第5話 邂逅
後は簡単なものだった。雷の残る焼けた空気の跡を、指でなぞる様にただ追っていくだけで、上手く避雷針の跡地まで辿り着けた。連れ去られる様に導かれた為、やはり今回も道なりは分からないままとなった。
道中はデジャヴを感じた。山の表面を競う様に木々が覆う。いつの間にか、人の手入れが行き届いてない深い所まで来てしまっていた。辺りに日光は入らず、緑は黒く染まっていた。しかし、不安は何も無かった。こんなにも暗い森に誘われても、僕には、確実に残る
「記憶と同じ場所だ」
避雷針は、やはり復活していた。
日がやっと45度程に傾いた頃、ささやかな草原が
避雷針は日に当たり、きらきらと細かく輝いていた。避雷針は、ただ全てを受け入れて
もっと彼を知りたくなった。そう思い、避雷針に触れてみる。予想とは異なり、それは赤子の様な
「ハハハハハ!」
後ろから笑い声が聞こえた。あいつは森に
振り向くと、そこには、
「いやー……泣けるくらい可笑しいね。女みたいな声出して笑 しかも、いつの間にか、歳取っちゃってるし」
「……君は、あの頃の僕のままだね」
避雷針の横に、二人で向かい合って座り、少しだけ気まずい空気を溶かす様に、その為だけの簡単な世間話をした。
ただ、彼は元々避雷針なので、上手く会話を
「そういえばさ、あれから何処に居たのさ」
「んー、まあ、村の外に出て色々見ていた……って感じかな」
「念願叶ったね」
「まあでも、そんな面白いものでも無かったね。やっぱり
「……僕はこの十年、結構辛かったけれど」
「知っていたよ」
「え?」
「勿論何となくだけれど。不思議と、君のことは、たまに夢に見ていたよ」
「あんな形で引き離されたから、少し繋がっていたのかな?」
「まあ、多分そうなんだろうね。……ただ、僕も記憶が戻ったのはつい最近のことだから、思い出した時には、本当に焦ったよ」
「それは僕も同じだ。何がきっかけだったんだろうね」
「まあ、忘れ物みたいなもので……探さなくなった時に、急に見つかるんだろうね」
どうやら、僕らは同時期に記憶を取り戻した様だった。そんな偶然があったから、今こうしていられるのかと思うと、感慨深いものがある。
「まあでも多分、これは偶然じゃなくて、必然だったんだろうね」
思考を読み取ったかの様な、鋭さを帯びた彼の言葉が、嘗て若かった頃の僕の眼差しを通して飛び出し、私の古い心臓を貫いた。
「君には言っていなかったことも多かったんだけれど……まあ正確には、言えなかったんだけれど」
「うん」
「僕ら多分、あの日に初めて会ったんじゃ無いんだよ」
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