世界感が変わった現実を、どのように生きるのか?

松竹庵白風

第1話 プロローグ

夏祭りが終わった次の日の早朝。


母親に起こされ、家の近くの神社の階段を登っていた。


これから町内会で神社の清掃。夜店のゴミ拾いだ。


うちの家族は、両親と姉と俺の4人家族で、夏休みなのは俺だけ。


だから、うちの家の代表で町内会に出席するためだ。


階段を登って境内へ。


まだ、誰もいない。


誰もいない境内は、いつものように寂しい。


夜店も、昨日のうちに撤去されていた。


ポケットから5円を賽銭箱に入れ、鈴を鳴らして2礼2拍1礼する。


「祓え給い、清め給え、神(かむ)ながら守り給い、幸(さきわ)え給え。」


これが正式な参拝方法だと神主さんから聞いていたので、子どもの頃から、そうしている。


お参りを済ませて時計を見るが、5:40。


6時からだと聞いていたので少し早かったかもしれない。


久しぶりに社(やしろ)を一周することにした。


子どもの頃から見慣れている拝殿・本殿の彫刻などを見ながら歩いた。


ちょうど本殿の真裏に、おばあさんが店を出していた。


昨日はなかったような気がするが.....


どうやら「くじ引きの店」らしい。


腰の曲がったおばあさんがいた。


「おはようございます。」


「おはようさん。早いねー。くじはどう?」


景品を見たら、最新の携帯と最新ゲーム機が置いてある。


どうせ当らないだろう。と、思って通り過ぎようとすると、


「今日で最後の店だし、残ってもしょうがないし。これ、どうしようかねー。」


(景品、貰えるのかな?)


近づく静成に「1回千円。」


紐は3つ。景品は2つ。「???」


「ハズレもあるの?」


「いいや、ハズレなどないよ。」


「でも、紐3つに景品2つしかないじゃないの?」


「よくみてごらんよ。」


携帯とゲーム機の間に紐に繋がっている「三角くじ」があった。


ああ、なるほど。また、くじが引けるんだな。


千円をおばあさんに渡して、紐を引いた。


「おめでとさん。」


そう言って、三角くじを渡された。


三角くじを点線に沿って破く。


書かれていたのは、URL。最後に「神様以外アクセス禁止」


と、書かれていた。


笑うしかない。


財布の中身は空っぽ。野口英世も銀色の硬貨もない。


(もう1回引けたら、絶対当るのになぁ。)


諦めて、拝殿前に戻る。


大勢の人が集まっていた。


時間は5:55。

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