35 古き残火と新しい炎
兵器ハ、人間ヤ精霊ニ攻撃出来ナイ代ワリニ、対神(天使)、対悪魔ニ対シテ、絶大ナ特効ヲ持チ、アラユル攻撃ヲ無力化出来ル。
コノ力がアレバ…コノ世界ヲ牛耳ル、塵芥共ヲ鏖殺出来ル…主様ノ力ニナレル!!
……ナノニ。
——ザザッ。兵器ノ損傷率…現在48%強。残存スル『
「…ッア。」
疑問。何故…タカガ、パンチ1発直撃シタダケデ……コノ女ハ…特殊装甲ヲ突破出来タ…?反応的ニ、兵器ガ鏖殺スベキ神ノ筈…ナノニ。何故?何故、何故…?
「…憎しみを私は否定しない。生者にとって、それは生きる上で原動力になり得る。だが、憎しみは連鎖はしても、自分の中では長続きはしない。」
青い炎を纏っている女は、瓦礫の上から兵器を見下ろし、拳を握った。
「全ての生命は先人の生き様を見て成長し、それを引き継ぎながら変化する…感情のままに生命を踏み躙るのなら、いずれ誰かに自身の生命を踏み躙られ、蹂躙される覚悟も必要だ。」
長話をする女の背後に、『
(全予測座標ヲ固定…【転移】開始。)
「生者の頃の『わたし』も。世界を変えようと全てを殺す覚悟を決めて…死んだ。」
頭、心臓、右肘、左肘、右膝、左膝へ『
粉塵の中…主様を探すべく、翼を展開し…兵器は空へと飛び立った。
……
…
「爆発音がしたから来て見れば…うおっ。テメェは…」
事前に秩序野郎から聞いていたとはいえ、オレ様は瓦礫の山で臨戦態勢を解き、空を見上げるメティスを見て、驚きの声を上げた。
「あの機械の娘を追っているのなら、急げ。北へ向かった。」
「おう、分かったぜ………負けたのか?」
メティスはオレ様を見て、目を丸くした。
「魂が屈服しない限り、私に敗北はない。見ての通り、無傷だが。」
「あー悪い。言い方が悪かったぜ…やる気あったのかって聞きたかったんだ。」
沈黙は一瞬だった。
「……正直に言うなら、なかった。考え方は違えど、生命の輪廻に反して生き続ける神や悪魔を滅ぼしたいという想いは、私も…」
何かを言いかけたメティスは、口を閉じて…また空を見上げた。
「行くなら早く行け…それともこの場で、輪廻に帰してやろうか?」
「ハッ、冗談じゃねえ…そんな暇はねえよっと…あばよメティス。また会えて嬉しかったぜ!!」
オレ様は、鉄クズが向かった北へと駆け出した。
……
…
天界…決別した場所とはいえ、こうして来てみるも、やはり居心地がよく…懐かしさを感じてしまう。
「…だが、それは死者の私にとって不要な感情だ。戻すのなら早くしてくれ。ここにいると…また、滅ぼしたくなってしまう。」
だが、いつまで経っても…秩序神からの反応がない…ああそうか。もう秩序神には……私を元の場所に戻す神力すらも、残ってないのか。
「……なら。」
無限に広がる大陸を巡り…自身の知見を広げ、生者の時には出来なかった事を…
例えば、あの娘がその後、どうなったのかとか…創造神への恩も、ここで返してもいいが…それは、大陸を全て巡った後でも出来るな。
どの道、ここに長居はしたくても出来ない…カオスに勘付かれる前に行くとしよう。方角的に機械の娘と出会うかもしれないが……
(……ふ。)
私は瓦礫の上から立ち上がる。生者なら涙を流したくもなるだろうが、死者は決して、涙は流さない。
私は、目元を擦って……心の底から安堵した。
——大丈夫。既に、別れは済ませている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます