第39話

 アイヴィーがお茶会に!?オレはその報告を聞いて青ざめた。


「招待客はしっかり調べてからシアを出席させるようにと言ったはずだ!」


「申しわけございません」


 シリルが謝る。オレはハッとする。


「……いや、違うか。シリルがそんな失態するわけないよな。まさかリストになかったのか?」


「はい。もう一度確認し、調べたのですが、ありませんでした」


「主催側はなんと?」


「もちろん。使いの者を出して理由を聞きました。当日、突然いらしたそうです。一度はお断りしたのですが、半ば無理やり出席したとのことです」

 

「そうか。やはりシアに近づこうとしているな」


「そのようですね」


 なんのために?オレへの執着心がシアへの嫉妬や憎しみに変わってるのか?


「しかしシア様は自分でうまく撃退したそうですよ」


「シアが?あのアイヴィーを!?」


「はい」


 オレにとっては、本当に苦手すぎる相手だ。シアすごいなと感心してしまう。だが、そんなこと思ってる場合ではないな。


「シアの周辺を引き続き、警戒しておいてほしい」


「かしこまりました」


 シリルがスッと一礼する。そしてお盆の上にのせた招待状をオレに差し出した。王家の紋章入りか。アイヴィーの問題が片付いていないのに、こっちも来たかとオレは嘆息した。


「この次期といえば陛下の誕生日か」


 予想通り、招待状を開くと陛下の誕生パーティーの誘いだった。


「シアとフランも一緒に……か。まだシアにはオースティン殿下に再会するには早い気もするな。フランはなにか理由をつけて、断ろう。大人たちの興味本位の視線を浴びさせるわけにはいかない。シアはしかたない。オレの妻として連れて行かねば不審がられる。無理でなければ出席する方向で……」


「シア様は出席、フラン様はなにか理由をつけて欠席ですね。かしこまりました」


 シリルがオレのスケジュールを管理してくれているため、メモ帳に書き込んでいた。


「仲の良い夫婦を演じてくるさ」


 え?とシリルが少し驚き、それから笑った。


「演技などされずとも二人とも十分仲がよろしいかと思います」


「え!?そうか?」


「はい。見ているとほほえましい時があります。フラン様も含め、本当の家族にみえますよ」


 そうか。大丈夫か。ちょっと安堵した。父親らしく!夫らしく!と書物で勉強はしたものの、経験がないため、不安だった。


「オースティン殿下の周りを旦那様の指示通り、探っていたんですが」


「ああ?どうだ?」


「あの愛人、イザベラとは最近、喧嘩が多いようです。後、隣国の王子を横柄な態度で、怒らせてしまったようです。それから王になるための勉強よりもイザベラの部屋に入り浸って帰らなかったり、陛下直属の騎士に剣の稽古で負けて『おまえは解雇だ!』と叫び解雇したり、あれやこれやとわがまま放題だそうです」


「相変わらずだな」


 報告を受けてオレは腕組みした。


「よし。解雇された騎士はこちらでいつも通り雇っておけ。それからイザベラとの喧嘩の内容まで探れるなら探れ」


 優秀な執事は、はい。かしこまりましたとニッコリ優しく笑ったが、腹の底では黒く、どんな手を使ってでも王宮内を探ってくるだろう。


 シアをパーティーへ連れて行くならば、王宮内のことをしっかり知り、把握しておきたい。


 黒服のシリルはさっさと部屋からでて、行動をおこしにいく。オレは他の仕事に取り掛かる。


 やれやれ。無難に結婚して終わり……ってわけにはいかなさそうだな。


 騒がしすぎる周辺を思い、ため息をつきたくなったのだった。

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