。

そこを聞きたいんですけど!



「生産管理なんて、私行ってもきっと役立たずですよ!?」



生産管理部は文字通り商品の生産管理を行う部署で、その中には設計課や技術課など専門技術が必要な課がひしめき合っている、社内でも重要な部署だ。

なのに。



「仕方ないだろう。

大野部長自らここに来て、事務のエキスパート俺付きにひとりくれって言いに来たんだから」



課長は、あの人に言われたらしょうがないだろ?

とか言いながら私との視線を逸らした。

いやいやいやいや、アンタ、何ニヤけてんですか。

大野部長といえば社内イチ麗しいといわれる容姿の持ち主。

チラッとしか会った無いけど、それでも最初に見た時、噂は本当なんだと驚いた。



「・・・合コンのセッティングでもしてくれるとか言われましたか」



42歳バツイチ課長め。

31歳独身女が言う事でもないけど!!!



「いや、まあ・・・それは、」



図星か。



「大野部長と一緒に合コンなんて行ったら、課長のとこに女性が来る可能性はほぼゼロですよ」

「人には好みってもんがあるだろ。全員が大野部長のとこに行くわけない」



って、やっぱり合コンですか。



「・・・たかが合コン1回で、私は見知らぬ部署に売られたんですね」



はーっと大袈裟に息を吐き睨みつけたけど、当の課長はしれっと「いい経験になると思うけどなあ」と笑うばかりで、もうこれ以上話す気力が無くなってしまった。

部長付きとかまで決まっているんだったら、きっとこの決定は覆らない。



「・・・分かりましたよ。行きますよ生産管理部。

その代わり、今私が請け負ってる仕事、課長が全部引き継いで下さいね」

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