第12話 恩人
雷鳴のような音が聞こえ天汰は目を覚ました。
「うあっ」
隣のベッドには大きなイビキをかいて寝ているゴクがいた。
(なんだ、ゴクさんのイビキか、てっきり雷が落ちてきたかと……)
外は暗く虫の音が聞こえる。
天汰は暖かい目でゴクを見た。
(ゴクさん、無事で良かった)
すると、天汰のお腹が鳴った、天汰は自分の痩せ細った体を見る。
(お腹空いたな……ん?待って?何だ、この匂い)
天汰は自分の体の匂いを嗅いだ。公園の汚い公衆便所と同じ匂いがした。
「僕すごく臭い……」(まずは風呂だな……)
天汰はベッドから出て宿の風呂へ向う。
外に出ると街は疲れたかのように静かだった。
<宿の風呂>
天汰は風呂場に入ってすぐ辺りを見渡した。
(良かった誰もいない)
脱衣所に行って服を脱ごうとした時、籠の中に服とメモがあることに気づいた。
天汰はメモを読んでみた。
『天汰くんへ、この服使ってね、それから宿の酒場のテーブルの上にミートパイを作ってるから食べなさいな女将より』
(女将さん……ありがとうございます!後で直接お礼を言わないと)
天汰は汚れた服を脱ぎ脱衣所から風呂場へ入る。
湯船に溜まったお湯を桶で汲みに頭からかぶる。
濁った水が天汰の体から流れる、石鹸を手に絡め泡立たせてから頭と身体を念入りに洗った。
洗い終わった後、ゆっくりと湯船に浸かり一息つく。
天汰は何も考えずぼーっとしていた。
のぼせてきたところで湯船を出た。
<天汰はお風呂を上がった>
天汰はお風呂を上がり宿の酒場に向かう。
宿の酒場に着くとテーブルの上には皿に盛られたミートパイがあった。
ずっと空腹だった天汰は貪るようにミートパイを食べた。
「美味い……」
天汰の目から涙が溢れた。
ずっと食べ物を欲していた天汰の胃袋にミートパイが染み渡る。
(僕、どのくらい食べてなかったんだろう……)
天汰はお皿に盛られていたミートパイをあっという間に平らげた。
その後、天汰はゴクの部屋に戻りまたベッドで横になり一息吐いた。
そして、満腹のお腹を抱え再び眠りについた。
<翌朝>
「あま……きて……天汰く……起きて!天汰くん起きて!」
女将さんに声をかけられ天汰は起きた。
天汰は眠い目を擦り、見上げると女将さんと目が合った。
「あっ女将さん!おはようございます!ミートパイと服!ありがとうございます!」
天汰は起き上がり目が覚めて10秒も経たずにお礼を言った。
女将さんはそのシュールな光景に笑い、笑顔で言った。
「ふふっ良いのよそんなこと!それより王国の兵士さんが来てるわよ!」
「王国の兵士さん?……わかりました!すぐ行きます!」
<天汰は部屋を出て階段を駆け降りた>
階段を降りてすぐの所に待っていた、王国の兵士とその兵士と話ているゴクがいた。
「おい、てめぇ強そうだな、俺と勝負しようぜ!表出ろ」
「いえ、結構です……」
ゴクは兵士に向かってメンチ切っていた。
(何やってんだあの人……)
天汰は引いていた。
すると、ゴクが階段を降りてきた天汰に気づいた。
「よ!起きたか、天汰!」
「あっゴクさん!無事で良かったです!」
「お前もな!お前が俺を運んでくれたんだろ?助かったぜ」
「いえ、お礼を言うのは僕の方です、ありがとうございます」
「おう!無事で良かった!」
「それより、こいつが話あるってよ」
ゴクは兵士を親指で指差した。
(ええ……この人、僕に用があるって知ってて喧嘩売ってたの……)
「おはようございます!勇者天汰様!王より城へ帰還せよとの命令が!」
「わかりました!すぐ向かいます!」
「それとゴク様、王があなたも連れて来るようにと」
「俺も?」
ゴクは首を傾げた。
<天汰とゴクは兵士と一緒に城へ向かう>
<イノセント城・大広間>
「勇者天汰!無事じゃったか!不甲斐ないソナタには迷惑をかけてばかりじゃ、まさかダン・デービーが刺客だと見抜くことが出来なかった……本当にすまなかった」
王様は深く頭を下げた。
(正直この気持ちをどう伝えれば良いのかわからない、この世界・この国への怒りが無いと言えば嘘になる、でも……こんなに偉い人が深く頭を下げたんだ、僕も応えないと)
「良いんです……もう過ぎたことですから」
天汰は歯に噛んだ笑顔で応えた。
「ありがとう……」
王様はゴクを見て言った。
「それとソナタにも礼を言う、ダン・デービーを捕らえてくれてありがとう」
「気にすんな、俺はコイツを救うために動いてただけだ」
ゴクは天汰の頭を撫でながら言った。
「ありがとう。今回、呼び出したのはお詫びと礼をする為じゃ」
王様は咳払いをし兵士に向かって言った。
「”あれ”をもって参れ」
すると一人の兵士がお盆の上に積み重なった巻物を運んで来た。
「これはスクロールといってな、広げると”スキル”を覚えることが出来る、
「スキル?
「スキルとは、あらゆる生き物が持つ特有の能力のことじゃ”身体強化”や”索敵”など様々なスキルがある。大抵、スキルは自身を鍛えることで得られるのだが、スクロールでしか手に入れることが出来ないスキルもある。」
「なるほど!」
「そして、|英雄級エピック》とはレア度のことじゃ、この世界の代物にはレア度というものがある、下から
「そんなもの貰って良いんですか?」
「お詫びとお礼じゃよ、この中から好きなものを受け取るが良い」
<天汰はスクロールを選び受け取った>
「ありがとうございます!」
「ほれ、開いてみよ」
天汰は一瞬戸惑いながらもスクロールを開いた。開くとスクロールの中の文字が光を発する。
「イテッ」
すると天汰の脳に電流が走り痛みのあまり目を閉じた。
「どうしたんだ?天汰」ゴクは天汰の様子を見る。
そして、天汰はゆっくりと目を開けた。
するとそこには、ゲームのような画面が広がっていた。
[ 天汰は スキル:”鑑定” を習得した ]
(なんだ……これ)
「鑑定?」
「なんじゃと!?鑑定と言ったか!?」
「はい」
「それは、スクロールで得られるスキルの中でもさらに希少なスキルじゃ、まさか鑑定が出るとは……」
「そんなに良いものなんですか?」
「ああ、この世界に鑑定を持っている者は片手で数えられるほどと言われておる」
(そうなのか……なんか、この世界に来て初めて良いことあったのかも!)
「それでは、次にゴクよ礼を受け取ってくれ」
ゴクは少し黙り込む。
「ん?どうしたのじゃ?」
そして口を開いた。
「いや俺はいいや、恩人を助けてお礼を貰うなんて俺にはできねぇ、この前のお礼もいらねぇ」
「よ、良いのか?」王様は戸惑っている。
「それより、これは頼みなんだが……」
「ああ、なんでも言ってくれ!」
ゴクは天汰の頭にポンっと手を置いて言った。
「こいつを俺の弟子にくれ」
(え?……)
「俺の恩人を元の世界に帰してやりたい、頼む」
ゴクは頭を下げた。
王様は目を瞑り考える。
そしてゆっくりと目を開け言った。
「よかろう、ソナタを信頼して勇者天汰を任せる、くれぐれも裏切るで無いぞ!」
「ああ、もちろんだ」
天汰の目から涙が溢れる。
「どうしたんだよ、また泣いてんのか?」ゴクは笑いながら問いかけた。
ゴクは泣きながら言った。
「僕も゙師匠はあなたが良いと思ってた……あの時、助けてもらった時からあなたみたいになりたいってずっと思ってま゙した……」
「そうか……それなら!俺の究極の棒術教えてやる!俺と一緒に極みを目指そう」
「はい゙!」
[ ”神に⚪︎×な △者:
(あれ?ゴクさんの名前の後ろに文字化けしてる、僕の体にスキルがまだ馴染んで無いのかな……)
「では、勇者天汰よ引き続き人器を変化させられるよう、励むと良い!」
<天汰とゴクは城を出た>
「ゴクさん本当に良かったんですか?」
「いいんだよ、お前は俺の恩人だ、あの暗い何も無い空間から出してくれたんだ、次は俺が元の世界に帰してやる番だ、約束だ」
天汰は涙ぐむ。
「おい、また泣くんじゃないだろうな」
天汰は目に溜まった涙を拭って言った。
「ありがとうございます!ゴク師匠!」
天汰は深く頭を下げた。
ゴクは鼻をかいて言った。
「帰るか」
「はい!」
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