中二病を異世界に転移させてみた ～ＳＦ映画監督神谷の奮闘！～

【失敗か？成功か？】

「はぁはぁはぁ」(慎太郎)

「どうにか逃げてこれたな」(神谷)

「外までは追ってこないでしょう。本当にありがとうございました」（見知らぬエルフ）

「いや、勇者様達もがんばってくれたからね」(神谷)

「あの爆破の魔法はなんですか？」（見知らぬエルフ）

「あー、あれはね、エクスプロージョンだよ」（慎太郎）

　何で慎太郎が知ってるんだ。っていうかその設定は何？

「それより、妹さんは大丈夫か？」(神谷)

「はい。おかげさまで助かりました」（見知らぬエルフ）

「ありがとうございました。感謝してもしきれません」（ラルア）

「それなら前の場所に戻してくれよ」(神谷)

「はい。でも何かあればいつでも呼んでください。ボクはエルフのレーア。ではお元気で」（レーア）

　ってちょっと、おいっ！　まっ。

◇◇◇◇◇

　目の前がグラっとして気がつけば撮影エリアの敷地の入り口付近にいた。

「慎太郎っ！」(徳之進)

「あっ、おじいちゃん」(慎太郎)

　や、やべぇ。依頼元が来ちまったよ。

　白鳥女史も成瀬もクロノまでいる。終わったな。こりゃ失敗だぞ。

　成瀬とクロノが顔の前で手を合わせごめんと言う顔をしている。

　まあそりゃそうだな。主人公も責任者も行方不明になったのだから仕方ないか。みんなすまん！

「神谷くん。これはどういうことかね。行方不明になったというので今来たばかりなのだが」(徳之進)

「おじいちゃん。僕ら異世界に行ってたんだよ。今帰ってきたんだ」(慎太郎)

「そ、そうなんですよ。ようやく帰れました」(神谷)

　頼む、続いててくれ！　西園寺グループ総帥であるジイさんも一緒に慎太郎を誤魔化してくれ。頼む！

「？？？、そ、そうか。それは大変だったな。後で話を聞かせてくれ慎太郎」(徳之進)

「うん！　凄く楽しかったよ」(慎太郎)

「慎太郎君は本当に大活躍でしたよ。いや勇者様か」(神谷)

「そうだね！」（ミオナ）

「後で撮影したものをまとめてお持ちしますよ」(神谷)

「おじいちゃん、あの人は友達のおじさんで映画監督なんだってさ。向こうでも撮影してもらったから後でみせてもらおうよ」(慎太郎)

「そうだな。楽しかったか？」(徳之進)

「うん。凄く楽しかったよ」(慎太郎)

「そうか、そうか」(徳之進)

◇◇◇◇◇

　こうして、俺達のビッグサプライズ計画は文字通り（グダグダのまま）終了した。

　予定が変わってしまったのでその夜、慎太郎の衣装と聖剣を慎太郎から取り戻し、代わりに制服のポケットに作った金貨を１枚入れておいた。

　一応、話としては最後のスマホ撮影の部分を後で合成してエルフ役も別に立てて慎太郎が魔王をやっつけたことに改変した。

　俺のスマホで撮影した慎太郎に見せる用の映像も編集した。

　どちらも映像としてはなかなかのものだと思うぞ。

　よし、これで全員クランクアップだ。

　当初の予定からは大分ズレたが慎太郎のサプライズはバレずに成功し、完全とは言えない部分もあるがほぼ成功だろう。

　ほら見ろ、なっ、俺なら出来ただろう？

　まあ確かに菅生や破壊魔王は登場しなかったがストーリーは臨機応変に対処しなけりゃこんなのは無理なんだよ。

　みんなお疲れ様！

　行くぞせーの！

　　　「大成功！！」

　（いや、グダグダだろって）（成瀬）

　あはははは。

【後記】

　結局あれはなんだったのかわからなかった。

　クロノ辺りが助監督チーフの烏丸（チーフは普通にプロデューサー対策）と結託してプロデューサーの白鳥と相談してのダブルドッキリかと思ったがそうではないという事だった。

　ミオナとも詳しく話したが結論は出ず、俺の腕の白い掴まれたアザは一ヶ月程で消えた。

　後半のおかしな部分も追加撮影で聖剣のアップや他の映像と合成しほぼ撮れ高として完成した。

　そして全ての映像を編集して映画にまとめ西園寺に届けると、残りのかなり膨大な報酬が西園寺から全員に張り込まれた。

　慎太郎に積極性が生まれたと満足して貰い更に報酬も追加して貰った。

　まあ、無理したかいがあったと言うものだ。

　報酬もだが、仕事も俺らは全員プロフェッショナルとしてかなり満足出来た。

　しかし、全く金持ちの事は未だに良くはわからんがこれで暫くは俺も好きな映画が撮れそうだよ。

　ではまたな！