第35話 黒幕との対決
「どっちから回るんだ、ルイ?」
「まずは工場跡の方が近いからそっちからだな」
仕事をよく回してくれるフィクサーのトニー竹山から急ぎの仕事で受けたウエストランドの農場の問題解決のために、ルイ達は農場主の不和から聞いた異変があった場所を確認しに行く。
「リコリス、そっちはどうだ?」
「んもー大変だよ~! 場所的に部品とかの確保が難しいなはわかるけど、下手したら爆発してたよ」
缶ビールを飲みながらアステリオスは農場に残ったリコリスに通信する。
「ここも昔は人が住んでたんだな」
「ダンジョンが発生して疎開してそのまま放棄された場所の一つだな」
リコリスと通信で雑談しながらルイ達は工場跡地にたどり着く。
その工場跡は町中にある町工場のようなもので、住宅街の廃墟の中にかろうじて壁や天井が残っている。
「こいつらは………ギャングか?」
「戦闘があったようだな。」
工場跡地内には十人前後のギャングの死体があった。
全員武器を持って何かと戦っていたようだが、相手側の死骸は見当たらない。
「使っていたのは一般的な鉛弾だな」
「大半の死体は干からびているが、こいつは干からびていない………首元に穴二つ? 吸血鬼か? リコリス、そっちからハッキング出来るか?」
アステリオスはナイフで壁に埋まった銃弾を掘り出し、弾頭の素材を確認する。
ルイはギャング達の死体状況から襲撃者の正体を推理する。
唯一血を吸われなかった死体はサイバーアイをインストールしていたので、運が良ければ記録映像が残っている可能性があり、リコリスを通信で呼ぶ。
「ほーい、ドローンのコードを接続してくれる? でもなんでこいつだけ血を吸われなかったの?」
「吸血鬼にとってサイバーパーツをインストールしてる奴の血は不味いらしい」
ルイは同行している飛行型偵察ドローンからコードを伸ばして死体のソケットに接続する。
「うい、ハッキング完了! 映像ながすね~」
「どうやらこいつらと吸血鬼は手を組んでいたようだな」
映像ではギャング達が黒幕の吸血鬼と手を組んで何処かの
吸血鬼は血を、ギャング達は金品や食料を求めて手を組んでいた。
「こいつらが農場を襲っていたのか」
「わざわざ野生動物が集まりやすいように餌さとかばらまいて、その餌に釣られた動物を吸血鬼が魔法で操ってたのか」
遠くから不和の農場を偵察する様子や、残飯などを撒き散らして野生動物や低レベルのモンスターを農場におびき寄せ、吸血鬼がそれを魔法で綾っている映像が流れる。
「ルーイー、そいつ賞金首だよ~」
一緒に映像を見ていたリコリスが吸血鬼やギャング達の顔写真で検索していたのか、吸血鬼の方はエクスプローラーギルドから一万五千ネオエンの賞金がかけられていた。
「あーあ、裏切られてやんの」
アステリオスが鼻で笑うように、映像では吸血鬼が戦力を整え終えて、お前達は用済みだとギャング達を襲うシーンが流れており、一人一人殺されて行き、最後にサイバーアイをインストールしたギャングが殺されて映像は終わる。
「取りあえず連絡がつかなくなった
ルイ達は工場跡地を出て、不和から連絡が途絶えた
「やられてるな………」
連絡が途絶えた
「ここはこれ以上調べるものはないな」
「さっさと農場に戻って迎撃準備をするか」
ルイとアステリオスは農場に戻る。
「吸血鬼だって!? 銀や白樺の杭とかないぞ!」
帰還したルイ達の報告を聞いた不和は黒幕が吸血鬼と聞いて驚く。
「そいつは俺に任せてくれ」
「ルイは魔法使いだ。オカルトにはオカルトだ」
「よろしく頼む」
アステリオスがルイの肩を叩きながら魔法使いであることをアピールすると、不和はすがるように頭を下げる。
「リコリス、農場の状況は?」
「取りあえずメディカルマシーンは修理したからある程度怪我人は治療できたし、発電機もバッチリ! 迎撃装置を優先して修理する~?」
リコリスに農場の修理状況を聞くと、リコリスは壊れたメディカルマシーンや発電機の修理を終えていた。
「不破さん、紫外線を照射する物はないか?」
「さすがにそんなものはないぞ」
「幾つかの照射灯を改良しようか? そうすると迎撃装置直せないけど」
「照射灯を優先してくれ。吸血鬼は紫外線が弱点で、紫外線を浴びると弱体化する。迎撃はアステリオスのタレットで補う」
「御意~!」
ルイはテキパキと指示を出して、吸血鬼の迎撃準備を整えて夜を迎える。
太陽が地に沈み、暗闇が徐々にウエストランドを覆い始める。
農場ではモンスター達の襲撃に備えて武装した住民達が緊張した面持ちで巡回している。
「モンスターだ! モンスターの大群だ!!」
見張り用の櫓から住民が叫び、警報を鳴らす。
「来たか………」
ルイは櫓に登り、モンスターの大群を確認すると、懐から小箱を取り出す。
蓋をあけると中には喘息の人が吸入する容器があり、ルイはそれを吸入する。
ルイが吸入したのは吸引式のコンバットドラッグで、一時的に魔法の威力を強化する。
賞金首の吸血鬼を相手にするので、ルイは奥の手を使う。
「モンスター達が第一防衛ラインに来ました」
「タレットとトラップ起動するよ~!」
住民が叫ぶと、リコリスは
遠くからはタレットの連続発射音やクレイモアなどの爆発音が響く。
「んじゃ、景気よく花火打ち上げるか!」
アステリオスは運んできたミサイルランチャーを軽々と肩に担いで、ミサイルを発射する。
「たーまやー!」
「かーぎやーってか!」
タレットにトラップ、アステリオスのミサイルに、狙撃が得意な住人たちが農場に近づこうとするモンスター達を倒していく。
だが、吸血鬼に操られてるモンスター達は仲間がやられようが、自分の手足が吹っ飛ぼうが意に介した様子もなく、農場に向かって突撃してくる。
「
ルイが十字架を片手で握って魔法を唱えると、一心不乱に農場に突撃していたモンスター達の動きが止まり、戸惑っている様子が見受けられる。
ルイの魔法によってモンスター達を操っていた魔法が解除されたようだ。
「
ルイが再度十字架を握って魔法を唱える。
その瞬間目の回りの毛細血管が切れたのか、ルイの片目から血が流れ落ちる。
ドラッグでブースとされた魔法を連続で使用したことでルイの体に負担が発生したからだ。
モンスター達はルイの魔法の影響下に入ると、悲鳴のような鳴き声をあげて農場から逃げていく。
「やっ、やった!」
「モンスターが逃げていくぞ!!」
モンスター達が逃げ去っていくのを見て住民達は喜び会う。
「まだだ………リコリス、紫外線の照射灯を」
「御意~!」
ルイは目から流れる血を袖で拭ってリコリスに指示をだす。
リコリスが
「グアアアァァーッ!!」
何もない空間を紫外線照射灯が照らすと、悲鳴が聞こえ、何もない空間から青白い肌の十八世紀のヨーロッパ貴族風な服装の男性が姿を表す。
「あれが吸血鬼だ! 紫外線を浴びせ続けろ!!」
「やっ、やめろおおぉ!!」
ルイが叫ぶと吸血鬼は苦しみ、少しでも紫外線から身を隠そうとマントで体を隠しながら、腕を振り回す。
すると、吸血鬼が振り回した腕から衝撃波が発生したのか、地面が抉れ粉塵を巻き上げて紫外線照射灯を次々と破壊する。
「ぜっ………脆弱な人間が小癪な真似をぉぉぉ!!」
体のあちこちが焼けただれて煙を吹き上げる吸血鬼が牙を剥き出しに叫び睨む。
「貴様らは苦しませて死なせてやる!
「
吸血鬼の口からヘドロのような液体が噴射され、飛沫が地面に付着するとジュワッと音を立てて地面が溶ける。
ルイが対抗するように十字架を握って魔法を唱えると、まるで向かい風にあおられたように、ヘドロのような液体が吸血鬼の元に戻っていく。
「グアアアァァーッ! わっ、わだ………私の魔法を返じだだどぉっ!?」
酸のヘドロを浴びた吸血鬼は喉をやられたのか
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