第11話 飛行空2
「お久しぶりです。大地林先輩」
空が雨雲忍と斬り合いを始めたので、必然的に残った海人と大地林が対峙する。
「先輩は白薔薇高校だったんですね?」
「お久しぶり。そだよー。白薔薇高校のレベル4」
ロリっ子のひょうきんな大地林は何もせず、海人と談笑する。
「戦わなくて良いのですか?」
「ボクは切り札だから。白薔薇高校に敗北はあってならない。まして実践の入試制度で1年生に敗北することは許されない。忍ちゃんが危なくなったとき、代わりにボクの真価が発揮される」
「なるほど。たしかに先輩が操作系の能力を使えば勝負は一瞬で終わります」
「それはそうと、君は飛行空さんの手伝いをしなくていいのー?」
海人はどう説明しようか迷い、正直に告げた。
「これは捨て試合です。斥候です。本命は3か月後の編入試験で本気を出します」
「なるほど。面白いことを考えるね」
二人が話している間、空と雨雲忍の斬り合う音がコロシアムで響く。
海人は試しにと、情報収集してみた。
「騎士制度の入学試験は白薔薇高校のレベル4のツートップが出る。ということは、4人組で編入試験を受けるときは、白薔薇高校のレベル4の最強の4人が出てくることで間違いはないですか?」
「君、頭良いね。基本、そうだよ。でも過去に騎士制度なんて面倒くさい試験を受けた人はほとんどいないのだけれもね」
「なぜ?」
「白薔薇高校は女子高にして最強。超人(レベル5)が所属して、優秀なレベル4もたくさんいる。超都市で3本の指に入る強豪校。みんな怖がって模擬線をやらないのだ」
「なるほど」
新入生はレベル1かレベル2がほとんど。進級してもレベル3に留まることが多い。そんな中、わざわざレベル4と試合をしようとは思わない。
「忠告しておく。3か月後の4人組でどんな試合をしようと、策士であるボクの策略からは絶対に逃れられない。『十人十色』は最強」
「それ、自分で言って恥ずかしくないですか?」
「うっさい。余計なお世話」
談笑がある程度進むと、空と雨雲忍の拮抗した斬り合いは、しかしながら、徐々に差が付き始めた。なんと空が優勢に戦っている。
「純粋な素の戦闘力では、飛行空ちゃんの方が上か?」
「大地林先輩。助けに行かなくていいんですか?」
「大丈夫」
と言って、大地林は雨雲忍の方へ大声を上げる。
「忍ちゃん。『暴風雨』を使って」
「かしこまっ」
劣勢に立たされていた雨雲忍が、一旦、バックステップして、空から距離を取る。
そして、傘を開く。
「私の能力は『暴風雨』。傘強化と傘操作と傘変化を同時に扱うデュアルスキルだ」
雨雲忍の持っている傘が強化されて、操作される。そして、雨傘から変化した大量の水が放出される。
圧縮された大量の水。空に直撃して、『武士道』で斬っても防ぎきれない攻撃。空が致命傷を負う。
海人が大地林に問う。
「傘から大量の雨水。まるで魔法ですね?」
「そうだね。雨雲忍の戦場は、まるで台風が通ったような悲惨な状況になる。付いたあだ名が『暴風雨』。忍ちゃんの剣は災害だよ」
コロシアムの会場で水浸しになる。大量の雨水を起こした本人、雨雲忍は傘を広げて優雅に空中を浮かぶ。
「飛行空さん。あなたの剣は確かに一流だった。でも超都市の能力者は剣だけがすべてではない。だから私は剣道を捨てた。より、最強になるために!」
そして、傘を閉じて雨雲忍は空中から猛襲する。タカが小動物を狩るごとく、傘の剣を空に向けて斬りつける。大量の雨水を受けた空は、よろよろ。避けることができない。なので海人は仕方なく『女性洗脳』を使った。
空を洗脳し、人形のように動かして、雨雲忍の渾身の一撃を躱した。
「何っ!?」
驚く雨雲忍。
斥候の密偵は終わった。3か月後の本命の編入試験を受けるため、白薔薇高校のレベル4の最強の4人組を調べればいい。また、今回、雨雲忍が傘強化、傘操作、傘変化のデュアルスキルであることが分かった。大量の雨水を放出して、空を浮かぶことができるのを知ったのは大きな収穫だった。
海人は審判の先生に告げる。
「僕たちの負けです」
そして、策士である大地林の方を向き、宣戦布告した。
「3か月後、僕たちは必ず勝ちます」
「君、すっごく面白いよ。やれるものなら、やってみな」
善戦すれば良い騎士制度の編入試験で、あろうことか「勝利」の2文字を宣言した海人だった。
後日。模擬試合で善戦した飛行空の入試は合格したが、海人は不合格になった。まあ、突っ立って大地林とお喋りしていただけの海人が当然、受かるはずもなく。空は合格を突っぱねた。合格通知を破り捨てて、今度は雨雲忍に勝つことを誓った。
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