ggg

イタチ

第1話

「時限爆弾を食べるなんて何を考えているんだ」

目の前のカエルは、素知らぬ顔をして、私の目の前で、別の飛んでいるハエを狙っている

「可愛そうだが、死んでもらうしかないな

それにしても、奇妙な蛙だよ、自分の体よりも大きな爆弾を食べてしまうなんて

こんな場所でなけば、いや、爆弾でなければ、消化できたかもしれない

実に勿体ない

どうなんだ、こんな大きなものを、食べていたのかい自分の体よりも大きな獲物を」

白衣を着たジーパンの眼鏡女が

そんな事を言いながら、メスを握って居る

「ああ、何でもかんでも食べるさ、俺の朝食昼夜おやつまで

この前なんか、一丁の貰った食パンを、食いやがった」

ああ、それはすごいな

まつ毛を、瞬かせながら

メスを、蛙の腹に、向ける

いつものふてぶてしさは、何処にいるのか

腹に、メスを突き付けられているのに

麻酔のせいで、動くこともできないでいる

かわいそうとも思えないが

死ぬほどではないとそう思った

「なあ、蛙は、異物を、吐き出すこともできるんだろ

ちょっと待ってみては」

眼鏡がこちらに向けられ、その奥の眼が、こっちを、見たが、銀色のメスに戻される

「それは、君がもう試したことだろう、そして、時間が足りなくなったから、わざわざ、私の前にいる訳だ、可愛そうだが、ホルマリン漬けにされて

この研究室で、爆弾を、腹に飲み込んだ蛙とするか

灰にして、この蛙の好きな場所にまくか

まあ、宗派的に、埋めるのなら」

私は、それを手で遮った

「始めてくれ、こいつに宗派はない、そして、化学の発展に論じるような奴でもなかった

適当に、ビニール袋か新聞紙に包んでくれ

表のごみ箱に捨てておく」

相手は、白いらに、メスを突き立てながら

小声で、業務的に、そうかと呟いた

圧倒言う間に、切り開かれて、胃袋を見つけた医師は

銀色の台に、胃袋から取り出した物を、出し始める

「今朝の朝食は親子丼ですか」

そこには、どんぶりごと、黄色のどんぶりが、湯気を立てている

「昼は、ウィダーゼリー・・」

葡萄味とサイダー味の袋が、別のトレイに置かれる

「夕食は・・・」

コピー用紙が、クリップで止められておかれる

「おかしいですね、何処にも、あなたの求める」

その視線が、私の目を見る

疑いを向けられているのだろうか

「いや、しかし」

おかしい、それでは、爆弾が、無くなったのは

呆気に取られる僕に対し

「それじゃあ、縫合第合わせて十万円」

いつの間にか、目をさまし

こちらを見て、にらみを利かせているカエルを前に

私は、首をひねる

「じゃあ、何処に」


家に帰るために、水槽にカエルを入れると

アパートの横に止めた車に乗り込んで、雨の降りだしそうな、道路に出ている

皆はやく、この寒い場所から逃げ出したいのであろうか

早足に、服を分厚く着込んで歩いて行く

落ち葉も散らした並木道の中

煉瓦くすんだような一件の四角い建物の横に車を止めると

中に入る

木の擦れる音とともに、扉を開くと、片足で、更に押し込むように中に入る

寒い室内で息を吐けば、埃臭い空気が白く色を変えた

玄関の窓の下に、硝子の水槽を居た後、私は、耳を澄ます

風が、外を、吹くが、その音以外に、目だったものを聞くことはできない

何処に行った、何処だ

何処に、時限爆弾があるんだ

部屋をざっと、見渡すが、それが何処にあるかもわからない

「どうしたんだウォーターメロン」

いきなり、声をかけられて、飛びあがりたい気がするが

それどころの人間ではないことは、一目瞭然である

「ハンプイどうしたんだ、今日は仕事じゃなかったのか」

相手は、疲れたように、首を振ると茶色い紙袋を、テーブルに置いて、中身を漁って居る

「馬鹿じゃないの、そんなの、彼奴らの気分次第よ

やめるとかやるとかばかみたい、本当に馬鹿よ馬鹿、大馬鹿野郎」

確かこいつのボスは、女だったような気がする

いつも肌の黒い坊やを、連れているシングルマザーだったようだが」

相手は、ホットドッグに、垂れるようなタバスコをかけて、人の椅子に、足をのっけてくつろいでいる

「野郎は野郎なのよ馬鹿野郎」

酒を取り出すと、カップにも入れず、そのまま瓶の口に、じかのみしている

「お前こそ、こんな朝っぱらから、暢気だな、何やっているんだ」

人の家に来て言う事がそれだろうか

「俺はやることがあるんだよ」

へえ

そんな事を言っているが、全く気に留めるようなそぶりもない

「それにしても、この部屋も狭くなったな

キャッシュキャッシャも、今朝は、段ボールを抱えて、でていっちまったし

お前生きていけるのか」

大きなお世話だ

私は、この部屋遺骸をもう一度、見ておく必要性がある

そう思ったが

振り返った

「おい、お前今何て言ったハンプイ・ボーイ」

私の名前を、呼ぶんじゃない

目をとがらせて、今飲んでいるビンを投げつけかねない勢いで

こちらに、威勢よく叫ぶ

「いや、悪かったハンプイ

ただ、今言った言葉をもう一度正確に言ってくれ

キャッシュが、何をもっていったと言ったんだ」

相手は、手に持っていたホットドッグを、飲み込んで

こちらに、忌々し気に言い放つ

「段ボールだよボーイ

お前の家から今朝 バーナーイ通りに、引っ越して言ったじゃないか

そんなことも、忘れちまったのかボーイ

お前も馬鹿なのか

大馬鹿野郎

ボーイ」

私は、ゆっくりと車輪が動いた気がした

とりあえず電話だ

「有難う、場所代は、付けておくよ」

後ろの方で

「無料だ無料」という声が聞こえたが

私は、携帯を取り出して引き返す

妹の携帯の電話でさえ

知らなかったのである

「ハンプイ電話番号を教えてくれ」

私の番号を聞こうなんて

この前も、聞きたくないと言っていたじゃないか

有料だよ

という事を、横に置き

私は、電話を聞き出すと、直ぐに電話をかける

しかし、私と同じ血が流れているせいだろうか

大の機械嫌いの彼奴に、電話がつながることはなく

仕方なく、飲んだくれのお馬鹿野郎を、大バカ女を残して

私は表に走ると

自転車に乗り出した

車のガソリンは、奴の病院に行ったせいで、底を付きそうである

自転車は、軽快に、振動し

空気不足の悲鳴を上げていた

急がなければ

肌寒い風を上げながら

私は、ペダルを踏み込んでいるい

北風で冷やされた空っ風に、吹かれる事、三十分ほど

私のいた、酷くさびれた地区よりも、幾らかは、人間的発展の見られる区域に入って居た

コートの中では、多少この寒さとは対照的に、汗ばみ始めており

息が切れ始めた時分に、私は、自転車のハンドルを、切って、一件のアパートの横に止めることにした

「ここだよな」

地図を見ながら、電柱の番地を交互に確認する

今日は、休日だと言う事を考えるに

奴は、朝っぱらから眠りについていることであろう

時間はもう昼過ぎだ

まだ起きていないことだろう

階段を上り

扉の一つの前に立つと、チャイムを鳴らし続けるが

チャイムが壊れているのか

それとも、珍しく、休日なのに、外出しているのであろうか

相手の言葉は、こちらには伝わらないで居た

私は、試しに、ノックに切り替えたが、扉は開くことはない

自分の住んでいた場所とは違い

私のような存在は一発で通報されかねないような物に思われて仕方がない

「おい、居ないのか」

ここまでいっても開かないのであれば、仕方がない

鍵をどうせ無くすと言って、渡された、合鍵を手に、私は、部屋の鍵を開けることにした

鍵穴を回して、ドアノブに手を取った

開くと、相変わらず、何もない部屋が、そこには広がり

何やら、血走った目が、こちらに向けられていた

起きていた

そしてそこに居やがった

私は、ぼんやりと、その存在について

意味を見出そうとしたが

理解が追い付かなかった

そいつの目の前の木の小さなテーブルには、無機物的な

黒い爆弾が、赤いライトを、時間表示として照らし続けいる

「おにい大変だ、貰った時限爆弾が、動いている」

何処から突っ込めばいいのだろうか

時限爆弾だとわかる程度には、頭が良いのだろう

そして、それが、動いていて、本物だともわかってしまう程度には、現実味があるのであろう

しかし、其れであれば、どうして部屋で一人こもって爆弾を、眺めているのであろう

私には、理解できない、意味が分からない

何をどうしたいのであろうか

「どうした」

そう聞いたが、妹は、首をひねる

「危機には立ち向かわなければならない」

私は、頭を、抱えた

一体何と戦うのだろうか

この先、時限爆弾犯と、戦う事があるのであろうか

「大丈夫だ、お前は十分頑張った

後は俺が」

しかし、恐るべきことに、その黒い箱をつかんで、首を振った

「一度逃げたら同じことの繰り返し」

生真面目だろうか

こいつは、虫歯でも自分で治療しないと気が済まないとでも言うのだろうか

「いや、お前は十分頑張った

見てみろ、もう時計は一時間を切って居る

後は、俺が、引き取るから、お前は休日の睡眠でもとればいい

目が充血して、疲れているのが、一目でわかるぞ」

私はそう言って、黒い箱を、受け取ろうとしたが

それをまるで幼い頃より握りしめていた、ぬいぐるみかのように、それは離さずに、胸に抱いた

馬鹿なのだろうか

「私が解決する」

一体何をもって、そんな事をするのだろうか

「お前は、何をもって、解決だというのか

保管していただけでも、解決だぞ」

そっそんなことは

そんな顔をするが

しかし、よくよく考えてみると、分からないのは、解決の終了地点であったのだろうか

「じゃあ、良い」

と、あっさりと、それを投げて、寄こした

興味はこんなにも簡単に薄れるのだろうか

「ああ、ありがとう」

私は、それを受け取って、帰ろうとする肩に、声がかけられた

「保管料十万円」

俺を破産させようと言うのだろうか

無言で、部屋を疾走するように走り去ると

上の方で、窓の開く音がする

次の瞬間

何かが壊れる音が、壁際にあった

私が、目にしたのは、ボーリングのたまに、ハンドルが、ペシャンコに壊れた自転車の姿であった

私が上を見ると、窓が閉められる音がする

何たる報復活動であろうか

これでチャラになったのだろうか、それとも、まだ、継続しているとでも言うのだろうか

もしかすると、爆弾を撤収すること自体が大きな間違いだったのではなかろうか

私は、悩みながらも、歩くことにした

この爆弾を、届けなければ、私の仕事が、解決することはない

完結をもって、全ては答えとなる

それが答えかどうかなんて、いうのは、私の仕事ではない

考えなど休むに似たり

私の足は、灰色に重く

黒い靴は、爆弾よりも、痛々しく地面を蹴り飛ばして前へと歩いて行く

本当にそれは、前進と言えるのであろうか

進歩という名の実質後退なのかもしれない





「失礼しますボス」

重々しい樫の木の飴色のドアを開けると

そこには、黒いスーツを着た太い男がいた

いつもは、白い服で、焼き料理何かをしているが、今日のそれからは、何処にもその姿を見ることはできない

「早くしろ」

重々しい空気が部屋に響き渡る

「はい」

私は、直ぐに厨房に行くと

真ん中のくり抜かれた丸いケーキ生地が、何枚も置かれている

それは全部で十段階

スポンジが沈まないように、それはかなり硬い物となって居る

「これですべて終わる」

私は、その一番下に、その黒い箱を置くと、次々に、慎重に、段を重ねていく

全てが乗せ終わると、冷蔵庫から、生クリームのボールを取り出して

奇麗に、それを整えていく

全ては最高級だ

しかし、一つ間違えばすべては台無しだ

三時間近くかけて、私はそれを、完成させると

泥のように眠る

それはそのうち搬送されて

式典に、運び込まれる

私は一人、布団の中

この後のことを考える

極度に硬く作られたスポンジは、普通に食べれば、何一つおいしくなどはない

しかし、極度の圧力をかけることにより

それは一瞬で、極上の柔らかさに変化する

ケーキポン

その爆発は、体積を、爆発的に、巨大化させ

そのはでやかさは、パーティーなどで、もちいられる

おいしいかではない

面白いのだ

しかし、その技術は、非常にめんどくさい

花火師になるか

爆弾ケーキを作るか

そんな事を言われる程度に

私は、ゆっくりとまどろみの中に、足を入れようとしたとき

遠くの方で、私を起こす音がする

無事成功したのかは分からない

ケーキの圧縮と、爆発の大きさは、ぴったりでなければいけない

そのバランスを考えるために、家に持ち込んだのが間違いであった

しかし

私の脳内に、膨らんだケーキは、偽物であるが、きっと、正しい膨らみ方をするのではなかろうか


「おい、起きろ」

電話からは、留守電が、垂れ流される

私はぼんやりと部屋で目を開けていた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ggg イタチ @zzed9

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る