第六話 この生き物は…!

「ヒチン星の生き物は、地球の生き物とは違うの?」

「夏希さん!良い視点ですワンッ。ヒチン星も地球と全く同じですワン!」


 なら……私の知ってる生き物なのかな?シーズンロール、簡単なものじゃないんだ…。

 フゥ―と雪君がため息をつく。すると偲杏ちゃんは恐る恐るポケットから小さな本を取り出した。手乗りサイズの、メモみたいなものだ。


「これ、何? 俺勉強苦手~」

「あっ、これですかっ…」

「え~っ、何? 私も分からないよ~」


 偲杏ちゃんが見せてくれたメモには、小さな写真といっぱいの文字。

 え~っと……ニホンノウサギ?すると偲杏ちゃんは今まで見たこと無いような輝いた目をしながら、口を開いた。


「これは、が見つけた生き物を記録してるんですっ……。ニホンノウサギ、学名はLepus brachyurus。ウサギ目ウサギ科ノウサギ属に分類されるウサギ。旧和名ノウサギです。日本固有種に登録されています。東北地方や日本海側の積雪地帯に生息する個体群トウホクノウサギや、佐渡島の個体群サドノウサギは冬季に全身の毛衣が白くなるんです。また特定の巣は持たないが、ねぐらを中心に半径が約400メートルの範囲で行動します。草を食べます。が昔、住んでいた青森にもよく居たべ…です」


 へ、へぇ――良く知ってるねっ! 全く知らない生き物だから知るのがワクワクして来るっ! 私は偲杏ちゃんの言葉にうなずく。

 偲杏ちゃんは、青森県に住んでいたんだ。今は違う場所に住んでいるのかな?

 

「すごいですねっ……!僕も見習わなければ」

「あ………………勝手に喋ってごめんなさい…」

「そんなこと無いよ! 私は全く知らないから、偲杏ちゃんはすごいよっ。それなら何か分かるんじゃないかな? 」

「そう、ですね…!」


 偲杏ちゃんはハッと思い付いたように笑う。シーズンロール、順調かも?

 私はもう一度、杉の木を見つめた。この地域で過ごしていける生き物なんだよね?いつも周りに何がいたかなぁ…………。


「そ、そう言えば! 偲杏ちゃん! わざわざ標準語に直さなくて良いですよ。青森の言葉を我慢していると言うか………」

「あ、津軽弁って分かりにくいと思ったので………でも、使わへでもらいます」


 雪君の言葉に偲杏ちゃんがうなずく。我慢してたんだ、全然気づかなかった! 分からないけど、まあいいや!

 朝起きたら、外から鳴き声がして……登校中にはいっぱい生き物が走っていて…………どんな生き物がいるんだっけ?

 カエル?近くに田んぼがあるから、いつも『ゲコゲコ』大合唱しているよ。都会の人にはカエル怖い、と言われるけど結構私は好き。

 あと………リス?


「偲杏ちゃん、カエルとか、リスとか?あと、ネズミとか」

「ああ!」

「どうしたワン?」


 叫んだ偲杏ちゃんは急いで近くの杉の木に、駆けよる。そして、木の上の方を指差した。


「この巣は……リス!リスの巣だっ………!こごは自然多ぐ……ニホンリス住める環境!ヒチン星のリスも住める!すかもこの横さ入った爪痕は確実さ、リス!」


 偲杏ちゃんが今まで聞いたことの無い力強い声で言い放った。

 リスなの!?悪季は、リスなんだ!?すごい、分からなかったよ、偲杏ちゃん天才!

 私はそう言いたかったけど、きっと反応に困っちゃうからやめとこう。

 確かに、この近くにはいっぱいニホンリスがいる。お父さんとよく観察もした。ミリと探し回ったこともあった。

 それなら、悪季がリスな可能性は高い!よりも高い。なんであれを特許タワーって言うんだろう。特許が取れる場所?あれっ、そもそも特許って何?分からなくなったから、考えるのをやめよう、うん。

 

「偲杏、すごいやんっ! 俺、何の役にも立たなかった~! ところでリスの食べ物は何? それで寄せ付けようぜっ」

「あ………皆さんのイメージするような、クリやクルミです…」

「そうなんだっ! あ、秋君、クリ持ってきてよ!」

「えっ、何で俺?」

 

 私が秋君に声をかけると、秋君は何も分からない様子で首を傾げた。

 あれっ、違う?


「秋君って名字、栗山でしょ?ならクリ家にあるかな~って」

「「ブフッ」」


 私がそう言うと、雪君と偲杏ちゃんは口を抑えて、笑いだす。えっ、変なこと言ったかな?ワンピヨちゃん達も必死に笑いをこらえていた。何?私の顔に落書きされてるの?


「まあ、あるはあるけど。俺の妹、クリ大好きだから」

「「「「「「えっ……!?」」」」」」

「えっ、逆にそんな驚く? 家は魚屋だけど」

「それは、驚きますよ。僕、目が飛び出そうですっ…」


 うんうん、とうなずくニャンピヨちゃん。ボーゼンとするピョンピヨちゃん。そして、私の肩をバシバシたたくワンピヨちゃん。

 頭良い生き物の皆にはついていけないな……。



❀☀☽☃❀☀☽☃



 数分後、秋君はクリを持ってきてくれた。

 そして、偲杏ちゃんが持ってきてくれた籠にクリを入れて、待つことになったんだ。私はフゥとため息をついて、辺りを見回す。

 暗い空の中、ガサゴソッと不気味な音がしたのは気のせいじゃなかった。


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四季の宝石を取り戻せ!~季節がこの世界から消えたなら~ 石川 円花 @ishikawamadoka-ishikawaasuka

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