番外編
Episode:1 台頭
遥か昔。天使は造られておらず、大陸を先に占拠しようとしていた悪魔と熾烈な戦闘を繰り広げていた時代。『天界』で、神の中でも権能が強く、神力が並外れて高い存在…後に『大神』と呼ばれる存在が現れた。
『◾️◾️◾️』◾️◾️◾️
『悪神』ロト
『正義神』レオ
『中立神』カオス
『秩序神』ナカラ
『混沌神』バリラ
『冥神』パティス
『祝神』マリア
『太陽神』エヌカロット
『創造神』ユティ
『破壊神』レレア
『医神』スネ
彼ら彼女らが現れた事で、戦況は大きく覆る。当時、単独では滅ぼせなかった公爵級の悪魔を次々と屠って行ったからだ。
……
焼き尽くされた平原。神や悪魔の血や死体だらけの戦場で、ぼさほざのくすんだ金髪の中年の男が血まみれで倒れていた。
「『大神』…ウワサ以上に弱え、弱えなぁ…もう、サンドバッグにするのも飽きたし死ねよ。ここは、俺達…悪魔の遊び場だぁ!!!!」
倒れた男の腹に槍が突き刺さる。
「っ、痛ったい!?やめてくれよ…このままじゃ死んじゃ…ここだ。『正義執行』!!」
男が今まで受けていた傷が一瞬で、攻撃を行った悪魔に移った。
「は、ぐぁぁぁ!?!?」
何が起きたか分からずに、悪魔が悶絶している中…男は土埃を軽く払いながら立ち上がった。
「…ふぅ。これで無傷。つまり私が『正義』という事に他ならない。どうだ痛いだろう?悪は精々、そこで跪いているといい。」
ククッ…流石は兄上。ロトに負けてないくらいの、卑劣なやり口だ。これでは悪魔が可哀想だろう。急患だ。スネ…治してやれ。
「訂正してくれ弟よ……ロト程じゃないと。」
天界を統括する予定である、このアタシに二言はない故、先ほどの言葉を訂正するつもりはないが…どうやら、遠方にいるレレアが苦戦しているようだ。恐らく相手は公爵級の悪魔で、この平原にいる悪魔の指揮している奴だろう…これは兄上にしか頼めない。
そう言った途端、兄上はアタシにだけ露骨なニヤケ顔を見せつつ、すぐに表情を戻して、何度も咳払いした。
「ごほっ…んんっ…し…しょうがないなぁ。私の自慢の弟の頼みなら。やってあげよう……」
このアタシを誰だと思っている。それに、ここにはパティスもいる。負ける事はあるまい?
「…ふっ。そうだったね…行ってくるよ。」
何度も足を止めてはアタシの事をチラチラ見ながら、レレアの元に向かって行くの眺めていると、白衣を着て、アタシよりも少し背が高い兎耳の白髪の少年が、息を切らしながら走って来た。
「はぁ…うぅ…またなのか…『権能』で受けた傷は治しずらいのだ。でもこの傷の程度なら、医療施設で3週間。最初の1週間は絶対安静。残りの2週間で、毎食の食事制限、適度な運動くらいで治せるのだ。」
「!?や、ヤだね。俺は悪魔だぞ。制限なんて…どうせ復活出来るんだ。最後まで抗って……」
———抗う?
悪魔はその声の主を見て、みるみる表情が青ざめていく。
「神とは違い、数年もすれば復活する悪魔であっても、この世界で呼吸をし、目標に向かって生きる生者である点は変わらない。その気持ち…尊重しよう。」
悪魔だったモノを丁寧に置いた後、悪魔の体液まみれのパティスが、青い炎を纏いながら、ゆっくりと悪魔の方へ歩いてくる。
「ま、待て…ひっ…確か、お前に殺されたら…復活出来なっ…!?」
「復活なぞ、あらゆる生きとし生けるもの全てに対する冒涜と知れ。これで最期だ。既に輪廻に帰した君の2599体の同胞達に、生きて抗おうとする意志を…その覚悟を見せてみろ。」
「あ、ふ…が…嘘。嘘だ……嫌だ…いやぁ。」
死が目の前にある事を悟ったのか、膝がガグガクと震えて…涙や鼻水が際限なく流れていた悪魔は絶望感に耐えられず、白目を剥いて倒れてしまった。
「魂が脆い。だが…死者を語り継ぐ語り手は必要か。」
「…パティ。そんなのいいから、運ぶの手伝って欲しいのだ。僕様は頭の方を持つから、足を持つのだ。」
「了解した。」
青い炎をスッと消したパティスは、スネの指示に従い、悪魔の両足を持ってそのまま、施設の方へと歩いて行き…この場にはアタシだけが残される。
クク…大陸を先に占拠した悪魔や、絶滅した筈の竜との抗争。ふむ…【台本】的にそろそろ、キーパーソンであるあの子が『天界』に現れる頃合いか。帰ったら、誕生パーティの支度でもしながら、迎える準備をするとしよう。
13柱目にして、最後の『大神』である『和神』ムニムニを。
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