ケイオスリビルド

「ガイアあいつは?」


(剣脚鳥なんだよ!確か正式名所はエペバード!)


「…ちなみにゴブリンと比べるとどのくらい強い感じ?」


(比較対象は小さすぎてわかんないんだよ)


つまりそれだけ強いってことね!くそが!どうする逃げるか?


「シュルル…」キラキラ


おい、お前さん魔物だろう!そんな目で見てくるな!


「たく!ほら、こっちこい!」


俺は見ず知らずの魔物を手に取ると、そのまま肩へ。さすがに落ちたら知らんからな!


(アル!エペバードが来るんだよ!)


「コッケー!」


視線がずれた瞬間を狙って自慢の健脚と鉤爪による一撃が迫ってきていた。というか、これ躱すの?それなんてムリゲー?…


「って!そんなことを言っとる場合かー!」


後先なんて気しない我武者羅な回避。正直躱してるのか、転んでいるのかわからない回避行動に、体のあっちこっちが痛い!しかし、とりあえず五体が残っているのでこれは回避成功である。まあ!


「コッケケ!」


相手側は無傷なので、何度でも同じことをしてくるんだけどな!クソが!


再び大地を蹴って、迫ってくるエペバード。対して俺は大きめに横に飛んで軌道上から外れる。お前の退化した翼じゃ空中での方向変換なんてムリだろからな!


「そんでもって、こうだ!」


勢いそのまま、俺の横を通り過ぎていくエペバードを追いかけるよう俺は自身体を捻り、回し蹴りを放つ。いわゆる着地狩りだ!


「かったいなもう!」


俺の放った回し蹴りは、がら空きの背中を捕えた。しかし、羽の表面は鎧のように硬かく、それでいて、内側の羽毛はしっかり衝撃を吸収してくるので本当にどうしようもない。


これは今の俺の技術では倒すのは無理だぞ。


(アル?力かすんだよ?)


確かにそれで俺らは助かるだろうな。だけど、ガイアさん?このちび助の巻き込まずにいける?


「シュルル…」


(…ムリかも♪)


だろうね!さて、いよいよ手がなくなってきたぞ!


攻防が続いていく。いや攻撃を当ててるのは一方的にこっちなんだよ。ただ、それが効いてるかと言うと、全くそんなことはない。むしろ殴ってるこっちの手足が壊れそうです。


「コケ!コケ!」


しかもこのチキン野郎、鳥頭の癖にちゃんと学習をしてやがる。初めの一撃必殺スタイルを続けてくれれば楽なのに、俺に技が当たらないとわかるとスピード重視の連撃スタイルに移行。お陰で俺の体力と精神がごりごりと削られている。まじで勘弁して…


「あ…」


躱した先にあった木の根に足が持てかれる。これは冗談抜きでまずい!しかし、無常かな、チキン野郎の健脚は既に眼前に迫ってきている。せめて顔だけは守らなければと俺は腕で顔を庇った。


「シュル!」


しかし、腕に衝撃はない。代わりに顔の近くを通りすぎる冷気。見ればその健脚は打ち出された氷によって弾かれていた。ガイアはこんな器用なことはできない。となれば…


「ちび助!お前そんなことできたのか!」


(君!無理しちゃダメなんだよ!)


喜ぶ俺に対して、慌てるガイア。そういえば、バランスをとるために巻き付いてた力が弱くなっている気がする。


「ちび助!」


「シュル…」


答える声に覇気がない。それだけで既に時間がないことがわかる。どうして、なんて聞けない。だって答えは俺が弱いからだってわかってるから…


(違うんだよ!私が力を使いこなせないからなんだよ…)


お互いを守るために自身を貶める俺たち。しかし、空気を読まないクソ鳥はそれを楽しそうに見てやがる…許せね!


((一番悪いお前が!笑ってるんじゃないんだよ!))


俺とガイアの気持ちがシンクロする。同時に、全身に力がみなぎる。


…ってあれ?これ魔力じゃないですか?しかも、ギルドで感じたものとも違う気がする。となるとこの魔力の根源は…ガイアさん!?


(ごめんなんだよ!でもなぜか止まらないだよ!」


途中でガイアの声が現実に響く。あふれる魔力は収まることを知らず、輝きとなって世界を照らしていく。


脳内にとあるワードが思い浮かぶ。それを俺たちは、自然と口にしていた。


「「【神装:混沌変換の紡ぎ手ケイオスリビルド】」」


それをトリガーに光は俺の手に集まり、白黒のグローブへと変わる。正直、俺には何が起きているかなんて1ミリも理解できていない。ただ、この武器の使い方だけは、なぜかハッキリとわかった。


「『混沌変換クリエイト』」


ガイアの魔力を手繰り、手の中に1丁の拳銃を生成する。俺はその銃口をくそ鳥へと向ける。


「『光子変換リロード』」


内部に込めた混沌ケイオス光子エネルギーへ。それに合わせて白く染まる銃身。


「消えろ『閃光一掃フルバースト!』」


全てを薙ぎ払う断罪の一撃を宣言し、俺はトリガーを引く。瞬間、周囲は閃光に支配されるのだった。

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