第十九話 借金完済!

「かっかっかっ、無事に仕事を終えられたみたいだな、結構、結構」

「…」

 アマリエとの楽しい旅の日々は終わり、ご機嫌のハゲ爺の所に帰って来た。

 折角のいい気分になっていたのに、ハゲ爺の顔を見た瞬間最悪な気分になった…。

 さっさと話しを終えて、アマリエと一緒に部屋に戻って旅の疲れを癒そうと思う。


「俺の借金は幾ら減るんだ?」

「慌てるな、ちゃんと用意してる。カルラ、見てせやれ!」

「…」

 ハゲ爺が名前を呼ぶと、ハゲの後ろに立っていたメイドさんが無言で俺の前に来て紙を乱暴に差し出してきた。

 俺が紙を受け取ると、ふんっと俺に背を向け、また無言でハゲの後ろへと戻って行った。

 俺、メイドさんを怒らせるような事をしたかな?

 そう思ってメイドさんの顔をよく見ると、メイドさんはアマリエが四人連れてきた中の一番年上の女の子だった…。

 まぁ、俺に選ばれなかったせいでハゲ爺のメイドになったのだとしたら、怒られて当然だな。

 メイドさんに心の中で謝罪しつつ、受け取った紙の内容を確認した。


 紙には、今回の仕事の代金として三百万ユピスと書かれていた!

 思いの外金額が高かったので一瞬喜んだが、経費はきちんと引かれているし、一人暗殺して三百万ユピスは安いのでは?と思ってしまった。

 でもまぁ、文句を言った所で金額が変わる事は無いだろう。

 アマリエに紙を手渡し、俺はアマリエを連れてハゲ爺の前から立ち去った。


「お仕事、お疲れさまでした」

「うん、アマリエも手伝ってくれてありがとう。今日はゆっくり休もう」

「はい、そうしてください。私は隣の部屋で後片付けをしておりますので、御用の際は声を掛けてくだ去ればすぐに参ります」

「いやいやいや、アマリエも今日は休んでよ!後片付けは明日俺も手伝うからさ!」

「ですが…」

「よしこうしよう!アマリエも俺と一緒の部屋で暮らせばいい!」

「よろしいのでしょうか?」

「よろしいもなにも、俺とアマリエは夫婦だろ?一緒の部屋で暮らすのは当然じゃないか!」

「…分かりました、荷物を持ってまいります」

「手伝うよ!」


 アマリエの荷物と言っても着替えくらいしかなく、引っ越しはすぐに終わった。

 アマリエの部屋は俺の隣で、一緒の部屋でも良いと言ったが、それは断られてしまった…。

 まぁ、流石に着替えとかは見られたくはないか…。

 その割に、お風呂には一緒に入って体を洗ってくれたり、夜は一緒のベッドで寝てくれたりする。

 女心はよく分からないが、俺はまだ十二歳のガキで名目上だけの夫婦だから、弟みたいに見られているのだろうな…。

 借金を返済し終わるまでは自立した生活は送れないし、それまでは姉弟のままでいい気がするな…。



 俺の初仕事から五年の歳月が過ぎ、ついに借金を全額返済する事が出来た!


「ハゲ爺、もう俺の借金は無いんだな?」

「ないぞ、ウィリーベルは今後わしから仕事を受けてもいいし、受けなくてもよい。

 お前の好きにするといい」

「分かった、俺はここを出て行くが文句は無いんだな?」

「かっかっかっ、心配性じゃな、しかし、呼び出しには答えてもらうぞ」

「それくらいは分かっている」

 俺はこの五年間、ハゲ爺からの仕事を引き受け、様々な人を殺し続けて来た。

 その旅に罪悪感に潰されそうになったが、アマリエが傍にいてくれて俺を精神的に支えてくれた。

 アマリエがいなかったら、俺は間違いなく潰れていただろう…。

 アマリエには感謝してもしきれないくらい恩を感じているし、俺の妻にはもったいないくらい良い女性だ。

 借金も返済出来た事だし、アマリエとは本当の意味で良い夫婦になれる事だろう。


 大金持ちになるのであれば、このままハゲ爺から貰える仕事を続けて行った方が近道だ。

 しかし、もうできる限り人殺しの仕事はやりたくないし、アマリエに負担を掛けたくもない。

 何処かの町に移住して、そこでアマリエと二人で慎ましく生きていくのも悪くないと思っている。

 アマリエに苦労を掛けた分は、贅沢をさせてやりたい。

 それくらいは、俺が頑張って仕事をすれば何とかなるだろう。


「ハゲ爺、意味もなく呼び出したりするなよ!」

「分かっておる、わしに呼び出されたくなかったら、大人しくしておくんだな!」

 ハゲ爺に別れを告げ、俺は自分の部屋へと帰って行った。

 ついでに、俺が選ばずハゲ爺のメイドになっていたカルマは、三年前にお金持ちの所に嫁に行っている。

 俺がもう少し早く借金を返済出来ていればカルマも俺の嫁に出来たのだが、惜しい事をしたぜ…。


「!?」

 部屋の扉を開けた途端、俺の首めがけてナイフが突き出されてきた!

 ちっ!

 ハゲ爺が俺を用済みだとして、暗殺者を仕向けて来たか!

 まぁ、俺が色々話せば独立都市アデリーリャの未来は無いだろうから、当然の処置なのかもしれない!

 しかし、そう簡単にやられるほど俺は甘くないぜ!

 ナイフを突き出してきた相手の腕をつかみ取り、引き倒して上から膝で押さえ込んだ!

 ハゲ爺がどんな奴を仕向けて来たのか顔を拝んでから、ハゲ爺を殺しに行く事にしよう!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る