令嬢達にからまれる
驚いたお父様から舞踏会に招待された詳細を問われていた。
「セイリーン、なぜアンダンティーノ殿下から直々に舞踏会に招かれることになった?」
「たまたま学園内でお会いしまして、お兄様の妹だから魔力に優れているだろうと関心を持たれたのです。舞踏会ではぜひ、魔法談議をしたいとおっしゃられまして」
「今のお前には、殿下との魔法談議は厳しいだろう。かと言って、出席せねばならないだろうしな......」
お父様が頭を悩ませていると、お兄様がある提案をする。
「父上、魔法の勉強はさらに強化して進めるとして、当日の舞踏会には私が付き添いましょうか?何か聞かれればオレがセイリーンをフォローします」
「学生を対象とした舞踏パーティーなのだろう?お前がついていくのはおかしなことだ」
「お兄様がいたら心強いですけれど、付き添うのは難しいかと......お兄様までは招待されていませんし」
よくよく魔法については勉強を進めるとして、とりあえずはダンスの特訓に集中することになった。ダンス未経験者なのに王子様とダンスを踊ると思うと気が遠くなってくる。
夕食後、お兄様にさっそくいつもの魔法講習に加えて、魔法知識の解説も詳しくレクチャーしてもらう。もう頭がパンパンだ。ダンスは明日以降に始められることとなった。
翌日、学園に行くとなぜか昨日の第一王子とのやりとりが知れ渡っているようで、挨拶と共にいろいろな生徒から話しかけられた。
「おはようセイリーン様、アンダンティーノ殿下から直々に舞踏会招待されたというのは本当なんですの?うらやましいですわ~!」
万事こんな感じで、教師達からも視線を向けられている。教師も注目する舞踏会に私が招待されているなんて本当に大変なことになってしまった。
レントやアンスも驚いていて、挨拶よりも先に舞踏会の話を振られた。
「お前、舞踏会に誘われたんだろ?2年生メインなのに、1年のお前が呼ばれるなんて将来が明るいじゃん!」
「セイリーン!あの麗しきアンダンティーノ殿下からお誘いいただけるなんて!これはチャンスよ!」
「魔法にご興味があるようなの。今の私は魔法知識が足りないわけでしょ?マズイに決まってるじゃない」
「だけど、やるしかねーだろ。お前、魔法のテストでいつもトップだったし、どうにかなるんじゃね?」
「そんな他人事だと思って簡単に言わないでよ」
「セイリーン、魔法もだけどダンスもしっかりと練習しておかないとね!セイリーンならできるって!」
「ダンスなんてできない、絶望真っ最中よ!」
抗議するも、二人ともなかなか楽天的な発言ばかりだ。信頼してくれているのかもしれないけれど......。盛り上がる二人をよそにレストルームに向かい一息つくことにした。鏡の前で身だしなみを整えていると、鏡に数人の令嬢の姿が映る。3人の令嬢が私を取り囲んでいた。
「セイリーンってアナタよね?」
「はい、そうです」
「ちょっとアナタ、アンダンティーノ殿下から直接のお誘いを頂いたそうじゃないの。ちょっと魔法が得意だからって1年生のくせに目立とうなんてどういうつもりなのかしら?」
「そうよ、せっかく2年生をメインに舞踏会を開いてくださっているのに、魔力が多いからって特別扱いされるのなんてオカシイじゃない。色目使ったんじゃないの?」
「アナタがまわりを察して舞踏会の参加をお断りするべきなのよ!なに真に受けちゃってるのよ!常識がないわね!」
目が合うなり攻撃的な言葉を吐いてくる令嬢達のリボンのカラーは2年生を示している。
(2年生がメインのパーティーだし、私が呼ばれたらこざかしく思うよなぁ......)
王子達を狙う令嬢はたくさんいるのだ。私が呼ばれたことでいらぬ争いが起きている。辟易していると、レストルームで起きているモメ事に気づいた生徒達が集まって来た。だが、相手が上級生であることに気づくと、私に助太刀してくれる生徒もいなそうだ。
(仕方ない。面倒は起こしたくないけれど、ここはきちんと反論しておくか)
「目立とうとはしていません。2年生メインの舞踏会に私が出席するのは私としてもどうかと思いますが、こちらからは断るのは無礼にあたりますので出席はします」
「だから、アナタがどうにかして断るべきでしょ!」
どうやら話が通じないタイプの人のようだ。まわりに集まってきた人が増えると上級生の令嬢達も人目を気にしたのか、私に後をついてくるように言ってきた。行きたくはないけれどもとりあえず、レストルームから出る。
レストルームから出ると、イチャモンをつけてきた令嬢達が私を囲みそのまま学園の中庭へと私を連れて行く。
言いたいことを吐き出させれば、ひとまずは落ち着いてくれるだろうか。まわりの生徒は下手に関わりたくない様子で日和見を決め込んでいる。
(せめて誰か先生に報告に行ってくれればいいのに......)
やや諦めながら学園内の中庭に向かう外廊下を歩いていると、突然、私を取り囲んでいた令嬢達の足が止まった。
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