第23話 自業自得

 その日、いや数日前か、妙な小僧達や女達が迷い込んできた。

 だから気はつけていたんだ。


 だけどそいつらは、物が違った。

 死角からの弓も手で捕まえ、魔法と一種に投げ返してくる。


 そして木の上にいりゃ、木ごと切りやがる。

 とんでもない奴らだ。



「この川の上流から、はぅ…… 奥に入った…… ところでしゅ」

「分かった。酔ったのか?」

「大丈夫…… でしゅ。もっとっっ、激しくても大丈夫……」


「まあ、舌を噛まないようにな」

「はぅ」

 橋から駆け下り、河原の石の上を飛んで行く。

 

 少し走ると、キャンプの跡がある。

「此処だな」

「はひっ」

「此処で待っているか?」

「いやです」

 そう言った、マルタの体は震えていた。

 思い出したのか、それはそうだろうなぁ。

「じゃあ行くぞ」


 背後からの攻撃も警戒。

 探査を行いながら、走っていく。


 ふわああぁ、岩の上ぴょんぴょんは駄目。

 背中で、幾度めか分からないけれど、達してしまった。

 それも、結構深く。

 しあわせ。

 本当に種を頂いたら、どんな事になるんだろう……

 マルタは意外と図太かった。



 途中で、警戒用の鳴子を発見。

 一応危機管理はする連中のようだ。


 そしてあの木の上に一人。

 さっき河原で拾った石を投げる。

 なるべく音は立てないように……


「うわあああぁぁ。びっくりしたあ」

 馬鹿だ馬鹿がいる。

 せっかく静にと思ったのに、木の上からオッサンが一人降ってきたくらいで大声を出しやがった。今度からおバカの武神と呼んでやる。


「バカ大声を出すから来たぞ。それに木の上。矢がきた」

 流石に見えていれば、つかめるようだ。


 だが、紐を取り回し、樹上でうろうろされるのも鬱陶しい。

 中継の木はこれだな。

 ターザンごっこをやっている、オッサンの着地する木をぶった切る。

 今宵の、エクスカリバーはよく切れる。


 どこで聞いたのか、八重が私をエクスカリバーで貫いてぇなんて言うから、覚えてしまった。

 どっちかというと、研ぎ澄まされた斬鉄とか虎徹とかが良いよな。

 丁度反っているし。


 中継の木が無くなって飛べなくなったから矢が来た。

 炎をくっ付けて返してあげよう。

 さあ踊るがいい。


 ところで、ブンブンしているが、マルタは背中にくくりつけておかないで大丈夫かな?


 えええええっ、なんだすかこの動きぃ。

 目が追いつかない、景色が溶けて流れる。


 気持ちが良いとか言っていられない、しがみつかないとちぎれて飛んで行きそう。

 首が、横に……

 ああっ反対へ……


 ああっ……

 ああっ……

 息がぁ……

 あっ、お尻を支えていた指が、ズレて指が刺さった。気持ちが良い。

 ああ、抜かないで……


 その日、マルタは非常に高度なプレイを覚えた。

 それは人としての限界。

 その先に本物はあるぅ……

 気を失って、すっ飛んでいく。

 なんだかすごく深く達してしまい、力が抜けた。

 全身がふるふるしながら、飛んで行った。

 下半身から、何かを吹きながら。


 まあ落ちる前に、悠人が気が付きキャッチ。

 だがお漏らしでもしたのか、どべどべだった。

「やっぱり怖かったのか」

 浄化をして、どうするか考える。


 腹側の方が、動きが少ないか?

 今度は抱っこして、お尻の方から掬うように幅広の布で結ぶ。

 完全に抱っこひも。

 ただ気を失っているから、首がかくんかくんで、折れそうだ。

 警戒をしながら、動きをゆっくりにする。

 やっぱり置いてくるんだったと、今更後悔をする。


 左手はやはりマルタの尻を支える。


 右手で術を放ち、剣を振るう。


 その中で、ひとまとめにうち捨てられた死体の中に見覚えのある顔。

 そっと火を放つ、それは、すべてを燃やすまで消えない地獄の炎。

 獄炎。


 盗賊達はその後、全員息の根を止められた。

 捨てられた遺体の中に、彼らがいなければ、数人は生かされて犯罪奴隷という手もあったが許されなかったようだ。


「その鎌どっから来たんだ?」

「鎌?」

 その瞬間には戻す。


「あれ? さっき確かにあれ?」

「殺しすぎて疲れたのか?」

「そうかもな…… みたか?」

「ああ、燃やした」

「そうか……」

 それだけで、武神とは話が通じた。


 武神の目が、俺の左側。

 小脇に抱えたマルタに止まる。

「それ大丈夫か?」

「痙攣をしてるという事は、生きているんだろ」

「ひでえな、それって指刺さってないか?」

「持つのに丁度いいからつい……」

「まあ、開発済みだろうし…… あの変態」

「ああ」

 そう言ったのは、さっきの中に、松井もいたから。


 俺達は無言で帰る。

 結局助けることはできなかった。


 まあ俺としては楽なんだが、なんかモヤモヤとする。

 この気持ちはなんだろうか、こちらに来てこいつらと会話することも増えて、なんとなく楽しいんだよな。


 本業としては間違いなくマイナス。

 だが、霧霞 悠人きりがすみ ゆうととしては、子供の頃友達に怪我をさせて、距離を取っていたときよりも、今の方が楽しい。


 ここじゃあ、向こうにいたときと違い、引かれないし、暴力がデフォルトだし。


 八重じゃないが、もう少しこっちで暮らしたい気持ちが芽生えた。


 そうそれは、良いことなのか悪いことなのか……

 この時の俺は、分からなかった。

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