第5講義:博士の異常な愛情(1964、スタンリー・キューブリック、アメリカ、93分)
前回の映画、いかがでしたでしょうか。わたしも再鑑賞しましたが、ちょくちょくWTC(世界貿易センター)のツインタワーが映っていて、あ、ツインタワーって世界同時多発事故で崩壊したタワーですよ? いまはすっかりグラウンド・ゼロになりましたが、当時は威圧的な建物だったということが、映画を通じてわかります。アメリカ先住民のものと思われる織物や壁画にも、ツインタワーの模様が見えました。最後にはスペースシャトル・チャレンジャー号爆発事故の中継映像がありました。ツインタワー崩壊が2001年、爆発事故が1986年、どちらもテレビ中継で目撃しました。
映画では扱われませんでしたが、2003年コロンビア号の事故により、スペース・シャトル最後の打ち上げは2011年です。いまNASAはどうなってるんでしょうか。国の機関だけれども予算が足りない。NASAがどう思ってるか知りませんが、定期的に「未確認飛行物体」の秘蔵フィルムが流れます。オカルト・ファンは常識ですね。わたし的には「予算が足りないんだよ!」と必死に訴えてるように思えます。アメリカって貧乏なんですね。2008年リーマンショックが起こったことはご存知でしょうか。アメリカの投資銀行最大手のリーマン・ブラザーズが負債総額6000億ドル超となる史上最大級の規模で倒産したことを契機として発生した、世界的な金融・経済危機のことです。オカルト・ファンはそこまで考えていないのでしょうね。
今年は日本も株価の乱高下で経済的に不安定になり、物価は高いし、地震や台風といった凶悪な自然災害を食らい、コメ不足で「泣き面に蜂」です。もしかしたら「泣き面にヒグマ」くらいのことを云ってもいいのではないでしょうか。
2024年の株価の乱高下の原因は、日銀が利上げしようと実行したことです。イギリスやアメリカの銀行もゼロ金利で青息吐息です。世界的不況です。これで日本が利上げしたらいったいどうなってしまうんでしょうか。それは誰にもわかりません。自然災害なら気象庁がありますが、日銀は最後まで責任をもってくれるんでしょうか。森永卓郎さんは云いました。「最後にババを引くとおじゃんになる」と。我慢比べですね。
いまわたしが読んでいる本は、田内学『きみのお金は誰のため』と、岡真理『中学生から知りたい パレスチナのこと』です。並行して読んでます。最近、友田とん『「百年の孤独」を代わりに読む』を読了しまして、章の終わりに必ず「いますぐ書店に行って『百年の孤独』を買ってきてください」といって諄いんですが、わたしは1989年発行の『百年の孤独』ハードカバー版を持っています。自慢してるわけじゃないんですけど、二段組の本はどうも読む気になれなくて、読了しても本をとりませんでした。代わりに、いまの映画論を書くことにしました。『百年の孤独』を読むことと、代わりに新しい小説を書くこととは、著者としてはどちらがよりましなんでしょうか。わたしにはわかりません。誰か聞いてみてくださいね。
いま読んでる本を云いましたが、前者は「投資で儲ける」系の話ではありません。お金は三原則によるシステムが成立します。ひとつ、お金自体に価値はない。ふたつ、お金で解決できる問題はない。みっつ、みんなでお金を貯めても意味がない。お金の謎を解き明かす探偵モノの感じがするんですが、ベッドで寝ながら読んでいると、ついうとうとしちゃって読書がはかどらないんですよね。みっつめの謎が解かれるのは、あともう少しですが、予約待ちの人たちがいることは知っています。読了しても貸出期限まで返さないでおきましょう。わたしはマジで意地悪です。
後者はパレスチナのこと。特にガザは、イスラエルの攻撃に遭って、ジェノサイドのような民族浄化のような事態になっていますが、キリスト教とイスラム教の対立の話では、すでにないんです。人種の問題でもありません。では、いったい何が問題なんでしょうか。こちらも第3章にならないと明らかにされません。探偵モノでもないし、読者が求めるものは最後まで隠されているんですね。そういうの、なんか、営業っぽくていやらしいんですけど。最後の最後に見せるのは「女のあそこ」だけにしてくださいね。
あ。あと、話は戻るんですが、わたしの知人もあの映画を観て「泣きそうになった」と云いました。わたしは泣くほどのことはなくて、以上に言語化しただけです。でも彼女はあふれる感情を言語化できず、泣くしか方法がなかったのだと思います。
さて映画です。わたしはDVDを持っていませんし、ビデオだったときに一度観てわかんなかったから、こういうときにもう一度観てみようかなと思いました。巷では、この映画を知ってる人は「マニアック」と云われているようですが、わたしはマニアックというよりも「映画通」と云われたほうがいいと思います。そのほうが変態臭さが減り知的好奇心が増し、視野をより広く持てると思います。マニアックというのは、現状世界とは無関係なところで生きている人のことをいいます。
おっと、タイトル忘れてました。『博士の異常なる愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか(1964、スタンリー・キューブリック、アメリカ)』です。作家ピーター・ジョージによる原題は“Dr.Strangelove: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb”。
ネットで解説している箇所がありました。以下引用。
「東西冷戦の最中に撮影され、戦争が世界の破滅を導くことをシニカルに描いたブラックコメディ。米国空軍のリッパー将軍の指示でソ連に向けて核攻撃が開始される。英国空軍のマンドレーク大佐が爆撃機の撤退を説得する一方、ソ連は核爆発によって誘発される地球破壊装置の存在を明らかにする。『ロリータ』『ピンクパンサー』シリーズのピーター・セラーズが英軍大佐、マフリー米大統領、表題でもあるストレンジラブ博士の3役を見事に演じている」
ね? これじゃどんな映画かわからないでしょ? ピーター・セラーズは有名なコメディ俳優とのことですが、これのどこが面白いの? わたしは観るのをやめようかと思いました。学生さんたちのなかには興味があるかもしれませんが、代わりに『シザー・ハンズ』(1990、ティム・バートン、アメリカ、1時間45分)を観ようと思います。唐突にすみません。
シザー・ハンズは、フランケンシュタインの怪物をイケメンにして悲しい恋に落ちるファンタジーです。主演のジョニー・ディップは当時売れないロッカーで、1990年公開『クライ・ベイビー(ジョン・ウォーターズ、アメリカ)』で俳優としてブレイクしました。このときジョニーは27歳でした。いまでは大御所俳優ですが、映画デビューしたこのころは、ウブい少年でした。
『クライ・ベイビー』で、ダンサブルな白人の太っちょの女の子を見つけたわたしは思わず「かっけえ!」と叫びました。デブ映画の系譜は『燃えよデブゴン(1978)』のサム・ハン・キンポで始まりました。キンポはデブなんですが、ただのデブではありません。敵とカンフーで戦う「動けるデブ」です。ブルース・リーもジャッキー・チェンも彼を認めています。もしこれが普通体型だったら普通にカンフーアクションができますが、デブは身体に負担がかかって、波の身体能力では不可能です。それがダンスであっても同じです。軽やかにダンスする普通体型と、軽やかにダンスするデブとでは、どっちの衝撃が大きいでしょうか。わたしはもちろんデブのほうです。
つづいて、ダンス・ミュージカル『ヘアスプレー(1988、これもジョン・ウォーターズ)』のトレイシー・ターンブラッド役リッキー・レイクもキレッキレのダンスを披露して驚きました。また、トレイシーの母親役エドナ・ターンブラッドのディヴァインも巨体のドラァグクィーン俳優で、マツコ・デラックスもヒントをもらったと思いますが、1988年、42歳で心臓発作で亡くなりました。マツコはかろうじて50歳になりましたね。これからも頑張ってほしいと見守っています。これはビデオでは出ているんですがDVDは存在しないカルト・クラシックなので、「hairspray full movie」とYouTubeで検索してくださいね。
『バグダッド・カフェ(1987、パーシー・アドロン、西ドイツ&アメリカ)』のドイツ俳優マリアンヌ・ゼーゲブレヒトも瞠目しました。しかも彼女、作中でヌードを披露します。ストーリーも最高です。教えないけど。
『エンジェル・アット・マイ・テーブル(1990、ジェーン・カンピオン、オーストラリア)』はニュージーランドで著名な詩人・作家ジャネット・フレイムですが、タイトルは自伝小説です。子どものころは赤毛の太っちょでした。
さらには、『プレシャス(2009)』の主役・ガボレイ・シディベです。ガボレイは黒人俳優ですが、いままで見てきた俳優は白人です。なぜでしょうか。『ヘアスプレー』の監督ジョン・ウォーターズはメリーランド州ボルティモア出身で、高校時代からディヴァインを知っていて、カルト・ムービー『ピンク・フラミンゴ(1972、アメリカ)』に主演しています(ドキュメンタリーあるいはゲリラ撮影で、ディヴァインはワンちゃんの落とし物を口に入れて吐き出しています)。1980年代はすでに多様性の時代になっていますが、映画の設定はおそらく1960年代で、学校では黒人のクラスメイトと仲良くダンスしたり会話したりしているのに、TV番組では白人だけが登場しています。これはある種の“検閲”です。この映画は“検閲”と闘う展開になっていきます。こういう状況を敏感に察知してほしいと思います。いじめや差別などの事件が起こってから「知らなかった」「気づいてなかった」と言い訳するのではなく、積極的に、我れ先に「気づく」姿勢が重要です。
いまさらいうこともないですが、この授業では『スター・ウォーズ』も『バック・トゥ・ザ・ヒューチャー』もバカっぽいアクション映画も一生観ませんし、『男はつらいよ』寅さんシリーズも『釣りバカ日誌』スーさんハマちゃんシリーズも一生観ません。観ても損するだけで、気分を害するだけ。なぜなら、わたしが「一生観ないリスト」にこれらの映画を入れているからです。
たとえば『スター・ウォーズ』。父親と息子の闘いですって? オイディプスじゃないんですから、そんな古臭いフロイトみたいなギリシア神話はいまどき流行りません。そもそも精神分析はフェミニズムによって徹底的に叩かれ否定されました。レイア姫ですって? ピーチ姫に代えても『スーパーマリオブラザーズ』と変わらない超古典的で時代遅れな話です。埃が飛んでむせ返ります。その埃が好きですって? とんでもありません。もっといえば『シンデレラ』『人魚姫』『白雪姫』などのおとぎ話と変わりません。そういう話を持ち出して持て囃すのは男尊女卑を当然としての性差別だと思いませんか? あなたたちは「男らしさ」と「女をバカにする」のをはき違えていませんか? 時代遅れで場違いのDVDコレクションをいますぐ棄てなさい。いますぐにです。早く! 早くしないと、女日照りで性犯罪を犯して逮捕されて本名を晒すバカな男と同じになってしまいますよ? 「ちんこがデカくないと男でいられない!」ですって? ほら、女をバカにしてるでしょ。男じゃなくてもいいんです。堂々としていなさい。
検索しても2007年版しか見つからなかった場合、予告編ですけど、こちらをどうぞ。ディヴァインのスッピンがジョン・トラボルタってことはありえないわね。眉毛が違うもの。
https://www.youtube.com/watch?v=qcK5snQbpLk&list=PLUoSH4hQkAhADU4GUXRDx17-BDGXUCvTt
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