第4.5話♡「……………………………………好きだけど」

 ~中学校からの帰路~


「そんでね、お兄ちゃんの様子を見にいったら、わたしが残したハーゲンダッツの最後の一口を泣きながらちょっとずつ、ちょーっとずつ食べてんの! かわい……じゃなくて、ほんとキモくてさー♪」

「フフ。フフフッ。フフ、フフッ」

「……なに、しぃ。なに急にツボってんの?」

「ううん、ごめんなさい。ただ……瑠璃ちゃん最近、加速してるなーって、思っただけです」

「どゆこと? ……いや、待って。そゆことか。べつに、違うから。確かにお兄ぃのことは好きだけど。兄として好きってだけで。そーゆーのはもう、卒業したの」

「お兄さんとの、結婚の話ですか?」

「……ねえ、わたしたちの周り、誰もいないよね?」

「ええ。誰もいません。この道は人通りも少ないです」

「じゃあ話すけど。しぃだから話すんだよ? ほんとに誰にも言っちゃだめだよ?」

「もちろん。わたくしは口が堅いの。瑠璃ちゃんも知ってるでしょう?」

「うん。……あのさ。……その。……あのね。……あのね?」

「(微笑みながら瑠璃の目を見つめる)」

「……………………………………………………恥ずいからやっぱ言わない」

「えー。ひどぉい。もったいぶらないでください。ぷにゅ」※瑠璃の頬を指先で突く

「あうっ。もー、やめてよ~」

「法律的に結婚して戸籍上で夫婦になるという方法がとれなくてもお兄さんを独り占めすることは可能なのかという相談がしたいのですよね?」

「やめてってば!?」

「あら? 図星ですか? あてずっぽうだったけれど」

「……はぁ。しぃには敵わないなぁ……ちょっとむかつくー」

「フフ。怒ってる瑠璃ちゃんは、ほっぺが少し膨らむから、可愛いです」

「あーもう超むかつく! くらえ! こちょこちょこちょ!」

「きゃっ、くすぐったい! やだ、フフッ、あははっ!」


(……楽しいな)


(わたしは、しぃのことが好き)


(でも、お兄ちゃんへの好きとは、やっぱり違う……)


「瑠璃ちゃん、素直になったら?」

「えっ?」

「お兄さんのこと。好きなんでしょう?」

「……………………………………好きだけど」

「小学生の頃なんて、お兄さんとたくさん遊んで、いっぱい甘えていましたよね。どうしていまは、つっけんどんになってしまうの?」

「つっけんどん?」

「とげとげしく接しちゃうってこと」

「なるほど。…………。……そうだなぁ……しぃには、いつか聞いてほしいと思ってた。わたしがどうしてお兄ちゃんにだけは、とげとげするのか。どうして、そうしなくちゃいけないって、思ったのか……」

「きっかけが、あったんですね。話してくれるの?」


 〝藍条って自分の実の妹が好きなのかよ、ぎゃははは!〟


「うん。

 …………。

 ……話すね」

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