第33話

 そもそもアルはなぜ、女嫌い、女アレルギーになっちゃったのかしら?アルに言われたとおりに契約結婚していれば、私にもフランにもいいわと思っていた。だけど、今はなぜかその理由がとても気になる。


「ねえねえ。ジャネット?」


「なんですか?シア様。お茶のおかわりでしょうか?」


 ポットを持ちあげて、お湯を注ごうとするジャネット。


「ううん。アルはなぜ女嫌いのアレルギー持ちになったの?」


 その瞬間、ドバアアアアアアとポットの注ぎ口から大量のお湯が流れ出た。


「ああああ!申し訳ありませんっ!!」


 ジャネットが慌てる。他のメイドの助けを呼んで、お湯だらけになったテーブルを片付ける。


 ……聞いてはいけなかったのね。私は反省した。ジャネットは動揺して私と目を合わせようとしなかった。


 これはダメねと思い、諦める。


 次のターゲットは昔からアルを知っているヴォルフにするわ!


 フランから離れている時を狙って、ヴォルフに尋ねた。外で筋肉トレーニングをしていた。スクワット100回やぁ~と頑張っているところを中断させてしまい、ちょっと申し訳ない。


「ちょっと聞いてもいいかしら?アルって昔から女嫌いのアレルギー持ちだったの?」


 んーーーと空を見上げるヴォルフ。何かを考えてる。


「そうでもなかったで?いつごろやろなぁ?」


 にっこりと微笑まれて、覚えてないわあ。ごめんなぁ。と軽くかわされた絶対知ってそうだが、教えてくれそうにないわと鉄壁のほほ笑みを見て、思った。再び、彼は何事もなかったように腕立て伏せ200回や〜!と地面に手をついて熱くトレーニングを始めた。


 こうなったら!!!絶対まちがいなく知ってそうな彼よ!!アルのことならなんでも知ってるはず。


 しかし近寄るのが、一番難しかったのはシリルだった。コソコソ隠れつつ、私はタイミングを゙はかる。アルのそばにいることが多い彼から聞き出すのは至難の業だった。しかし、ふとした時に離れた。今よ!と私はさりげなく近づいていって、聞いた。


「シリル、疑問に思っていることがあるんだけど、答えてくれるかしら?」


 紳士的な執事はなんなりとどうぞとニコッと笑う。


「アルはいつから女嫌いの女アレルギーなの?どうしてなってしまったの?」


 シリルが困った顔をした。


「それは……」


 彼が答えようとした瞬間だった。ドアが開いていたことに私とシリルは気付いていなかったのだ。コンコンと開いてるドアをノックしてみせるアルがいた。壁に寄りかかり怪訝な顔をしている。

 

 しまったわ……自分がやらかしてしまったことにアルの表情を見て、気付く。


「何をこないだから、皆に聞いて回っている?」


「ええっと……その……本人に聞けなくて……聞きにくくて……」


「オレに直接聞けないことを聞くな。そして後ろめたいと思うなら詮索するな」


 ここに来て、初めて聞く、冷たくて突き放すような言い方だった。鋭く私をにらみ、そしてシリルに視線を移す。


「仕事をするぞ。こんなところで油を売るなシリル!いくぞ!!」


 もうしわけありませんとシリルがアルに謝る。むしろ謝るのは私のほうだわ。


「あの……ごめんなさい……」


 私を冷たく一瞥して部屋から無言でアルは出ていった。怒っているの……よね?


 しばらくぎくしゃくとした雰囲気を続いた。フランがどうしたんですか?と不思議に思うのも無理はないくらい、アルはよそよそしかった。


 もう聞かないでおこう。人に詮索されて嫌なことは誰にでもあるものね。私は反省する。アルと仲直りできるかしら。


 しかしそんな時に限って、事件は自らやってくるのだった。


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