イケメン王子達が現れる
お兄様の特訓の成果もあって学園の授業は、おおむね順調に過ごせるようになってきたある日、この国の第一王子と第二王子が隣国の視察旅行から帰還して学園に登園して来るとの話で学園はもちきりとなっていた。
「セイリーン!今日は第一王子のアンダンティーノ様と第二王子のプレスト様が登園されているそうよ。お姿を拝見することができるかしら!」
レントのテンションが朝から高いと思ったら、女子生徒の憧れの的であるという見目麗しい王子達のファンらしい。
「それほどまでにカッコイイ方々なの?」
「それはもう!さすがは王子様って感じの方々よ~!」
「あらそうなの。それはさすがに拝見してみたくなるわね」
興奮しまくるレントにちょっと引きながら教室に向かう。アントはサッカー部の朝練があるらしい。サッカーなんてこちらの世界にもあるんだなあと思っていたら、王子達もサッカー部に所属されていて朝練に参加されているらしい。爽やかキャラの王子達なのかしら。
どうもこの世界は色々と元の現実世界と同じ世界観で、身分制度や魔法が無ければ、ほぼ変わらないといってもいいかもしれない。今のところヒロインとなるキャラクターも見当たらないし、物語の世界なのかゲームの世界なのかは分からないが、このまま平穏に過ぎて元の世界に戻るための方法が分かれば問題無い。
教室に着き、レントと王子の話などしていると、しばらく経ってアントが朝練から戻ってきた。
「よう!あー、ノド乾いた!レントお茶くれ!」
「お茶足りなかったの?はい、予備持ってきて良かったわ」
「助かったぜ!さすがオレの婚約者」
「もういいからそういうの。ところで、アンダンティーノ殿下とプレスト殿下も朝練に参加されたのでしょう?どうだった?」
「どうって、いつも通り見事な足さばきだったけど?」
「帰国されてすぐなのに朝からサッカーで汗を流されるなんて殿下達、爽やか過ぎるわ!」
「あー、またレントの王子推しが始まったよ。オレじゃないわけ?」
「それとこれは別!」
2人を見ているともう何年も付き合っているベテランカップルみたい。飲み物の用意もしてあげているレントったらほぼ奥さんみたいだし。でも、羨ましい。
午前の授業が終わり食堂に向かうと、食堂が何やら騒がしい。女子生徒の黄色い声が聞こえてくるではないか。声の中心を見てみると、手を振る王子らしき人物達が確認できた。
レントに聞くと、金髪でブルーの目を持つ柔和な印象の王子が第一王子のアンダンティーノ殿下、シルバーにブルーの目を持つクールな雰囲気の王子が第二王子のプレスト殿下らしい。セイリーンたちが在籍している1年生ではなく2年生だそうで、学力と運動共にトップクラスだそうだ。
(確かにイケメンね。二人とも全然雰囲気が違うタイプ......)
王族はセキュリティ面から一般の食堂ではなく、王族専用の個室で食事をとるそうだ。王子たちが専用の部屋に向かうと食堂の雰囲気も落ち着いた。
食事が済むと、午後の授業に向けて一人で学園の図書室に向かう。レントたちが2人になる時間を作ってあげようと遠慮したのもあるが、魔法について深く調べなくてはならないのでまあ一石二鳥だ。
学園の広大な図書室に入ると昼休みである割に、意外と人が少ない。調べものには丁度いいと思いながら魔法のコーナーに向かうと、目当ての魔法の本を探し始めた。
("召喚魔法”って禁忌に触れるって言ってたけど、少しでもヒントになる本が無いかしら。この前ここに来た時はレントもいたから確認できなかったけど......)
数冊、関連しそうな方を見繕って席に着くと、召喚や転移に関係ありそうな内容の項目を調べていく。
(召喚や転移そのものについて書いてあることは少ないな......)
「お前、なぜ禁止魔法について調べている?」
突然、背中から低く静かな声がしてビックリした。振り返ると、先ほど見たばかりの第二王子が立っているではないか。
ニコリともしない表情で言われているので、これはマズイ状況だと焦る。開いているページは思い切り召喚や転移などの関連した魔法の項目だし、言い訳のしようがないではないか。
「お前は確かフォルテ家のスワロウの妹だな」
「......はい。セイリーンと申します」
「かなりの魔力持ちだと聞いているが、なぜ禁止魔法に興味を持つ?」
「......実は、魔法実験中に倒れてから記憶を無くしておりまして、さまざまな範囲の魔法について学び直していたのです」
「記憶を無くした?何の魔法実験をしていた?禁止魔法と関わりあることか?」
「いえ、まさか!根詰めて取り組んでいたようなので、魔力切れか何かを起こしたのではないかと言われていまして」
第二王子は眉間にシワを寄せたまま疑わしいまなざしで私を見つめていたが、私から大した情報が得られないと分かると尋問から解放してくれた。
「疑わしい行動は控えるんだな。次は無い」
「申し訳ございませんでした」
「行け......オレと話したことは誰にも話すな」
「はい」
お辞儀をして急いでその場から立ち去る。焦り過ぎて西洋式礼のカーテシーではなく、日本式のお辞儀をしてしまった。長年の習慣はそう簡単に変えられない。
それにしても、第二王子から目をつけられてしまったのは非常にマズかったのではないか。学園の図書室でもっと魔法について調べたかったのに、もう図書室での調べものはできそうにない。
こうなったら思い切ってスワロウお兄様に事情を話して協力してもらおうかなと、いう考えが浮かぶ。でも、とても信じてもらえる気がしない。優しいお兄様から頭がオカシイ認定されたら悲しい。
どうしようかと考え込みながら歩いていると、廊下の曲がり角で人にぶつかって転んでしまった。
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