第14話 ギルド
ゴクから”猪の魔物”を倒すという試練を与えられた天汰はその無理難題に反発していた。
「無理!無理!無理!あんなやつに僕が勝てる筈ないじゃないですか!」
「大丈夫だ!…………たぶん…………」
「『たぶん』って何ですか!お願いします!他の試練をください!し〜しょ〜う〜」
天汰はゴクの足にしがみついた。
「いいかよく聞け、お前はちゃんと強くなってる」
「そうかも知れないですけど……」
「お前……あの魔物がトラウマになってるだろ」
「……」
「図星だな、そのトラウマが残ってる限りお前は強くなれない、心配すんな死にそうになったら助けてやるから」
「……わかりました……やります……」
「よし!」
「どこにいるか、見当はついているんですか?」
「それはついてない……」
「……」
天汰とゴクは”猪の魔物”を探す為、目撃情報などを調べることにした。
天汰とゴクは街中で街行く人々や兵士に声をかける。
しかし、誰も猪の魔物の行方は知らないようだ。
「誰も知らないみたいですね」
「そうだな、もう近くにはいないのかも知れないな」
「最後、あの人に声をかけて、今日は帰りましょう」
天汰は通りすがりのお爺さんを見て言った。
二人はお爺さんに駆け寄って声をかけた。
「すみません!」
「なんじゃ?」
「僕たち以前この街に侵入してきた”猪の魔物”を探しているんですけど最近、猪の魔物を見たりしてないですか?噂とかでも良いので何か知りませんか?」
「いや〜知らないね、君たち冒険者かい?」
「冒険者?いえ僕は勇者でこの人は僕の師匠です」
すると、お爺さんは笑いながら言った。
「まだこの街にいる勇者ってことはハズレの勇者か!」
するとゴクが目つきを変える。
「ハズレだとぉ!?なんだぁジジイぃ!」
「まぁまぁ落ち着いて〜ゴク師匠〜」
天汰はゴクを
「僕たちこの世界に疎くてですね、申し訳ないんですが『冒険者』とは何か聞いても良いですか?」
「ハズレの勇者は何も知らないんじゃの〜」
「この野郎ッ」
天汰はお爺さんに殴りかかろうとするゴクを抑えながら言う。
「教えてください!」
「冒険者とは、ギルドに所属しモンスターを討伐したり依頼をこなしてお金を稼ぐ者たちやこの世界を旅しこの世界の謎を解く者たちのことを総称して冒険者というのじゃ」
(この街に長い間居るけど知らなかった、そんな組織があったなんて)
「そのギルドってどこにあるんですか?」
「東通りじゃ」
「わかりました!色々教えていただきありがとうございます!」
「お前さんも、
「くっそ!ジジイぃ!」
天汰は何も言わず今にも殴りかかろうとするゴクの手を引き、東通りへ向かった。
<天汰とゴクは東通り着いた>
東通りに着いてすぐ”ギルド”と書いてある看板を掲げた大きな建物を見つけた。
「ここだな」
「ですね」
天汰は大きな両開きの扉に手を掛け押し開けた。
すると、大勢の賑わった声が響いている。
天汰が一歩、中に踏み出した瞬間、お酒の匂いが鼻を掠める。
(臭い!)
「強そうな奴らばっかだな!」
「喧嘩売っちゃ駄目ですよ、師匠!」
「大丈夫だ、わかってるって」
天汰とゴクは建物の中央にある受付へと足を運び、天汰は受付にいた女の子に話しかけた。
「すみません!ちょっとお聞きしたいんですけど……」
「はい!何でしょう?」
「僕たち以前この街に侵入した”猪の魔物”を探しているんですけど何か情報はないですか?」
「失礼ですが、あなた方は?」
「僕は勇者でこの人は僕の師匠です」
「勇者様!?」
女の子は大きな声で驚いた。
驚く女の子の声を聞いた誰かが笑いながら大きな声で言った。
「勇者!?まだここにいるってこたぁハズレの勇者か!」
すると、天汰とゴクの背後から大勢の笑い声が上がった。
「おい、ハズレの勇者だってよ!」「ギルドに何のようだよ!」「なんの役にも立ってないやつか?」「そう、そいつだ」
「弱そうだな」「本当に神、解放できんのか?」
ゴクは下を向き歯を食いしばり強く拳を握っている。
そんなゴクに向かって天汰は言った。
「師匠、僕は大丈夫なので耐えてください」
そしてゴクは震えながら答える。
「もう我慢なんねぇ!いいよな、天汰!」
すると突然、受付の隣の階段を登った先にあるのドアが勢いよく開いた。
「お前たち!何を笑ってんだい!」
女性の声がギルド中に響く。
そして周りは静まり返った。
天汰は階段の先を見上げた。
そこには綺麗な女性が立っていた。
綺麗な女性が階段を降りながら言う。
「やめな!その子に失礼だろ!少なくとも昼間っから飲んだくれてるあんたたちよりかは立派さ!」
(誰だろう、強そうな女の人だな)
綺麗な女性は天汰に歩み寄り言った。
「ごめんね、うちの馬鹿どもが私はハズレなんて思っちゃいないよ、今私の目の前にいるのは可能性に満ち溢れた青年じゃないか」
「あの、あなたは?」
「私はこのギルドのギルドマスターをしている”バーバラ”だ、あんた勇者天汰だね?」
「はい」
「ようこそ!冒険者ギルドへ!それで今日は何用で来たんだい?」
「僕たち以前この街に侵入した”猪の魔物”を探しているんです、それでここに情報があるかもと思って来ました!」
「街に侵入した”猪の魔物”…………エンシェント・ボアのことかい?」
「エンシェント・ボア?」
「ええ、私たちはそう呼んでいる。奴らは古くからこの土地に住んでいるからね、その中でも以前街に侵入してきた奴はこの辺じゃ有名な森の
「はい!」
「そうかい、見た目によらず血気盛ん何だね、でもオススメはしないよ、奴はベテランの私達でさえ倒せないんだ。どうしても、倒すってんならウチに加入しな、ウチらならすぐに助けに行けるからね。」
すると、横からゴクが言った。
「助け?俺がいるから心配ない」
バーバラはゴクの顔をじっと見た。
「あんた、噂は聞いてるよ、この前の魔物の騒動の犯人を捕まえたっていう英雄だね?どこぞの盗賊を捕まえたと聞いたがエンシェント・ボアはそんなに甘くないよ」
「残念!あのクソ猪を追い払ったのも俺だ」
ゴクはバーバラに近づき顎を突き出し挑発した。
「戯言だね、上位ランクの冒険者でさえ、奴とまともにやり合うのは難しいってのに」
バーバラはゴクに近づき見下ろした。
「待ってください!わかりました!入ります!」
「おい!天汰!何言ってんだ!」
すると天汰はゴクの耳に
「ここに加入すれば今後の情報収集も楽になりそうじゃないですか……?」
「…………そうか、お前がいいなら、俺は何も言わねぇよ」
ゴクは少し不満そうな顔をしたが納得したようだ。
「どうやら決まったようだね!早速!冒険者登録と行こうか!」
すると、受付の女の子が言った。
「ではこれから勇者様のランク診断をします!格の紋を見せてください」
「あの……それが……格の紋まだ出てなくて……」
すると、横からバーバラが言う。
「あら〜そうかい、どうしようかねぇ……仕方ない特別にランク診断は格の紋が出てきてからにしようかねぇ」
「いいんですか?」
「いいんだよ、ギルドでは、”格”が全てでは無いからね」
すると受付の女の子が紙をカウンターの前に出して言った。
「ではこちらにお名前をお書きください!」
天汰は名前を書いた。
「ではギルドカードを作成するのでしばらくお待ちください」
そして数分後、受付の女の子が戻って来た。
「こちらが勇者様のギルドカードになります!」
渡されたのは、銅色のカードに名前が書いてあるカードだった。
「勇者様のカードは最低ランクのブロンズカードを作成致しました、ギルドのランクは下からブロンズ、シルバー、ゴールド、ダイヤモンド、さらにその上がミスリルとなっております!ランク上げは”格”や”功績”によって引き上げられます、頑張ってミスリルランクを目指してください!」
「ありがとうございます!」
<天汰はギルドカードを受け取った>
「等ギルドでは国中の依頼を皆様に斡旋しております!依頼を受けたい場合は入口の右手側にある掲示板から依頼を取ってこちらの受付までお持ちください!」
「わかりました!登録も済んだので、早速エンシェント・ボアの居場所を教えて貰えますか?」
「エンシェント・ブルの依頼は丁度入ってきております!お受けになられますか?」
すると、ゴクが鼻で笑い言った。
「そういうことか、あのクソ猪の居場所教える代わりに天汰をギルドに加入させて俺たちがクソ猪を退治するついでにギルドの功績にするわけか、俺たちまんまと乗せられたぞ」
天汰は笑って言った。
「まぁwin-winで良いじゃないですか?」
「うぃんうぃん?なんだそりゃ、まぁお前がいいならいいけどよ」
天汰は受付の女の子に言った。
「引き受けます!」
「ではこちらがエンシェント・ブルの居場所の地図と依頼内容の詳細です。依頼達成の締め切り期間は一週間です、討伐されましたら亡骸をお持ちになるか回収班を呼んでいただければ依頼完了となります、エンシェント・ボアはこの辺りでは1番強い魔物です、心して挑んでください。」
<次の日>
天汰とゴクはエンシェント・ボア討伐の為、エンシェントボアのいる森へ来た。
「どうやら、この辺りにいるようなのですが……どこにいるんですかね?」
「居たぞ、天汰………………俺たちの後ろだ」
この世界に武器はこれしかない!~成長する武器しか使えない異世界で1本の棒を鍛えてみる~ 野河 真壱 @shiniti23
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