第九話 俺の嫁

 俺の前には、四人の女の子が並んでいる。

 左から十八歳くらい、十五歳くらい、十二歳くらい、六歳くらいの年齢だろう。


 十八歳くらいの女の子は胸が大きく、大人びた顔立ちをしていて美しい。

 生前の俺なら、迷わずこの子を選んだだろう。

 しかし、今の俺の年齢は十二歳で、ちょっと年上すぎるかもしれない。

 非常に非常に残念だが、今回は他の女の子を選ぶしかない…。


 十五歳くらいの女の子は可愛らしい感じの女の子で、守ってあげたいという気持ちにさせられる。

 ちょっと年上になるが、この子は今の所第一候補だな。


 同じ年くらいの子は生意気そうな感じで、腕組みをして俺を睨みつけている。

 私を選ぶんじゃないわよ!

 そんな感じ…。

 まぁ、いきなり見知らぬ男の前に連れて来られたのだから、こんな態度になるのが普通かも知れないな。

 候補から外しておこう。


 六歳くらいの女の子は、地味目で大人しい感じがする。

 今も顔を伏せていて、表情をうかがえない。

 しかし、俺はロリコンではないので、この子を選ぶことは無いな。


 さてと、この中から一人選ぶのだが、自分の状況をよく考えて見なければならない。

 俺の仕事は間違いなく人を殺すだろう。

 それは、卒業試験で七人の悪人を殺させた事から明らかだ。

 その事は、訓練の時から予想はついていたので驚きはしない。

 しかし、ハゲ爺もそうだったし、俺が女の子を選ぶのを待ってくれているアマリエも俺よりも強い。

 世の中には俺より強い奴が沢山いて、俺が仕事中に死ぬ可能性が高いという事だ。

 勿論、俺は死ぬつもりは無いし、死にたくもない!

 今日まで、命がけで訓練を生き抜いて来たのだから当然だ。


 仮に俺が仕事中に死んだとしたら、俺に選ばれた女の子は悲しむだろう。

 悲しんで欲しいな…。

 むしろ喜ぶかも…。

 ………。

 ちょっと嫌な想像をしてしまったが、そう言う事もあり得る。

 だから、俺が死んだとしても、一人で生きていける様な女の子を選ぶべきだ。


 再度その観点から、女の子達をよく見てみる。

 胸が大きな女の子は、一人でもその体を生かして力強く生きて行きそうではある。

 可愛らしい感じの女の子は、誰かに守って貰わないと生きていけなそうだ。

 生意気そうな感じの女の子は、正直良く分からない。

 地味目で大人しい感じの子は、一人で生きてはいけなさそうだ。

 しかし、俺がそうだったように、鍛えて貰えば一人で生きていけるようになるのではないか?

 アマリエみたいな女性の強者もいる事だし、女性を鍛える場所もあるはずだ。

 よし!それがいい!


「アマリエさん、この子に決めました!」

「えっ、あっ、はい、この子で間違いございませんでしょうか?」

「はい、その子でお願いします!」

 俺が女の子を指差すと、アマリエは一瞬だけ信じられないといった表情を見せていた。

 他の三人の女の子からは、えっ、そう言う趣味!?と言う軽蔑した眼差しを向けらている…。

 俺が六歳くらいの女の子を選んだのだから仕方がないが、俺は決してロリコンではない!

 そう強く説明したかったが、アマリエは六歳くらいの女の子を残して、他の三人をさっさと部屋の外に追い出してしまっていた。

 残された六歳くらいの女の子俯いたままで、どんな表情をしているのかは分からない。

 選ばれて迷惑だったのか、いいや、六歳の女の子が十二歳の男の嫁に選ばれた時点で、どんな事をされるのかと絶望しているのかもしれない…。

 いや、俺は嫌らしい事は一切しないからね!

 そう伝えようとしたろ事で、アマリエが戻って来た。

 誤解を解くより、アマリエにお願いした方が理解して貰えるだろう。


「アマリエさん、この女の子をアマリエさんの様に強くして貰えませんか?」

「えっ?それは構いませんが…ウィリーベル様のお世話をする人がいなくなりますよ?」

「今までもいなかったですし、一人で何でも出来ますので構いません」

「そう…ですか?本当によろしいのですね?」

「はい、しっかりと鍛えてやってください!」

「承知しました、ウィリーベル様のお望みどおりに致します」

 アマリエさんは、六歳くらいの女の子を連れて部屋から出て行ってくれた。

 女の子はこれから地獄のような日々を過ごす事になるかも知れないが、それが女の子の将来の為になる事なのだからと理解して貰いたい。

 一人部屋に取り残された俺は、備え付けのソファーにダイブし、その柔らかさを堪能していた。


「あはっ、あーはっはっはっは、俺はやっと地獄から解放された!自由だ!自由を手に入れたぞ!」

 いやー、ずっと生きるか死ぬかの生活を送っていたせいで、こうやって気を許せる暇も全く無かったんだよねー。

 これからは自由気ままに過ごせるのかと思うと、気持がかなり楽になって来た。

 思えは、ずっと俺に似合わないシリアスな展開が続いていたから、笑い方を忘れてしまったかと思っていたほどだ。

 よし!気の済むまで笑っておこう!


「あーはっはっはっ、あーはっはっは…」

「楽しい事でもございましたか?」

「うわっ!もう、驚かさないで下さい…」

 俺は一人で笑い続けていると、いつの間にか俺の傍にアマリエが立っていて、笑っている俺を不思議そうに眺めていた…。

 馬鹿みたいに笑っている所を見られて恥ずかしかったが、恥ずかしさをごまかすために、何でもないと言っておいた。

 しかし、アマリエが俺を殺そうと思っていれば簡単に殺されてしまいそうで、笑っている場合ではないな…。


「お着替えをお持ちしました。それから食事ですが、一階の食堂で無料で食べられますので、これまで通りしっかりと食べてください」

「アマリエさん、ありがとうございます」

 必要な事だけ伝えると、アマリエは部屋から出て行ってしまった。

 ふぅ~、もう来ないよな?

 部屋の外に出てアマリエがいない事を確認し、部屋に戻って腹が減るまでゴロゴロして過ごす事にした。

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