命懸けの探索で、守るべきものとは

竜骸迷宮――かつて世界を滅ぼしかけた巨竜の亡骸にして、いまなお多くの探索者を呑み込む生きた迷路。

その地上第三階層にて、若き魔法使いエルスウェンは葛藤していた。
仲間の安全を守るか、見知らぬ誰かの命を救うか。

過去の探索で幾度も他パーティを救ってきた彼の行動は、仲間の信頼と疑念を同時に呼び起こす。
戦士マイルズとの衝突、パーティ離脱の危機、そして──人々の想いが交差する、束の間の邂逅。

やがて現れる、伝説の忍者。
無言のまま潜り続けていた異色の探索者が、初めて声を発したとき、沈んでいた空気が静かに動き出す。

ここは、剣や魔法だけで踏破できる場所ではない。
心の在り方が、命の明暗を分かつ場所だ。

彼らはただ迷宮を進んでいるのではない。
それぞれの正しさを抱えながら、自らの信念と向き合っているのだ。

──友情と反発、感謝と孤独。
迷宮に渦巻くのは、瘴気だけではなかった。

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