第三話「知らない我が家」

 十月中旬。一郎の一時退院が決まった。

 ハーキュリー1の導入により、一郎は物凄い速さで日常を取り戻しつつある。その点が考慮されての結果だった。もちろん、まだ無理の利かない体なので、あくまでも「一時」なのだが。

「一郎くん、退院おめでとう!」

「ありがとうございます、中川先生。まあ、まだ仮の退院なんですが」

 退院日には、中川がわざわざ介護用のワゴン車をレンタルして駆けつけてくれた。助手席には美佳の姿もあったが、一郎の方を一瞥しただけで話しかけてさえこない。いつものように、スマホに目を落として黙々となにやら操作しているだけだった。

「さあ、乗った乗った。家まで送るから」

「何から何まですみません」

 中川がワゴン車のバックドアを開き、スロープを設置する。少々たどたどしい手つきなのは、単純に慣れていないだけなのだろう。一郎は慣れた操作でそのスロープを上がっていき、車内にすっぽり収まった。

 すかさず、中川が床から生えたワイヤーフックをハーキュリー1にひっかけ、しっかりと固定する。シートベルト代わりなのだろう。一郎もハーキュリー1を操作して、念の為タイヤをロックしておいた。

「さ、準備はいいかい? 出発しよう」

 中川は一郎の準備が整ったことを確認すると、素早く運転席へと移動し、エンジンを始動した。途端、心地よいエンジンの振動が一郎の体に伝わって来て――やがて消えた。ハーキュリー1が振動を検知して、振動軽減機能を働かせたのだろう。便利ではあるが、少し風情が足りないのでは? 等と、一郎は益体もないことを思ってしまった。

 そのまま、病院のスタッフ達に見送られながら、中川の駆るワゴン車は危なげなく救世山総合病院を後にした。向かう先は一郎の「我が家」だ。

 ――と言っても。

「先生、本当に俺の実家は、もうないんですか?」

「ああ、残念ながら。君が眠りに就いてから一年くらい経った頃だったかな、剛堂さんが思い立って家を手放して、病院に近いマンションを購入したんだ。……こう言ってはなんだが、君の御実家はバリアフリーが難しい立地だったからね」

「まあ、それは確かに」

 言いながら、一郎は記憶の中にある実家の姿を思い出した。小山内家は、救世山市の郊外の山の中に建っていた。車がすれ違うのがやっとの市道と、三十段以上ある階段を上った先にあるという辺鄙さだ。

 車椅子用のリフトを取り付けるスペースなど無かったし、家屋自体も典型的な昭和住宅で段差が多く、バリアフリー化するには大幅な改築が必要だっただろう。

 だから父の剛堂は、より病院に近く元々バリアフリー設計がされているマンションへと移り住んだのだ。

「お、噂をすればなんとやらだね。ほら、あのマンションだよ」

 中川が右手を指さす。そちらを見やると、壁の白さもまぶしい低層マンションが目に入った。どうやら、そこが今現在の「小山内家」らしい。

 だが――。

「あれ? あそこって、昔からある団地じゃありませんでしたっけ?」

 一郎はそのマンションに見覚えがあった。子どもの頃から存在する団地、そこに建つ建物の一つだ。「マンション」というよりは「集合住宅」という言葉が似合う代物で、当然バリアフリーだなんだとは無縁な場所のはずだった。

「ああ、建物自体は変わってないけど、中身は別物になってるんだよ。リノベーションってやつだね」

「りのべーしょん?」

「建物自体は立て替えないで、中身や設備を最新のものに刷新することだね。耐震工事もやってあるから、東日本大震災の時もびくともしなかったみたいだよ」

「……東日本大震災? ああ、例の大きな地震か」

 次々飛び出す聞き馴染みのない言葉の群れに、一郎は少しだけ消化不良な気分になった。一応、この二十年間にあった大きな出来事は、入院中に弥生達が差し入れてくれた本等を読んで知ってはいる。だが、知っていても実感がなければ、それは教科書で習った遠い昔の出来事と大差ない。

 一郎の身体は体験しているのだろうが、一郎自身は東日本が壊滅的な打撃を受ける程の大きな地震があったことなど、覚えてすらいないのだ。

「……浦島太郎」

 皮肉なのか何なのか、美佳がぽつりと、聞こえるか聞こえないかくらいの声で、そんな言葉を呟いた。


 ***


 そのまま、中川は慣れた手つきでマンションの敷地内へと車を滑り込ませると、エントランス前で丁寧に停車した。雨の日の乗り降りを考慮してか、エントランスの前のスペースにはきちんと屋根がある。車で乗りつけられる点といい、確かにバリアフリーが行き届いている印象だ。

 再び中川にスロープをセットしてもらい、一郎はゆっくりと車を降りた。っと、バタンッ! と大きな音を立てて助手席のドアが閉まる気配があった。見れば、美佳も車を降りていた。

「じゃあ、私は駐車場に車を停めてくるから。美佳ちゃん、案内をよろしくね」

「……はい」

 生返事を返しながら、美佳がエントランスの自動ドアの向こうへと、ずかずか入ってく。一郎も慌ててそれを追う。エントランスの中は広く、左手側の壁には大量の郵便ポストが設置されている。右手側に見える小窓は、恐らく管理人室だろう。「御用の方は押してください」と脇に書かれたインターホンが設置されている。

 だが、美佳はそれには目もくれずに、更に奥にある大きなドアの前で立ち止まった。木材をあしらった丈夫そうなドアで、両脇には細いガラス窓が開けられていて、うっすらと中の様子が見てとれた。

「……ここ、オートロックだから。扉の脇のセンサーにカードキーをタッチして、開ける」

「おお、なるほど」

 美佳がカードを取り出してセンサーにタッチすると、ドアが左右にゆっくりと開いていった。一郎もオートロックのマンションに入ったことはあるが、鍵を挿して回すタイプしか知らない。

「カードキーは、後で中川先生から受け取って。今は全部で三枚あって、私が一枚、叔父さんが一枚、中川先生が残りの一枚って感じでヨロシク」

「……ここにはよく来るのか?」

「まさか。おばあちゃんが死んでからは、一回も来てないよ」

 ぶっきらぼうに答えながら、美佳はカツカツと音を立ててマンションの廊下を進んでいく。廊下は間接照明で照らされていて、どこかムーディーで暖かみがある。少なくとも、美佳の態度よりは。

「ほら、ここ。一〇四号室」

 美佳が顎で指し示す。扉には「一〇四」のナンバープレートが貼られており、表札の類はない。美佳がカードキーをドアノブの辺りにかざすと、「カチリ」と鈍い音がした。どうやら、玄関のドアもカードキーで開くらしい。

「最後に掃除したのママだから、結構ほこりっぽいかも」

 言いながら、美佳がマスクを整えたので、自然と一郎もそうした。

「ほら、どうぞお先に」

 美佳がドアを大きく開き、一郎を促す。室内は灯りが点いておらず、薄暗い。どこか不気味に感じながらも、一郎はハーキュリー1を前進させ、「見知らぬ我が家」へと踏み入った」


   ***


 玄関の中へ入ると、自動的に天井のライトが点灯した。どうやらセンサーライトらしい。

 少し眩しさを感じながら、室内を見回す。マンションの割に広い三和土、スリムなタイプの靴箱、廊下も幅が大きく取られており手すりが取り付けられている。三和土と床の段差は殆どなく、これなら普通の車椅子でも余裕で越えられるだろう。

「あっ、そうか。このまま入る訳にはいかないか」

 室内へ上がろうとして、一郎ははたと気付いた。このまま上がっては、床を汚してしまう。本当なら、屋内用の車椅子に乗り換えて上がらなければならないのだ。もちろん、一郎にそんな準備はない。

「……別に、そのまま上がっちゃえば? どうせ、叔父さんしか使わないんだし」

「そうだな……。いや、待てよ? 確かハーキュリー1には、こんな時の為の機能が……」

 一郎はハーキュリー1の操作用に借り受けている黒いスマホを取り出すと、管理アプリを起動した。細かい設定などは、全てこのアプリから行うことが可能なのだ。

 機能一覧の中に、あった。「車輪清掃」というアイコンが目に入ったので、早速押してみる。すると――。

「わっ!? なにこれ?」

 美佳が珍しく大きな声を上げる。それも仕方ないだろう、ハーキュリー1の六つの車輪が一つずつあらぬ方向に独立して回転し始めたのだ。傍から見れば不気味な光景に移ったことだろう。

 ハーキュリー1の車輪の近くにはブラシと消毒液が装着されていて、「車輪清掃」を実行するとそれで車輪を綺麗にしてくれるのだ。スマホの画面には車輪のリアルタイム映像も映し出されるので、きちんと綺麗になったかどうかも確認出来るという優れものだった。

 ――そのまま、たっぷり五分くらいかけて車輪の清掃は終わった。その間に中川も合流したので、美佳と一緒に車輪の汚れ具合をチェックしてもらったが、ばっちり綺麗になっていた。

「いやあ、最近の車椅子はハイテクなんだねぇ」

 中川が感心したように呟く。一郎はそれを聞いて、「そう言えば、起きてからこの方『ハイテク』って言葉をあまり聞いてないな」等と思った。


   ***


 こうして、ようやく一郎は「見知らぬ我が家」へと踏み入った。

 間取りは3LDK。ここを購入した時には、姉の優子は既に椛田と結婚していた。だから、両親の二人住まいだったことになる。夫婦二人には、少々広すぎる。きっと、一郎が戻ってくる日を待ちわびていたことだろう。

 広いリビングには、剛堂が好きそうなグレーの三人掛けソファとガラステーブル、大きな液晶テレビなどが鎮座していた。インテリアなどは極端に少なく、精々が雑誌や新聞を収める為の棚と、その上に幾つか置かれた写真立てくらいのものだ。家族の共用空間に物をあまり置かないのは、小山内家の常だった。

 飾られている写真は、一郎が子どもの頃の家族写真から、美佳が生まれた頃と思しきもの、そして美佳の七五三の時らしきものだった。着物でおめかしした幼い美佳の横でほほ笑む両親は、一郎の記憶の中の二人よりも大分老け込んで見えた。

 ――不覚にも、涙が込み上げてくる。

「はい。これ、使えば?」

 流石に見かねたのか、いつもは塩対応の美佳が一郎にポケットティッシュを差し出した。

「あ、ありがとう」

「返さなくていいから」

 それだけ言うと、美佳は無関心な表情のままアイランドキッチンの方へ向かい、我が物顔で食器棚からコップを取り出すと、水を汲み始めた。そのまま飲むのかと思いきや、一度くんくんと匂いを嗅いで首をかしげ、折角汲んだ水を捨ててしまう。どうやら少し臭ったらしく、美佳はそのまましばらく水道の水を出しっぱなしにした。

「やあ、水道はきちんと通ってるね。管理会社に連絡したのが昨日だったから、ちょっと心配してたんだ。美佳ちゃん、ガスの方はどうだい?」

「ええと……大丈夫です。ちゃんと火が点きます」

 美佳がガスコンロの火を点けて確認し、中川へOKサインを送る。一郎と接する時とは逆に、柔らかく親しげな様子だ。

「叔父さんも自分で確認してね。使うのは貴方なんだから」

「あ、ああ。そうだな……」

 美佳に言われて、一郎はようやくその事に気付いた。今日からは、ここが一郎の「家」になるのだ。設備の使い勝手――というよりも使い方などは、美佳や中川がいる時に確認しておかないと、後で困るかもしれない。

 慌ててハーキュリー1でアイランドキッチンに乗りつける。と、一郎はキッチン全体の高さがやけに低いことに気付いた。母の美枝の身長に合わせたにしても、少し低い。むしろ、車椅子に乗った今の一郎がギリギリ使えるくらいの高さだ。

「このキッチンの高さって、もしかして」

「ああ。美枝さんがね、一郎くんが車椅子生活になった時のことを考えて、その高さにしたそうだよ。モーターで昇降するタイプもあったらしいんだけど、そちらは強度に問題があったらしくてね」

「母さんが……」

「おばあちゃん、椅子に座って家事してたっけ。良かったわね、叔父さん。愛されてるね」

 そういった美佳の声音には、言葉とは裏腹にどこか冷たさがあった。もしかすると、低すぎるキッチンの高さに苦労する美枝の姿を度々見ていたのかもしれない。

(ああ、そうか。美佳の俺に対する冷たさって、もしかして)

 美佳が生まれる前から一郎は昏睡状態だった。それを、祖父母や母親が甲斐甲斐しく介護する姿を見て育った美佳の心に去来したものは、果たしてどんな感情だったか? 一郎は今まで、考えもしなかった。

 彼女にしてみれば、自分に向けられたはずの母親や祖父母の愛情の一部が、一郎の介護に奪われていたと感じたのではないだろうか?

 なんとなく、そう思った。


   ***


「では、一郎くん。私達はこの辺で。荷物は今日中に業者が届けてくれるそうだから」

「はい、何から何までありがとうございます、先生。美佳も、来てくれてありがとう」

「別に。後で呼ばれて、あれこれ聞かれたくなかっただけだから」

「あはは……」

 美佳は結局、最後まで一郎に冷たかった。けれども、以前よりはきちんと会話もしてくれている。義務感からなのか、それとも律義な性格なのか。どちらなのかは分からないが、優子の娘だけあって、本質的には優しいのだろうと一郎は思った。

「一郎くん。それと、これを受け取ってくれ」

「これは……スマホ、ですか?」

「ああ。君が昔使っていた携帯電話の回線をね、優子ちゃんがずっと保持してくれていたんだよ。定期的に新しい機種に変えてデータも移していたようだから、写真も電話帳も、昔のものが入っているはずだよ」

「本当ですか? そりゃ助かる」

 中川から銀色のスマホを受け取り、一郎はそれをしげしげと眺めた。裏には欠けた林檎のマークがある。かの会社のスマートフォンという訳だ。

「その、ハーキュリー1? だっけかい。その車椅子の操作用にもスマホを持ってるみたいだから、二台持ちになってしまうけど……」

「ああ、大丈夫ですよ。こいつには荷物を入れておく場所もあるんですけど、スマホの一台くらい増えてもまだ余裕なんで」

 ハーキュリー1のひじ掛けの内側には、小物入れ用の収納スペースがある。今も、操作用スマホと財布、ICカードなどを仕舞ってあるが、収納スペースにはまだ余裕があった。

「ほほう、本当に使い勝手まで考慮されて、よく作ってあるんだねぇ。プロメテウス株式会社だったっけ? 聞いたことがない企業だけど、私もチェックしておこうかな。いつお世話になるとも限らないからね」

「そんな……中川先生、十分お元気じゃないですか」

「いやいや。今のところ日常生活にも運転にも支障はないけどね、古傷が段々痛んできているんだよ」

 中川はまだ若い駆け出しの頃に、事故で右足に大きな怪我を負ったらしい。運び込まれた病院で「最悪、切断するしかない」とまで言われる程の怪我だったそうだ。

 それを救ったのが、他ならぬ剛堂だった。剛堂は当時の最新技術を駆使して中川の右足を救い、無事歩けるまで治してみせた。それ以来、中川は剛堂を恩人と慕い、家族ぐるみの付き合いが始まった。言ってみれば、中川の右足の古傷は、絆の証のようなものだった。

「そんな訳で、私も救世山総合病院に定期的に通っている身なんだ。一郎くん、あちらで会ったらよろしく」

「そうだったんですか。お大事になさってください」

 最後にそんなやり取りをして、中川と美佳は去っていった。後に残されたのは、一郎のみ。3LDKの広い部屋が、既に恨めしい。

「さて……荷物が届くまで、どうするかな」

 ハーキュリー1の上で、上半身だけの「伸び」をする。まだ下半身の踏ん張りがきかないので、何かと上半身への負担が大きく、いつも凝り固まっているのだ。

 ――と、その時。

『ハーキュリー1サポートセンターさんからです。ハーキュリー1サポートセンターさんからです』

「うおっ!?」

 突然、ハーキュリー1の収納スペースからそんな電子音声がけたたましく響いてきた。どうやら、操作用のスマホに着信があったようだ。

「もしもし?」

『あ、小山内様ですか? 突然失礼します。わたくし、ハーキュリー1サポートセンターの飯田と申します』

 スマホのスピーカーから上品そうな女性の声が響いてくる。飯田、というのは初めて聞く名前だが、発信元は先方が設定済みのサポートセンターの番号に違いない。怪しい人物ではなさそうだ。

「あの、何かありましたか?」

『はい。実は、こちらでハーキュリー1の不具合を検知しまして』

「不具合? こちらは別に変わったことはないんですが……」

『ええ、見た目の動作自体に問題はないのですが。実は、低電圧アラートが正式に作動しなかったようなんです』

「低電圧アラート?」

『簡単に言うと、バッテリーが減ったことを知らせる警告音です。左右のコントローラーの近くで、黄色いランプが点滅していませんでしょうか?』

 飯田に言われ確認する。確かに、左右のコントローラーの近くで黄色い光がチカチカと点滅していた。一郎の記憶が正しければ、これはバッテリーの交換や充電を勧めるサインだ。

「点滅してますね。気付かなかった」

『申し訳ございません。本来ならば、音声で低電圧をお知らせするのですが、そこの処理に問題があったようです――今は、充電可能な場所におられますか?』

「はい。充電器はありませんけど、緊急充電用の電源ケーブルが確か……ああ、ありました」

 収納スペースの中を探ると、非常用の電源ケーブルが見付かった。専用の充電器より充電スピードは落ちるらしいが、ただ充電するだけならこれで十分のはずだ。

『了解いたしました。もし、充電が難しい場所においでの場合は、弊社サポートから人を寄越しますので、どうぞご遠慮なくお申し付けくださいね。……ちなみに、今いらっしゃる場所というのは?』

「ああ、ええと……自宅です。一時退院中でして」

『それはおめでとうございます。では、現在地をご自宅として登録しておきますね』

「――っ」

 何でもないことのように言うオペレーターの言葉に、一郎の背筋が少しだけゾッとなった。ハーキュリー1にはGPSと通信機能が備わっており、位置情報はリアルタイムでプロメテウス社のサーバーに送信されている。つまり、一郎の現在位置は常に筒抜けなのだ。

 分かっていたことだが、改めて実感してみるとどこか座りの悪さがあった。

『他にも何かお困りのことがございましたら、お気軽にご連絡くださいね。では、失礼いたします』

「失礼します」

 スマホの終話ボタンを押し電話を切る。この手のサポートセンターは、こちらから電話を切るまでいつまでも通話状態のままでいることあるので、早々に切っておいたのだ。特に意味のある行動ではないのだが。

「VIP扱いなのか、籠の鳥なのか。……後者かな?」

 いつだったか、弥生か誰かが「今の世の中は、何処にいても『繋がっている時代』」と言っていたが、あまり心地の良いものではないらしい。一郎は自嘲気味に、心の中でそう呟いた。

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